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甦るヴェイユ MC新書
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甦るヴェイユ MC新書

吉本隆明【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 洋泉社/洋泉社
発売年月日 2006/09/21
JAN 9784862480699

甦るヴェイユ

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2024/12/02

吉本隆明はシモーヌ・ヴェイユの人生を畏怖の眼差しで凝視する。そしてソ連崩壊で想起される彼女の当時の思考を透徹した文章でなぞる。 「ヴェイユは生きた同時代のいちばん硬度の大きい壁にいつも挑みかかり、ごまかしや回避を忌みきらったため、壁にそって必然の曲率でねじまげられた。だがこの曲率...

吉本隆明はシモーヌ・ヴェイユの人生を畏怖の眼差しで凝視する。そしてソ連崩壊で想起される彼女の当時の思考を透徹した文章でなぞる。 「ヴェイユは生きた同時代のいちばん硬度の大きい壁にいつも挑みかかり、ごまかしや回避を忌みきらったため、壁にそって必然の曲率でねじまげられた。だがこの曲率は比類のない正確な歴史曲線をかたちづくっている」とあとがきで書いている。 1930年代ヴェイユが23歳で教師であった時、ドイツに旅行し第一次大戦後の疲弊と恐慌に苦悩する国民大衆の現実を目の当たりにする。ドイツ共産党のヒトラーの活動が活発化するなか社会民主党と対立敵視し、ナチズムの猖獗を促進し、コミンテルンに振り回され労働者から乖離する姿も目撃する。 彼女はロシア革命の変質(本質)を見極める。生産手段や農業の国有化とともに干渉戦争でナショナリズムが嵩じ、行政・警察・軍事機関を強化し共産党官僚が労働者を支配管理しスターリンの独裁へと進む、コミンテルンが諸外国の共産党にも影響を及ぼす。 一国社会主義=スターリニズムは国家社会主義=ナチズムと一緒で労働者の解放とは似ても似つかないものになる。国家を開き解体させる方途がない限り高度資本主義のほうがはるかに労働者や大衆にとっては経済的にも文化的にも有利だと考える。 彼女は社会主義革命と戦争(民族的・帝国主義的)と国家、労働、支配と被支配、官僚制の問題を徹底的に考え、レーニンやトロツキーの問題点も指摘する。 1991年ソ連崩壊を見て吉本は「ヴェイユが甦った」としてこの覚え書きふうの評論を発表する。 彼女は24-25歳の時、電気機器・鉄工所・自動車工場の製造現場で肉体労働の経験をする。 想像もできない凄惨な工場現場に「辛抱できないなら自殺する決心」で臨む。 時間に追われ悪環境のなか機会的流れ作業で奴隷のような作業の毎日、極度の疲労と睡眠不足、激しい頭痛に苛まれる。肉体労働における支配と被支配・管理と被管理がもたらす苦痛と善や悪が人間関係にもたらす苦痛とは同じではないことの発見、人間存在の尊厳という感性を奪回する。この地獄のような日々を通して、支配者たちの「労働からの乖離」を発見し「革命なんてありうるはずがありません。なぜなら革命の指導者どもが無能だからです。また革命は望ましいものではありません。指導者どもが裏切り者だからです。こういう愚か者に勝利をおさめられるわけがありません。もし勝利をおさめたとしたら彼らはまた抑圧を始めることでしょう。ロシアにおけるように‥‥」というに至る。労働者の現実の労働を知らない官僚が支配するソ連共産党の欺瞞を痛感する。 肉体労働の体験・分析から神の考察に進む。 「革命思想を内在化し内向させた資質の方向に掘り進んで神の考察にどうしてもぶつかった‥『甦るヴェイユ』は『痛ましいヴェイユ』になった」と吉本はいう。 労働は苦痛な行為を通じて宇宙の美と肉体で接触する、宇宙の美は自然であり神である。 価値転倒の思想に至達、指揮・管理・企画・芸術・哲学のような精神の仕事は肉体労働より下位におかれるべき、これはヴェイユの最後の思想だった。 肉体労働は社会生活の霊的中心でなくてはならなず、 さらに進めて「わたしに属するすべてのものにはなんの価値もない。なぜなら真の価値と個人の所有とは本質的に相容れぬものだから。」(公理) わたしたちの救いは自分が存在せぬ者であることが見えてくることである、という無の思想に及ぶ。 後半の神が出てくる件りになるとついていくのが大変だ。吉本は彼女の思考の経緯に宮沢賢治が求める永遠の真理への道筋と同じものを感じるという。現実の課題を内向しとことん突き詰めていくと精神の世界・神や仏の領域になる。総論としては何となくわかるような気もする。が、やはり釈然としない。 シモーヌ・ヴェイユは濃密な34年間の人生で、 思考し行動し社会や人間の真理を探究した。 当時の欧州社会やイデオロギーに鍛錬され本質的な思考を続けた。 その時日本は輸入思想の解釈に狂奔していた。 悪のナチズムはもとより、それをも超えるスターリニズムの反人間性を痛感することになる。 ナチスドイツは崩壊し地上から消えたのに、今だに 中国・北朝鮮・ロシアの独裁政治体制は続き、 スターリン主義は人類に害をなし続けている。

Posted by ブクログ

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