夢みる科学

佐治晴夫(著者)

• 販売会社／発売会社: 玉川大学出版部/
• 発売年月日: 2006/02/28
• JAN: 9784472302909

商品レビュー

2022/06/11

　何々の影響を受けたとはあまり言いたくないタイプですけどものごとの捉え方などはこの著者の影響を多少とも受けているかもしれません。あるいはもともと近い捉え方だったか。一般向けの本を書いてくれる科学者のなかでもっとも信頼している方です。科学者らしいクールさで捉え、率直にしかしとてもやさしく語るという感じでしょうか。
　このエッセイは新聞連載中に読んでましたが改めて読んでみると音楽の話題が多かったです。音楽と科学は近縁にあるという気はします。
　読んでいて、こどもの頃、地べたに寝そべって空を見ていたら自分が天井に張り付いている存在だという感覚が発生して空に向かって落ちていきそうになりましたが、そんなことを思い出しました。

▼簡単なメモ

・見えていることは異なっても背後に論理性があるなら実在といえる。論理性を見いだすには詩人のような直感も必要。
・見えなくても実在はある。
・文明により時間のありようは本来と変わり人類の家畜化をすすめた。
・記憶にも熱力学の法則は適応される。
・《この数式は美しく書けているからあっているでしょう》p.23
・物理的には、相手の姿の中に自分の姿が見えている。
・ものそれ自体に意味はなく、意味を与えるのは心。
・過去のことはわからないが近い未来のことは予測ができる。
・予測できることと予測できないことは半々。
・人体がつくりだすエネルギーは太陽の一万倍。
・自然というものの公平性のふしぎ。
・「この世」と「あの世」の往き来は可能。
・ひとが心のなかで思うことなども科学的に見ればある種の「存在」なのかもしれない。
・「論理」と「感性」はおなじなのかもしれない。
・空間と時間はほぼひとしい。星空を見ることは宇宙開闢以来の時間を見ることでもある。
・そのものを直視すると見えにくくなる。
・「でたらめ」は一様であることなので規則正しいことはでたらめである？
・見る者の存在によって、あるいは見方によって「それ」は「それ」になる。
・科学とはつまるところ自分を知ろうとすること。
・今ある存在が今のような形なのは今ある自然の状態のせいであり宇宙のデザインは今ある存在によって構成されている。
・《仲間を作るということ自体の中に、仲間との分裂という要素をはらんでいる》p.87
・ふるさとは、宇宙。
・蚊が不快なのは共生期間が短くまだ互いに慣れていないから。
・一瞬とは持続するものとしての一瞬。
・「みんなちがってみんないい」のではあるけどみんなちがうと思い込んでいるから争いは発生するのでみんなちがわないと知ることが本当の「みんなちがってみんないい」。
・なぜそうなのかという問いかけが大事。
・待つことができるように。
・個々人としてのありようと、生物としてこうでしかあり得なかったかたちの合致。
・雨の日の日時計のよさ。
・からっぽである「空虚」といっぱいに満ちている「虚空」は見かけ上は同じ。
・公平化によって不公平がもたらされる。
・《相手があってこそ、私は存在する》p.144
・過去や未来は「今」という瞬間に紛れ込んでいる。時間とはとても個人的なもの。
・《目は、ほどほどに見えて、ほどほどに見えないように、できています。》p.151
・対称性の破れに原因はない。
・曇り空が本来の光の色に近い。
・「実在」は「関係性」のなかにある。

2013/03/28

真昼に輝く星を見てみたい！と本気で思いました。
佐治先生が新聞で連載していたエッセイ集。人生を見つめる視点がとても素敵です。文学、美術、音楽、宗教そして科学の視点から人生を見つめ、決して堅苦しくならず書かれた文章の数々が胸にしみました。

2012/05/24

望遠鏡が欲しくなった。

90歳助産婦さん＞「一番大事なのは精神的看護。仕事が十あるとしたら、八は頭の中で、手でやる部分は二でいいのよ」

饒舌な沈黙

暗い天体を見るには、そのもの自身ではなく周辺の闇を見る

人と人とのお付き合いも、長続きさせるために必要なことは、互いに向き合うよりも、ともに同じ方向を向くということのようです。

よかったところをきちんと褒めるのが上達させることの秘訣

本気で向かい合う

拈華微笑＝以心伝心

音は、ある意味からすれば時間です。

私はとくに雨の日の日時計を見るのが好きなのは、見えないけれども、私自身の時の刻みがそこには感じられるからです。

速く走ることができる自動車ほど早く止まることができなければなりません。これが走ることの責任です。

確実な密封と、容易な開封