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影との戦い ゲド戦記 Ⅰ
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影との戦い ゲド戦記 Ⅰ

アーシュラ・K.ル・グウィン(著者), 清水真砂子(訳者)

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影との戦い ゲド戦記 Ⅰ

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店/
発売年月日 2000/07/01
JAN 9784001106848

影との戦い

¥110

商品レビュー

4.3

107件のお客様レビュー

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2024/11/17

私たちは誰もが自分の影と向き合わなければならない『影との戦い』は、そんな普遍的な真実を描いた物語です。 物語は、少年が魔法の才能を開花させていく過程から始まります。彼は荒々しい山村の鍛冶屋の息子でしたが、その類まれな魔法の才能を見出された後、魔法使いの島ロークに渡り、魔法学校で...

私たちは誰もが自分の影と向き合わなければならない『影との戦い』は、そんな普遍的な真実を描いた物語です。 物語は、少年が魔法の才能を開花させていく過程から始まります。彼は荒々しい山村の鍛冶屋の息子でしたが、その類まれな魔法の才能を見出された後、魔法使いの島ロークに渡り、魔法学校で学びます。そこで彼は多くのことを学び、成長していきますが、同時に自分の中にある危険な傲慢さも育んでいきます。その傲慢さが、やがて取り返しのつかない過ちを引き起こすことになります。 グウィンは従来のファンタジー作品によく見られる「善と悪の戦い」という単純な図式を避けています。代わりに彼女が描くのは、一人の少年が自分の内なる闇と向き合い、それを受け入れていく成長の過程です。ゲドが追いかける「影」は、錬金術でいう「ニグレド(黒化)」の段階を思わせます。それは魂が自らの暗部と出会い、それを浄化していく過程の始まりなのかもしれません。影から逃げ回るうちに、彼は重要な真実に気づいていきます―影は倒すべき敵ではなく、自分自身の一部なのだということを。 作品の舞台となるアースシー世界は、広大な海に浮かぶ数多くの島々からなる豊かな世界です。そこでは魔法は学問として体系化され、言葉の持つ力が重要な意味を持ちます。すべてのものには「真の名」があり、それを知ることは、その本質を理解することを意味します。これは古来からの神秘思想に通じる考え方です。物や存在の真の名を知ることは、その内なる本質との魂の次元での出会いを意味するのです。 グウィンの文体は詩的でありながら無駄がなく、一つ一つの言葉が慎重に選ばれています。彼女は壮大な冒険を描きながらも、その本質は人間の内面の旅路にあることを忘れません。ゲドの航海は外なる世界の探検であると同時に、内なる世界への巡礼の旅でもあるのです。 物語は魔法や竜、幻影といったファンタジーの要素に彩られていますが、その根底にあるのは深い人間理解です。私たちは誰もが自分の中に光と影を持っています。陰陽のように、これらは対立するものではなく、互いを補完し合う存在なのです。その両方を受け入れ、バランスを取ることができたとき、はじめて本当の意味で「全体」となれる―そんなメッセージが、この物語には込められています。 特筆すべきは、この作品が「若者向けファンタジー」の枠を大きく超えている点です。確かに主人公は若者であり、物語は「成長」をテーマとしていますが、そこで提示される問題や洞察は、年齢を問わず私たちの心に響きます。自己との和解、バランスの探求、名前と本質の関係、力と責任の問題―これらのテーマは、読者の年齢や経験に応じて、様々な深さで読むことができます。 アースシーの海を渡る帆船のように、この物語は私たちを未知の水域へと導きます。その航海は時として、古来の賢者たちが語った「魂の暗夜」を思わせます。そして航海の終わりに私たちが見出すのは、新しい場所についての知識だけでなく、自分自身についての深い理解なのです。グウィンは私たちに、影を恐れることなく受け入れる勇気を、そして自分自身の全体性を受け入れる智慧を語りかけてくれます。 『影との戦い』は、ファンタジーという形式を通じて、人間の心の真実に迫った傑作です。それは恐れや孤独、プライド、そして最終的には自己受容について語る普遍的な物語です。

Posted by ブクログ

2024/05/06

ただひたすらに物語が面白かった。 まるで実在する世界かのような細やかな設定に驚き、そして尊敬した。 普段は「このキャラクターが好きじゃない」とか「このキャラクターがいなければ好きになれたかもしれないのに」と、キャラクターの性格や言動を気にしてしまうがこの作品にはそれがなかった。...

