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吉本隆明 思想の普遍性とは何か 戦後思想の挑戦
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 筑摩書房/ |
発売年月日 | 1999/03/23 |
JAN | 9784480847324 |
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吉本隆明
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吉本隆明の思想を著者自身の立場から批判的に検討している本です。 著者は、「大衆の原像を繰り込む」という吉本の思想に、一つの変質が生じていることを指摘します。吉本の戦争体験についての回想や転向論における執拗な問題意識を貫いていたのは、生きている大衆に対する微妙な距離感でした。とこ...
吉本隆明の思想を著者自身の立場から批判的に検討している本です。 著者は、「大衆の原像を繰り込む」という吉本の思想に、一つの変質が生じていることを指摘します。吉本の戦争体験についての回想や転向論における執拗な問題意識を貫いていたのは、生きている大衆に対する微妙な距離感でした。ところが、そうした距離感はやがて吉本の思想から失われ、大衆理解が観念的に一元化されていったと著者は批判します。 ところで著者は、こうした吉本の大衆理解の変質を論じるに当たって、「生活者としての実存」と「マスとしての大衆」ということばを用いています。そしてここには、前者の生活感覚に根ざしたエロス原理にそのつど問い尋ねながら思想を立ち上げていくという、著者自身の思想的立場が反映されていると見て、おそらく間違いないでしょう。これにつづく議論では、著者自身の実存的な観点から、吉本の『共同幻想論』および『言語にとって美とは何か』の批判的な読みなおしがなされています。とくに『共同幻想論』に対しては、著者はさまざまな批判を吉本に対して投げかけていくのですが、そもそもその背後にある著者自身の立場が吉本の立場から大きく離れているため、生産的な議論になっていないように思えます。その結果、著者が『共同幻想論』における吉本の優れた着眼として認めるのは、「対幻想」と「共同幻想」をはっきりと区別したことだけだと結論されることになります。個別の相手へ向かうエロス的な志向性と、社会的な共同性へと向かう志向性を、実存の主要な契機とみなす著者の立場と一致するということでしょう。 理性的な近代的主体性ではなく、実存的なエロス原理に即して思想を立ちあげるという点では、なるほど著者の立場と吉本の思想には重なる部分があるように思います。しかし、吉本に比べると、著者のエロス原理は一枚岩でありすぎるように感じられます。その結果、両者の間には、実存主義と構造主義に相当するようなへだたりがあり、著者の議論のなかでは吉本の思想の構造主義的な発想はすべて切り捨てられてしまっています。なお、こうした問題は竹田青嗣の場合にいっそう明瞭に現われており、竹田は主体の内部の多層性をすべて実存的なエロス原理と現実社会との相克に投げ返し、みずからの生きづらさを緩和するような社会の実現に向けてヘーゲル的な総合の道へと向かっていく傾向が顕著に見られます。 著者の立場に賛同する読者にとっては読む価値があるのかもしれませんが、個人的には吉本の思想のおもしろいところを切り捨ててしまっているように感じました。
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