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女たちの絆
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2005/05/24 |
JAN | 9784622071426 |
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女たちの絆
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著者は米在住の著名なフェミニスト哲学者で、邦訳書も数多い。母の尊厳死の証人となるよう求められたのを契機に書かれた本書は、コーネルの著作の中でも最もパーソナルな情感にあふれていながら、なお深い哲学的洞察に裏打ちされていて、世代を超え国境を超えた「女たちの絆」を想像し追い求めようとす...
著者は米在住の著名なフェミニスト哲学者で、邦訳書も数多い。母の尊厳死の証人となるよう求められたのを契機に書かれた本書は、コーネルの著作の中でも最もパーソナルな情感にあふれていながら、なお深い哲学的洞察に裏打ちされていて、世代を超え国境を超えた「女たちの絆」を想像し追い求めようとする姿勢が静かな感動を誘う。 コーネルの母は、強い意志を持った明晰な女性でありながら、強い母の下で女性規範に縛られ叶えられなかった望みを子どもたちに託そうとした。最後に死を選ぶ権利を行使して自分自身であろうとした彼女と、その母親(コーネルの祖母)から引き継ぎ、パラグアイから迎えた養女に世代を超えて引き継ぐものを記述するために、本書でコーネルが主題に据えるのは、女性の「尊厳」という概念である。 明確な定義は与えられていないが、コーネルの考える「尊厳」とは、たとえ権利を否定された状態にあってもその人から奪われ得ないもの、自らのために夢を見、欲望を抱き、判断を下すことができる力ということができるだろう。これはつまり、権利を否定された女性をたんなる犠牲者と見なしたり、彼女たちの選択を「虚偽意識」と呼んで否定することなく、いかに主体性をもった存在として敬意を払うべきかという、ある意味では古典的なフェミニストの倫理的命題でもある。コーネルは、尊厳を可能にするための基盤となる心的空間を、自らについてこうでありたいと夢見、あるいは違うようにもありえた人生を悼むための「イマジナリーな領域」と名付け、それが個人的なものでありながら同時に共同体への呼びかけをはらむものであることを、ラカン、カント、スピヴァクに拠りながら明らかにしていく。 今回10年ぶりに再読してあらためて目を開かれたのは、第2章におけるコーネルのラカン読解のラディカルさだ。子どもが母との分離という傷を経て、言語の法に支配された象徴界に入り、主体化(そして性別化)されていく過程に関するラカン(とフロイト)の理論はどうしようもなく家父長的言語に毒されていて、わたしも毎回激しい抵抗感なしには読めないのだが、なんとコーネルは子どもの「象徴的去勢」の契機から「欲望の主体としての母」を読み出してくるのである。しかも母の欲望は「父」である必要はなく、同性の恋人でも仕事でも執筆中の本でもかまわないのだと。そしてたしかに、こうやってラカンの理論から家父長制の汚染をとりのぞいてフェミニスト的転回をくわえれば、これは立派に母と娘の分離と主体化の理論となりえ、「ファロス」よりもより適切な象徴として、分離の傷跡としての「臍」が採用され得るかもしれないのであった。 主体化の前に存在した、彼女自身の欲望を備えた「始原の他者」とのつながりは、続くカントとスピヴァクの議論を通して、想像を通して構成される他者たちとの共同体への呼びかけへとつながっていく。 もっとも、圧倒的な密度で論じられる世代間の連帯にくらべ、グローバリゼーションの時代における国境を超えた女性たちの尊厳に基づく連帯という議論が、「あなたはフェミニストですか?」という問いかけも含め、比較的に薄ぺらに感じられてしまうのは否めないところだ。実は、合衆国で家内労働者として働く「ユニティ」の女性たちとの会話の中でわたしが最も興味を覚えるのは、「清掃の仕事は自分でコントロールができるので尊厳が保てる仕事だが、育児はそれが不可能だから」と、彼女たちが育児労働を拒否しているという事実であった。コーネルは実際、本書の冒頭あたりで「ケアと正義」を「尊厳」とならんで本書の重要なテーマに掲げているのだが、合衆国において他人の子どもをケアするという「尊厳の保てない仕事」に多くの移住女性が就いているという現実に即しては、このテーマを深めようとしていない。彼女たちは自分の子どもを他人に委ねている一方で、自分がケア責任者となったアメリカ人の子どもにも強い愛情を抱いていると述べているが、たとえばそのような強い感情をともなわざるを得ないケア労働と尊厳とは、どのような関係にあるのだろうか。そうした探求は、彼女がパラグアイから養女を迎えた白人の母親としての自身の立場に倫理的考察をめぐらすのと同じくらいに重要なことだと思われるのだが。 このような「横への連帯」の考察については不十分な観念論にとどまっている感じがしないでもないが、そうした不満をしのぐほど、母たちへの敬意の情とパワフルな哲学的議論に圧倒される。重要な本である。
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