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天の声・枯草熱 スタニスワフ・レム・コレクション
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 国書刊行会 |
発売年月日 | 2005/10/31 |
JAN | 9784336045034 |
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天の声・枯草熱
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商品レビュー
4.6
7件のお客様レビュー
殆ど会話も事件も起きず論考だけが描かれているにも関わらずSFのセンスオヴワンダーもあるしチョコレート的なミステリの興奮もある。後半は偶然のミステリ。ここでも圧倒的な知と描写力がリアリズムを生んでいる。
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レム睡眠という言葉を知る前からレムは知っていたし、ピクルスがどういう食べ物か知る前から宇宙飛行士ピルクスを知っていた。レム・コレクションもかなり買っているのだが、例によって積ん読状態。『サンリオSF文庫総解説』で思い出して、同文庫に収録されていた二長編の再録された本書を読む。 ...
レム睡眠という言葉を知る前からレムは知っていたし、ピクルスがどういう食べ物か知る前から宇宙飛行士ピルクスを知っていた。レム・コレクションもかなり買っているのだが、例によって積ん読状態。『サンリオSF文庫総解説』で思い出して、同文庫に収録されていた二長編の再録された本書を読む。 深見弾、吉上昭三、いずれの訳者も物故者であり、沼野充義が古い訳語を直すなど若干の手を入れている。 まずは『天の声』。宇宙からのニュートリノ波が観測され、ある規則性が見出され,何らかのメッセージであろうということになる。このメッセージを解読する「マスターズ・ヴォイス計画」略してMAVO計画がアメリカ合衆国政府によって立ち上げられる。この計画に参加した数学者ホガースの手記という形をとっている。 ポーランド語の題名は「天の声」とも「主の声」とも訳せるようだが、蓄音機に耳を傾ける犬のHis Master's Voiceを意識した題名のようである。件の犬は彼の飼い主の声と認知したのだろうか、認知したとしてもその内容を理解はしていないであろう。この宇宙からの「手紙」の一部から「蛙の卵」「蠅の王」と名付けられた有機物質が合成されるが、それが何だかわからず、結局人類は蓄音機に耳を傾ける犬のようにその内容を理解できない。 とにかく何も起きない。何もわからない。 『枯草熱』の原題は「カタル」であるが、この言葉はオランダ語から日本に入って、かつては鼻カタルだとか胃カタルなどと使われたもので、滲出性の炎症のことである。「枯草熱」も古い言葉で花粉症のことである。 「わたし」はアメリカの予備役の宇宙飛行士である。枯草熱のために予備役に回されてしまったのである。「わたし」はナポリからローマに移動するのだが、「最後の日は、いつになく、やけに長い一日だった。特に神経がとがっていたせいでもない。また恐れていたわけでもなかった」という冒頭の含意がわからぬまま、読者は自動車旅行に付き合わねばならない。 『枯草熱』はある種の推理小説である。「事件」は三分の一くらい過ぎたあたりでようやく開示される。ナポリで何人もの男が不審死していることに気づかれる。共通の特徴があるようなないような。温泉に逗留していた外国人の独り者の中年男性、アレルギー疾患を持っている。禿げている者が多いが全員ではない。死に方は幻覚を見たり錯乱状態になって死ぬか自殺するか助かる。ナポリから無事帰った者の中にも同じ特徴を持った者がいるので、その特徴が意味あるものかもわからない。 警察の捜査は行き詰まって打ち切られ、納得いかない遺族のひとりが資金を出して探偵社に調査を依頼するが、目立った成果は上がらない。同じ状況を作って何か起こらないかやってみるということになって、「わたし」が「被害者」と同じ行動をとってみることになったというわけだ。 しかし何も起こらぬまま、ローマの空港で「わたし」は偶然、日本人の自爆テロリストの巻き添えになりかかる。日本人のテロリストなんて今やまるでリアリティがないが、本書刊行時(1976年)にはまだ日本赤軍の活動が華やかだったのだ(と遠い目になる)。パリで「わたし」は犯罪捜査のためのコンピュータ・プログラムを開発中のバルト博士に相談に行くのだが…… 『天の声』ではニュートリノ波の規則性が偶然なのかメッセージなのかわからないのである。『枯草熱』では一連の事件の関連性と見える諸々が偶然なのか真犯人を示しているかわからないのである。かたやSFという形式で、かたや推理小説でレムはわれわれを不可知の中に放り出すのである。
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『スタニスワフ・レム・コレクション』の1冊。暫く品切れだったが、『短篇ベスト10』の刊行が決まって重版された。 『天の声』は『ソラリス』などに代表されるファースト・コンタクトもの。既存の作品と同様、コンタクトは失敗を運命づけられているが、本作を特徴づけているのは、『果たしてこれは...
『スタニスワフ・レム・コレクション』の1冊。暫く品切れだったが、『短篇ベスト10』の刊行が決まって重版された。 『天の声』は『ソラリス』などに代表されるファースト・コンタクトもの。既存の作品と同様、コンタクトは失敗を運命づけられているが、本作を特徴づけているのは、『果たしてこれは本当に「コンタクト」なのか?』という根本的な部分に関する疑問だろう。レムのファースト・コンタクトものの中で、『ディスコミュニケーション』というテーマに最も近い1作。 『枯草熱』はサスペンス風の長編。但し、ミステリだと思って読み始めると、解決編でぶっ飛ぶことになるw 寧ろこれは現代社会に対する思考実験を繰り返した結果なのでは? 因みに原題を直訳すると『花粉症』になってしまうらしい。一気に身近になってしまうから不思議w
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