あちゃらかぱいッ 河出文庫

色川武大(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2006/02/20
• JAN: 9784309407845

商品レビュー

2025/12/21

本書で脇役として登場する益田喜頓や伴淳三郎といった名優にはかろうじてリアルタイムで接することができた世代だが、主な登場人物である土屋伍一、名和利一、鈴木圭介、清水金一は名前すら聞いたことがなかった。戦争前後の混乱した時代に一瞬の輝きを放って消えていった芸人たちだ。
戦時期、しぶとく浅草に通いアチャラカ劇の役者を見続けた著者はなんと浅草が焼けた後は大宮浦和まで徒歩で遠征したと言うから執念である。「眼を離すと、彼等がではなく、私のほうが一人でもんどり打って落ちていきそうだった」との言葉は、必ずしも著者に限らず、当時笑いや芸能を渇望していた人たちの本音だろう。戦前期の建前７割本音３割の時代から日米開戦後の建前十割の世界へ閉塞感が極まっていくなか、救いと裏腹の後ろめたさが混ざった浅草界隈の時代の気分には、笑いもたらす正常性バイアスのようなものも多分に含まれていたのではないか。
そんな気分にも押されてトップに躍り出た芸人達のその後はどれも惨憺たるもので光と影が際立つが、喜劇を愛した著者のドライな筆致が巧みに余韻を与えている。

2011/12/09

ボードビリアンのとてつもないドタバタぶりに笑いが止まらなかった。
一番おかしかったのは、地方の演劇場にて全て偽の出演者でそれらしく演じ、大喝采を浴びる場面。痛快である。

2010/06/20

この語り口、絶妙。
どうして色川さんの文章だと、どんな下品なことでもすいすい読めるのでしょうかね？