日暮硯(ひぐらしすずり) 信州松代藩 奇跡の財政再権

奈良本辰也【著】

• 販売会社／発売会社: 講談社/
• 発売年月日: 1987/02/01
• JAN: 9784062032551

商品レビュー

2024/07/28

日暮硯
信州松代藩奇跡の財政再建
著：奈良本辰也

本書は、信州松代藩の家老恩田木工民親の財政改革である

江戸中期、藩主真田幸弘の命を受けて、藩政の改革に乗り出しだ恩田の手法は、その後の藩政改革の手引きとして日本全国に広がっていく。二宮尊徳は、『日暮硯』を座右におき人に勧めたとある。

イザヤ・ベンダサンの「日本人とユダヤ人」の中に紹介があり、国会図書館のデジタルアーカイブであるＮＤＬから参照させていただいた。

気になったのは、以下です

・佐久間象山の云う、「東洋の道徳、西洋の芸」を地でいくものである

・著は、藩主の真田幸弘の小姓、馬場正方とおもわれているが、杢政談という別本があり、その記載では、藩主幸弘そのものではないかという記述もある

日暮硯という名前は、書き出しに、徒然草を意識している部分があり、「日ぐらし硯にむかいて……」から来ている

松代藩が貧しいのは、真田旧来の家臣２０万石を１０万石に松代につれてきたことに始まり、蓄えも江戸幕府方針で度重なる普請に駆り出されたことにあった

家老の末席にいた木工は、家族、親族、家中に覚悟のほどを示してから、藩政改革に着手している。
関係者に、誓紙をださせている。

木工のすごいところは、木綿の着物への切り替えも、次の着物からということで無理をしていないことだ

農民を財政の根幹として、かれらの負担を取り除くことから始め、かれらの支持を得ている

やることさえ、やってもらえれば、あとはよし、とのことで、不必要な締め付けもやっていない

江戸藩邸で、２０００両の御用も、１７００両ですめば、その一部を倹約してもらった、役人やその関連へ渡している

もともと、使ってなくなってしまう金だったので、その一部を褒美として渡すことで、担当者のモチベーションを高めようとしたのである

木工は　さらに、客が来たら、客に供した食事と同じものを、家族や、下人にも出しているところがすごい。

農民の年貢についても、年一括から、月払いにあらためている。
また、年貢米以外に、他の作物に課していた税もとりやめ、年貢米一本としている。

こうした改革は、他の藩には、みられなかった

著書は、こうした木工の政策を、東洋的とし、今日、新テクノロジーとして危機が乗り越えられるという楽観をあらため、発想転換の新しい理念にするべきとして、筆をおいている。

目次

『日暮硯』を読むまえに
１　信州松代藩の財政窮乏と恩田木工
２　著者馬場正力を松代の町を訪ねて
３　『徒然草』を模した『日暮硯』
４　苦しい財政と人心の荒廃
５　八郎五郎の財政改革の失敗と、足軽たちの反乱
６　悪政と一揆と木工の登場

現代語訳

１　生まれながらにして名君
２　恩田木工、召し出さる
３　まず家内、親類をまとめる
４　禄高の割引をやめるかわりに、節約を呼びかける
５　木工　施政方針を語る
６　村人　直訴状を差し出す
７　財政建直しの目途、立つ
８　悪徳役人　進んで不正をやめ、木工に従う
９　万事をゆるめて楽しみを勧める
１０　子供まで、文武の諸芸に上達
１１　「君、君たれば、臣、臣たり」
１２　木工の家人が客人に親切な訳
１３　博奕をやめさせた巧みな仁政とは

現代に生きる『日暮硯』

１　木工の東洋的仁政思想
２　百姓を大切にした個性豊かな人格者
３　後代の藩政改革の手引書、『日暮硯』

ISBN：9784062032551
出版社：講談社
判型：B6
ページ数：210ページ
定価：1165円（本体）
1987年02月01日第1刷発行

国立国会図書館 : 国立国会図書館蔵書
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001842424