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中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2005/04/30 |
JAN | 9784560027783 |
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中村屋のボース
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4
26件のお客様レビュー
▼かなり以前に読んで、感想を書くのを失念していました。なのでほとんど細部は忘れているんですが。 ▼チャンドラー・ボースさんの伝記本ですね。中島岳志さんの本を一度読んでみたかったので。ボースさんについては、インド独立運動の志士、という10文字だけは知っていました。なんだか日本で匿...
▼かなり以前に読んで、感想を書くのを失念していました。なのでほとんど細部は忘れているんですが。 ▼チャンドラー・ボースさんの伝記本ですね。中島岳志さんの本を一度読んでみたかったので。ボースさんについては、インド独立運動の志士、という10文字だけは知っていました。なんだか日本で匿われ活動していた?という意味だと孫文と混同してしているような。 ▼つまり新宿の中村屋さんに匿われて、そこで家族になっちゃった。お嬢さんだかたれかだったかとご結婚されて所帯を持たれた。したがって中村屋にはインドカリーがある。インドカリーの件は主題ではありませんが。そのような経年事実がありながら、つまりはインド独立について、その植民地支配について、色々ふむふむがあり。そのあたりを鏡として日本を写した時に、浮かび上がるもの。そんな狙いが感じられ、実は大変面白かった。いい読書でした。 ▼日本は明治維新で、植民地にされることから免れたんです。日清日露にも勝利して、実はその段階でようやく「明治維新完成」とも言えると思っていますが。そして日本の人々は、清国やインドなどにも、「俺たちの真似をして、植民地から脱しよう!」というアジアとしての連帯を訴えたりもしてたんですが。 ▼ところが日露戦争後に、朝鮮を植民地にしてしまう。つまり加害者側に転向してしまう。これはインドから見たらどう見えるか。 ▼そもそもそれ以前に、日本の明治維新とはつまり、欧米に伍する軍艦を作ることだったんです。独立を維持できたら、それが出来たんですが。軍艦を持つことでアジアにおける利害代弁者になれますよ、という資格をもちえて、日英同盟が成る。もうこの段階で、英をはじめ列強のアジアアフリカ支配を糾弾できません。日本の近代とはなんともはや、搾取される側から脱した時に、自分の兄弟たちのことは見殺しにするのが必須条件だった。やれやれな運命です。 ▼ボースさんは文字通り七転八倒しますけれど、結果あまり効果的な独立運動は展開出来ない。この辺りの辛さは、丸谷才一「裏声で歌へ君が代」です。ボースさんの後半生は、日本とアジアのやれやれな運命の炙り絵のよう。そして読み終えてつまりはボースさんの亡くなるくだりで、思わず胸が熱くなりました。これは書き手の技術ですねえ。中島岳志さん、またご縁があったら是非読んでみたい作家さんになりました。
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大アジア主義をどうとらえるかは難しいよね。インドをどう考えるかもとても大きくて難しい。補助線としてとてもよくできている。
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インドの独立運動家 ラス・ビハリ・ボース(以下、ボース)の伝記をベースに、戦前の日印関係やアジア近現代史の解説が上手く配合されている。 日本での潜伏先であった新宿中村屋とのエピソードも盛り込まれており、緊迫感がありながらも心温まった。(ちなみにタイトルの「中村屋」を歌舞伎の屋号の...
インドの独立運動家 ラス・ビハリ・ボース(以下、ボース)の伝記をベースに、戦前の日印関係やアジア近現代史の解説が上手く配合されている。 日本での潜伏先であった新宿中村屋とのエピソードも盛り込まれており、緊迫感がありながらも心温まった。(ちなみにタイトルの「中村屋」を歌舞伎の屋号の方と勘違いしていた。どちらの中村屋さんもごめんなさい…) ボースは15歳で独立運動に目覚めてから、今か今かと反乱のチャンスを窺っていた。 自ら爆弾の製造を進め、デリーにて時のインド総督ハーディングへの爆弾テロを遂行する。そしてイギリス側から追われる身となった彼は国外逃亡を決行。 インドへ武器を密輸入させること、そして国外からインドの独立を支援することを目的に、当時日露戦争の勝利に湧いていた日本へと渡った。しかし同時に日本は日英同盟に調印しており、ボースはここでも執拗に追われる身となる。 前半の逃走劇はとてもスリリング! 見張っていた探偵が途中で眠りこけていたりとフィクションよりも面白く、著者が脚色しているんじゃないかと思ったくらい。日英同盟が解けるまで逃げおおせられるとは、やっぱり後世語り継がれる人って豪運の持ち主なんだなーって妙に感心してしまった。 「大英帝国の申入れにおびえて亡命客を追出すなんて、何という恥さらしな政府だろうと、主人も私も憤慨した」 日本政府が身柄引渡しに応じようとしていた、また、黒龍会(!)顧問の頭山満からの依頼だったとはいえ、爆弾テロの首謀を匿うなんてよく引き受けようと思ったもんだ。中村屋夫妻は、ボースが母国で何をしたのかちゃんと知らされていたのかと疑ってしまう。 そんな困難な状況でもボースは「印度亡命志士」「気遣いの人」と人々から慕われ、メディアへの寄稿や政治活動も積極的に行った。 帝国議会議員への立候補やナチスドイツへの連携を訴えていたのには驚かされたが、彼の目的はあくまで「インドの独立」。日中戦争も「イギリスが中国をけしかけて起こしたもの」と捉え、日本の軍事力をもってイギリスを打倒するチャンスだと論じていた。 「打倒イギリス」でいえば、彼が気分転換に作ったインドカリーが後に中村屋の看板メニューとなったのは有名な話だ。(自分は読むまで知らなかったけど…←おいおい)イギリス経由で伝えられた「カレー」ではなく、実際にインドで食されている「カリー」にこだわったという点に凄まじい敵意が感じられる。 「私はかつて闘士であった。もう一度、闘おう。それは最後で且つ最善の闘いだ」 本書で一番ガツンと来たのは、ボースが日本側から慕われていた理由である。 当時の外国人に対する評価基準は「日本的であること」だった。そのせいで中国や東南アジアへの植民地支配は悪化の一途を辿ったし、ボース自身もインド国民軍から「日本側の傀儡」とみなされてしまった。 でもそれって現代にも言えること。相手の外国人が礼儀正しく素直であれば我々は安心する。上手くいけば、こちら側に取り込むことだって可能だ。まだまだきな臭いなー…
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