裁判員制度と取調べの可視化

日本弁護士連合会(編者)

• 販売会社／発売会社: 明石書店/
• 発売年月日: 2004/10/10
• JAN: 9784750319841

商品レビュー

2010/11/01

捜査機関側の論文も読まなければ！
本江威憙「取調べの録音・録画記録制度について」判例タイムズ1116号

P21　捜査機関が可視化に反対する根拠
①取調官と被疑者の間で信頼関係が構築できず被疑者が真実を語らない
②日本の精密司法に合わない
　（「精密司法」＝立証が要求される内容が緻密でなければならない。また、立証の程度も高い。）
③再生・反訳に膨大な時間・労力・費用を要する
　↓
批判（①P21②P24③P25）
①・正々堂々と構築すればよい
　・現在が信頼関係に基づいた供述なら覆さない
　・被疑者側が求めた場合に拒む理由はない
　・組織犯罪のケースでも、むしろ密室では組織内部のことをしゃべらせるために自白強要がなされる危険性が高い
②・密室での詳細な自白が得られたからといってその自白によって立証の内容が緻密になったり、立証の程度が高くなるはずない
　・むしろ現在はストーリーに合うよう強要された自白によって事実認定がなされている、自白に頼ったずさんな捜査
③・供述内容を争う事例がなくなり、再生しなければならない事例はほとんど生じない
・自白強要のため長時間と取調べに複数の取調官、のほうがコスト
・裁判で争われるほうがコスト

P204 リクルート事件
検察官も「認めないと社幹部を逮捕する、社はつぶれるぞ」「認めれば早い時期に保釈される」と利益誘導をしたり、
・耳元で大声で怒鳴る
・机を蹴り上げる、叩く
・長時間壁に向かって顔が壁につくほどの至近距離で目を開けたまま立たせる
・土下座させて謝らせる
などの肉体的強制をしていたことがなにより残念。
もっとスマートに、紳士的な、正当な仕事でなくちゃ！