仰天・平成元年の空手チョップ

夢枕獏【著】

• 販売会社／発売会社: 集英社/
• 発売年月日: 1993/03/25
• JAN: 9784087740042

商品レビュー

2016/11/06

昭和38年、凶漢に刺されて死んだと思われていた力道山
しかしじつは生きていたのである
液体窒素を用いたコールドスリープ技術の、実験台となることで
これは、その力道山が、平成元年の世に甦り
再びプロレスをおっぱじめるというエスエフ小説である
いちおう話の目玉は
前田日明（第二次UWF時代）との対戦ということになっている
しかしハッキリ言って前田の影は薄い

・馬場vs猪木
力道山の空手チョップは
あくまで、相手の反則に対する怒りの表現であった
それに対し、自分から先に手を出していくことも多かったのが
猪木のスタイルである
「俺が勝つしかない！」という意志と焦りがそうさせたのか
しかし馬場との真剣勝負が決まったとき
たとえ真剣でも馬場の技をすべて受けきらなければ意味がないと思う
それが猪木の出した結論だった
一方そのころ
馬場は長年その存在を秘匿してきた必殺技
「裏十六文」の解禁を心に決めていた

・力道山vs前田
前田のキャプチュードに対し、ビートルズで入場する力道
特別レフェリーは木村政彦だ（ふたりの和解も描かれる）
天龍との相撲特訓を経て、新たな技を身につけた前田のスタイルは
まさに平成のポストモダン
しかし、力道山にとって最大の敵は、己に残された時間だった
ラスト一分、温存した空手チョップがついに火を吹くが