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新版 動物の社会 社会生物学・行動生態学入門
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 東海大学出版会/東海大学出版会 |
発売年月日 | 2006/08/20 |
JAN | 9784486017370 |
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新版 動物の社会
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対象は「生物好きの高校生、大学教養部学生、動物社会に興味を持つ一般読者」としてあるが、かなり骨があるので、生物に「相当」興味のある人向けだろう。 ページ数はさほど多くないが、中身は濃くておもしろい。 本書で解説しているのは、昆虫類(アリ・ハチなど)の社会性や性淘汰(クジャクの雄...
対象は「生物好きの高校生、大学教養部学生、動物社会に興味を持つ一般読者」としてあるが、かなり骨があるので、生物に「相当」興味のある人向けだろう。 ページ数はさほど多くないが、中身は濃くておもしろい。 本書で解説しているのは、昆虫類(アリ・ハチなど)の社会性や性淘汰(クジャクの雄がなぜ美しいか)、鳥類のヘルパー(自分は生殖せず、血縁者などの子育てを助ける)、哺乳類の子殺しなどである。 多くの研究者による観察をまとめ、各現象がなぜ起こるのかについての解釈を諸説紹介している。 最初の2章は生物の社会性について。ここでいう「真社会性」とは、生物学的な意味であり、 (1)子の保護における協同 (2)繁殖に関する分業(不妊の個体が繁殖個体を助けて働く) (3)コロニーの労働が可能な発育段階の少なくとも2世代にわたる共存 が条件となる。この意味では人間は「真社会性」ではない。要するに、女王がいて、ワーカーがいて、女王が産んだ子の面倒をワーカーが見ている、アリ・ハチのような集団である。 真社会性がなぜハチ・アリ目に多いのかについては、これらが単数・倍数性(♂が単数体(n)、♀が2倍体(2n))であることから説明が付く。こうした種では、遺伝子型が同じになる確率は親子間よりも姉妹間での方が高いため、自分の子を世話するよりも、姉妹の世話をした方が血縁度の高い子孫が残ることになる。 単数・倍数性でない生物が真社会性を発展させている例もいくつか知られているが、これらはいずれも閉鎖環境にあり、血縁度が高い場合であるようだ。その一例のテッポウエビは、珊瑚礁に住むカイメンの中で集団全体が暮らしているという。 真社会性以外の話題に関しても、全体として、動物の生態や行動は、その戦略を取ることが生存に有利であることから発展したと説いている。近年、ゲーム理論や数理モデルと組み合わせた研究が行われてきているのは自然な流れなのだろう。 素人的には、「実際に存在する現象」と「論理的な正しさ」の摺り合わせが絶えず必要なのだろうという印象を受けた。生物の世界である以上、数学と違って、理論だけ追究していても仕方がない。現象があって、それがなぜ生じたかを考えていかないと、机上の空論になってしまう。場合によっては、逆に、論理的帰結から現象を探し出す作業も必要になってくるのだろう。 足で稼がなければならない部分と頭で考えなければならない部分とが車の両輪になる分野なのだと思う。 この手の話は得てして、では翻って人間社会は、となりがちだが、著者は、社会生物学の研究成果を人間社会に安易に適用することに関しては警鐘を鳴らしている。 (特に具体的に名を挙げて批判しているのが動物行動学のエッセイで人気のT氏。個人的には、氏の著作は1,2冊読んだが、軽妙な語り口はともかく、内容が牽強付会な感じで、正直あんまりおもしろくないなぁと思っていた程度。だが、専門家はいろいろと思うところがあったのだろう。批判の厳しさ、筆の鋭さに圧倒された。すべて妥当なのかどうか、今ひとつわからない点もあるのだが) (個人の批判はともかくとして)動物社会に存在する現象と人間社会にある不正義が安易に結びつけられることのないような、慎重な議論は必要だろう。 *元はといえば、本書を読んだのは、『海の底』(有川浩)から。出てくる甲殻類のオバケのモデル(?)が「社会性を持つテッポウエビ」なのである(オバケは想像の所産だが、テッポウエビは実在)。 「アリ・ハチ目の社会性はよく知られているが、エビ・・・? 同じ十脚目の、例えばザリガニには社会性があるなんて聞いたことないけど・・・」と思ったのが始まり。 つまり、そのキーポイントは血縁度の高さなのね、ということでとりあえず納得。 *個人的にもう1つおもしろかったのは、プラグ(交尾栓)の話。マウスやラットは交尾後に膣にプラグと呼ばれる蝋状の栓のようなものが付くのだが、ご存じだろうか・・・?(同じようなものは昆虫でもあるそうだ。) げっ歯類の場合は、交尾によって排卵が誘発される種が多いらしい。元々排卵されているのなら、交尾≒受精といってもよいが、交尾後に排卵となるとそうはいかない。もしその直後に別の雄が交尾すると、その雄の精子が勝ってしまうこともあるわけだ。プラグはそれを防ぐためのまさしく「栓」なのだそうだ(別の雄がそれを外す種があったり、気に入らない雄のプラグを雌が外したりする例もあったりするようで、いやはや何だか、生きていくって大変だなぁ・・・)。 学生時代、マウスの交配実験をしていてよくプラグの確認をしたものだが、そうか、あのプラグにそんな意味があったとは。
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