ただひたすらに物語が面白かった。 まるで実在する世界かのような細やかな設定に驚き、そして尊敬した。 普段は「このキャラクターが好きじゃない」とか「このキャラクターがいなければ好きになれたかもしれないのに」と、キャラクターの性格や言動を気にしてしまうがこの作品にはそれがなかった。 どんなに嫌な人間が描かれていても「そういう人物がいたのだな」と客観的でいられた。 物語を邪魔するものが何もなく、ただただワクワクしながら読んだ。 昔の作品でありながら古くない。 今後も多くの未来の読書家をうむであろう、素晴らしい作品だった。 いつの時代も、どの地域においても、どんな立場の人間であっても”影との闘い”は必須。 冒険小説でありながら、バイブルのような印象も受けるシーンが多くあった。

Posted by ブクログ

2021/12/09

次男が借りて来たので、隙きを付いて私も読んだ。 有名作品だが読むのは初めて、アニメかも見ていないので、そもそも「ゲド」が主人公の名前だとも知らなかったわ。 そしてそのゲドは案外身勝手で虚栄心も高いという主人公にしては珍しくも人間的欠点が多くて面白い。 ※※※ラストまで完全ネタバ...

次男が借りて来たので、隙きを付いて私も読んだ。 有名作品だが読むのは初めて、アニメかも見ていないので、そもそも「ゲド」が主人公の名前だとも知らなかったわ。 そしてそのゲドは案外身勝手で虚栄心も高いという主人公にしては珍しくも人間的欠点が多くて面白い。 ※※※ラストまで完全ネタバレしています※※※ 舞台は作者が作った架空のアースシー世界。海に浮かぶ100以上もの島々。 島同士の戦争や、竜などの獰猛な怪獣たちの来襲がある時代。 この世界では魔法使いがいる。 なかでもロークの魔法学院で学び、聖人から正式に魔法使いの杖を授与されたものは正式な魔法使いとなる。待てょう使いたちは要請のある各地に派遣されたり、魔法使いとしての働き口を得て船を魔法で補強したり、風を起こしたり、村が襲われたら人々の姿を隠したりする。 正式に魔法使いとならない者は、まじない師として日常的な小さな魔法を村の人々の生活に取り入れている。 この世界での魔法の根源は、名前。名前は本質であり、人間には幼名と普段使う呼名と、そして自分の家族や親友や配偶者にしか知らせない本当の名前がある。 魔法を使っての戦いは、相手の名前を知り抑えたものが優位となるし、ものの姿を変えるとは名前を変えることとなる。だから他のものに姿を変えすぎぎて名前が変わってしまうと、元の自分に戻れなくなることもある。 なかなかしっかりしているなあと思ったのが、魔法というのは結局は言葉であり名前だというために、魔法が使えるからと言って何でもありではないということ。 無いところからなにかを出すという魔法は、言葉を具現化すること。だから「肉を食べたい」として肉を出してもそれは「肉という言葉」を食べたことにしかならない。 高名な魔法使いや、勇者たちには「武勲(いさおし)の歌」がある。これはこの世界でも最も優れた魔法使いのゲドの物語。武勲の歌ですら語られない彼の成長期だ。 彼はゴント島の鍛冶屋の生まれだった。まじない師の叔母から教わった簡単な魔法はすべてものにした。動物を呼び寄せる呪文により野生の鷹を呼び寄せる姿から、彼の呼名はハイタカとなった。 ハイタカはとても功名心が強く、怒りっぽく、虚栄心の強い性格だった。 やがてハイタカは、大魔法使いのオジオンの弟子になる。そのときオジオンはハイタカに新しい本当の名前を与えた。  「ゲド」  ゲドは師匠オデオンのもとで魔法の力を増して行き、この老師匠を深く尊敬するようにはなるが虚栄心も増して行った。 ある時見栄を張るために禁じられた魔法を唱えたゲドは、死の国から影を呼び出しかける。 更に強い魔法を求めるゲドは、ロークの学院に向かう。 ここで彼は親友のカラスノエンドウと、ライバルのヒスイと知り合う。 ゲドの魔法の力は増すばかりで、ローク学院一とも言われる。 だがヒスイに挑発されたゲドは、死者を呼び出す魔法を唱えて、死の国から影を呼び出してしまう。 影は激しく暴れて、ヒスイとゲドを傷つけ、そしてどこかへ去って行ってしまった…。 この影はゲドが出したもの。ゲドが死ぬまでつきまとうもの。もしもゲドに追いついたら、ゲドを喰らって乗っ取ってしまうだろう。 ローク学院での修行を積んだゲドは、自分が逃した影を追う旅に出る。 かつて学院一の才能と言われたゲドの高慢な性格は、小さな島をまわり、領民と交わり、そして影との戦いに無力な自分を自覚してゆくにつれて優しいものとなってゆく。 学院を出てから2年後、ゲドは先に卒業していたカラスノエンドウと再会する。彼らは本当の名前を教え合う親友だった。 カラスノエンドウは、ゲドの影との戦いに同行を申し出る。 影と戦うには、影の名前を知らなければならない。だがあの影に名前などあるのか。 海の長旅の末影に追いついたゲドは悟る。 自分から出た影は自分自身だ。 ゲドと影は同時に相手の本当の名前を言う。  「ゲド」 ゲドとその影は一つになった。 ゲドは自分の死を自分のものとして、自分自身を全て受け入れたのだ。 そうなったゲドは、もはや憎しみや破滅にとらわれることなどなく、己の生を全うするために生きるのだ。

Posted by ブクログ

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