活動する子どもたちと算数の授業

正木孝昌(著者)

• 販売会社／発売会社: 東洋館出版社
• 発売年月日: 1999/08/06
• JAN: 9784491015590

商品レビュー

2013/08/24

　ずいぶん前に一度読んだことがありますが、久しぶりに読み返してみました。著者の魅力的な算数の実践と、分かりやすい比喩的な表現がとても印象に残る一冊です。

　特に心に残ったところを３つほど紹介します。

　p.68　魔物がいた授業。こうした本では珍しい、授業の失敗体験です。でも、考えてみれば授業がいつもうまくいくということはないわけで、あのイチローだって、ヒットが４割も出るわけではありません。とても親近感が持てました。もちろん、単に失敗したという話ではなく、教師が授業で何を大切にしなければいけないのか、それを教えてくれるエピソードです。子どもの言葉や思考を教師は大切にするべきで、自分の都合や予定を押し付けるべきではないのです。

　p.99　算数の基本項目。基礎と基本を区別した議論はとても分かりやすいです。その上で、算数科の基本項目として、数えること、数を拡張すること、整数の性質をとらえること…など、10項目をあげています。学習指導要領であるとか、数学的な考え方であるとか、教師が知っておかなければならないことはたくさんありますが、この10項目もぜひ頭の中に入れておくべきです。

　最後に、p.76　授業の中の個別指導。個別指導というと、どうしても一人一人を見るとなりますが、それでは授業時間がいくらあっても足りません。この問題に対する一つの考え方が示されています。このことは、教師だけではなく、保護者にも考えてもらいたい問題です。学校のよさは集団で学ぶことです。個人で学ぶのであれば家庭教師でもつけるしかありません。なかなか難しい問題です。

　古い本になってしまったので手に入りにくいかも知れませんが、どこかで見かけたら、ぜひ手にとってみてください。