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工藝の道 講談社学術文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 講談社 |
| 発売年月日 | 2005/09/10 |
| JAN | 9784061597242 |

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商品レビュー
3.8
5件のお客様レビュー
前半は、何を担保に「これは美しい」と言ってるのかわからなくて「?」となっていたけれど、それが初期の茶人の用いた器から、あとは筆者本人が良いと感じたものを並べているらしいと分かって本の内容が腑に落ちた。 柳宗悦のいう美はとても思想の美だなと思った。現代でも「何が美しいか」はとても難...
前半は、何を担保に「これは美しい」と言ってるのかわからなくて「?」となっていたけれど、それが初期の茶人の用いた器から、あとは筆者本人が良いと感じたものを並べているらしいと分かって本の内容が腑に落ちた。 柳宗悦のいう美はとても思想の美だなと思った。現代でも「何が美しいか」はとても難しい問いだけれど、この本は言葉やサンプルを替えて「何が美しいか」を繰り返し語り、ここでいう「美」の定義を伝えるという内容だった。 ただ私個人としては、その非常に社会主義的な考えは、明治後半〜昭和の時代だからこそのもので、個性から生まれた器が、無心から生まれた器に劣るかと言われたら悩むところだ。単純な比較はできない、優劣は共通の物差しがなければできない。けれど、自然によって支えられた美というのは、自分の感覚においてはあるなあと思う。 それが何なのかを読みながら色々考えてしまって、読み進むのが疲れる本だった… 自分は絵を描くので自分に置き換えて色々なことを考えた。工藝品ではないのでお門違いだが。 作品のなかに「偶然性」を持たせることは、作品の美を届かないところまで押し上げるのに有効かもと思った。すべてを計画通りに作り上げるよりも、手の感覚や、物理法則(インクをぶち撒けるとか)、そういう「狙ってなかったけど結果的に良い」というもの、人間の頭では行きつかない解像度に達するヒントになるんじゃないだろうか。 昔アクションペインティングが流行った時期があるけど、ああいうアーティストたちはその偶然性を作品に取り入れたかったのかなと思った。本を読んでいて何度も、ポロックの絵を思い出していた。そのあたりに詳しくないから想像だけれど。 まあ私のレベルに落とすなら…デジタルで絵を描くより、アナログのほうが感覚や偶然を掴めるかな… 偶然性は自然に由来するものだと思う。色を重ねたりとか、流れて底に溜まる釉薬とかは、自然界でよく起こる風景でしょう。物理法則に則って不自然でないものは、たぶん動物にとって安心できるものだ。 心がリラックスするものを生き物は「美しい」と感じやすいのではないか。それが柳宗悦のいう「自然の美」なのではないか。 けれど不自然な美もある。でもそれは無難な芸術作品に飽きた・慣れた人の発展した美で、これまでみてきた作品や景色や思想、経験によって好みが出るのかもと思った。
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工藝の本質は「用」である。工藝は「多」の美を、または「廉」の美を示す。工藝は労働の賜物である。個の天才ではなく、民衆が美の担い手である。すなわち、工藝は教団によって支えられて、協力により育まれる。手工藝にまさるよき工藝はない。正しい工藝は天然の材料による恩寵を受け、無心、無想によ...
工藝の本質は「用」である。工藝は「多」の美を、または「廉」の美を示す。工藝は労働の賜物である。個の天才ではなく、民衆が美の担い手である。すなわち、工藝は教団によって支えられて、協力により育まれる。手工藝にまさるよき工藝はない。正しい工藝は天然の材料による恩寵を受け、無心、無想による我の超越が美に直結する。自然と質素な、単純なものに美は収束する。。 格調高くて荘厳なレトリックでとにかくかっこいい。「工藝の美とは何か」が、作者で得る柳宗悦の直感に基づき(にも関わらず)論理的に述べられている。
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(01) 庶民が日常に用いる器具や道具に「民藝」と美を見いだした著者ではあるが,それら扱う器物に対して,著者の見解は,硬く,「直観」の精神主義(*02)が全面化している. 禅の思想の波及ともいえるが,著者に描かれる美のユートピア世界の理想は,現代においてもそこへ至る道のりはひたす...
(01) 庶民が日常に用いる器具や道具に「民藝」と美を見いだした著者ではあるが,それら扱う器物に対して,著者の見解は,硬く,「直観」の精神主義(*02)が全面化している. 禅の思想の波及ともいえるが,著者に描かれる美のユートピア世界の理想は,現代においてもそこへ至る道のりはひたすら遠く感じ,ゆえに芸術家が指導者として先導する美と工藝のユートピアは,目指されるべき世界であるかもしれないが,美の主体となる民衆の実感はごっそりと抜け落ちている. 協団という中世ギルドに着想した美の組織は異様ですらあり,そこは可笑しみとともに面白味がある.戦後のカルトには,美の意識は芽生えなかったものの,教団ないし協団が求めるワークには,工芸的なルーチンや,安価な労働力と材料,大量生産が目指されていなくもない. (02) 興味をそそるのは,経済性との調停が工藝を通じて目指されている点にもある.時間をかけずに大量に製作されるからこそ市場に出回り,安価に消費され,機能性の美が実現されるという理屈と情況は,現在,グローバル化やオートメーション化によって,別次元に突入しており,人間や機械が差し挟まれる余地は極めて少ない.消費社会が呼び込んだ商品が美しいかどうかという議論は,常になされるべきであるが,著者のユートピアとは別の「ゲテモノ」のディストピアが現代においては実現されている.
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