戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ

野中郁次郎(著者), 戸部良一(著者), 鎌田伸一(著者), 寺本義也(著者), 杉之尾宜生(著者)

• 販売会社／発売会社: 日本経済新聞社
• 発売年月日: 2005/08/08
• JAN: 9784532165291

商品レビュー

2025/11/25

殆どの本は企業の成功や失敗を他の領域に応用させるようなエッセンスを示すのに対して、本書は戦争という国家プロジェクトの本質から他の領域に応用させる珍しい本だと思う。まぁ戦争は国家プロジェクトとして最大のものであるから組織論や戦略論を語るには最も重要なものが詰まっているのだろう。

本書の内容で最も応用しやすいのは組織（戦略）の階層化だろう。5つのレベルからなる戦略は水平的・垂直的にダイナミックに影響し合うとのことであった。本書で紹介されている戦略的に成功したリーダー達はレベル毎の目的を明確化し、役割分担を確立している。ただ、レベル間を完全にカプセル化してもダイナミックな変化への対応が遅れ、組織としてイマイチに仕上がってしまう。レベル間の過干渉もマズイし完全な分離もマズイ、この絶妙なカプセル化こそ組織の難しいところ。つぶ餡のつぶつぶ具合を調整する腕こそリーダーの手腕ってことだな。

2025/03/26

やはり他の関連本同様、解説や分析、理論の部分。特に後半は頭に入って来ない。それに対して具体的な6つの戦争概略は読める。
本書も関連本同様、「著名な戦争の戦略概要を分かりやすく知るために価値がある書」として読むべき。

2024/04/07

途中まで読んだ放置していたものを読了した。
久しぶりに書物を精読した。というのは、近現代史に関する知識が欠けているために、それらを補いながら読んだためだ。
例えば、中東に関して。
第二次世界大戦のときにイギリスは二枚舌の外交を行う。ユダヤ人に対して建国の支援を、アラブ人に対してもオスマン帝国からの独立を約束して、戦争支援を取り付ける。その約束が果たされないと悟ったユダヤ人は、シオニズム運動によって1948年イスラエルを建国する。それに反発したアラブ人は建国の翌日からイスラエルに侵攻し、第一次中東戦争（パレスチナ戦争）が起きる。その後、1956年にエジプトがスエズ運河を国有化した第二次中東戦争（スエズ動乱）。1967年にイスラエルがシナイ半島を奪った第三次中東戦争（６日戦争）。そして、1973年に第四次中東戦争（ヨム・キプール戦争）が起きる。本書はこの第四次中東戦争を仕掛けたエジプト・サダト大統領の戦略に注目する。和平のために限定戦争を仕掛けた彼の天才性に感服した。