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虜人日記 ちくま学芸文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2004/11/12 |
JAN | 9784480088833 |
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商品レビュー
4.5
17件のお客様レビュー
太平洋戦争中の体験を綴ったノンフィクション作品。著者自身が実際にフィリピンのジャングルでの逃亡生活と捕虜体験を克明に記録したもので、貴重な資料でもある。著者は、台湾製糖株式会社の醸造技術者として、ブタノール生産のためにフィリピンに派遣された。戦線が米軍との戦いに敗れた後、部隊と共...
太平洋戦争中の体験を綴ったノンフィクション作品。著者自身が実際にフィリピンのジャングルでの逃亡生活と捕虜体験を克明に記録したもので、貴重な資料でもある。著者は、台湾製糖株式会社の醸造技術者として、ブタノール生産のためにフィリピンに派遣された。戦線が米軍との戦いに敗れた後、部隊と共に山中に逃げ込み、その間の逃亡生活と捕虜としての体験綴ったを日記である。 文学的な創作が無い事、著者自身の死後に家族が出版されたものという事で、打算的な思惑が無い事が、装飾なきリアルな記録として価値のあるものだ。 部隊でコックリさんが流行ったとか、実際に人肉を食わざるを得ない話とか、慰安婦を相手にしただらけきった軍隊生活など、軍に対する批判的な視点を隠さない。特に、ちょっと表現は異なるが「優秀な奴は先に死んで行って、残された奴は卑怯者ばかりだ」というような記述は痛烈だ。死後、日記が漏れて、家族が不利益になるリスクがある事を考えれば、日記すらも取り繕いそうなものだが(実際にそのような日記も存在したと聞く)、そこまでは気にしなかったのだろうか。 敗戦の反省、原因分析もしている。あくまで個人的な分析だ。彼我の物量の圧倒的差は、一般的にも語られるものだが、その中でもはっきりと、戦争後期における軍隊の劣化について述べられている。士気を保つ事は難しいし、腐りきっていく構造的な致し方なさも想像に難くない。負けるべくして負けた。後世の人間は好きに言えるが、当事者たちもそう感じていた事は理解しながらも悲劇であり、皮肉である。
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戦争の現実を絵と文字で記録。描かれた内容は大変悲惨なものだが、記録的で客観視された中立的な短い文章なので、分かりやすいし、自分だったらと思いながら読み進めた。 1944年頃の南方の戦いは、戦うことも出来ない状況。食料や武器の補給もなく、圧倒的に戦力差がある中で、生き残るのは、運と...
戦争の現実を絵と文字で記録。描かれた内容は大変悲惨なものだが、記録的で客観視された中立的な短い文章なので、分かりやすいし、自分だったらと思いながら読み進めた。 1944年頃の南方の戦いは、戦うことも出来ない状況。食料や武器の補給もなく、圧倒的に戦力差がある中で、生き残るのは、運と体力と個人的な知識と冷静な目が必要だと思うが、そんな単純に言える事でもない。 戦争で日本が現地の人にしたこと、日本軍の体罰をするルール、情けない上役と、堂々たる人間性を持った人物、文化的嗜みを持ち続けた人、欧米人の命を大切にする考え方など、印象的な箇所がたくさんあった。 著者の中で、勝戦国は一国家的な考えじゃなく、全世界的な見方で平和を築いて欲しいと書かれていた。戦争は嫌だ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本作は、醸造技術をもつ企業人が軍属としてフィリピンへ派遣され、業務を行い(アルコール製造)、終戦を迎え、捕虜として過ごした筆者の、およそ二年ばかりの日記であります。 ・・・ 類似の作品に、た山本七平氏による『一下級将校の見た帝国陸軍』がありますが、本作はこれとは大きく毛色が異なります。『一下級―』が文字通りの戦中記であり、九死に一生を得るかのごとくの怨讐に満ちた筆致で生死の淵を描くのに対し、本作は後方支援部隊からの視点であり、緊張度は若干低めかもしれません。 ただし、小松氏の超然とした視点は、女遊びに現を抜かす日本軍兵、その兵士が苦しんでいるジャングル行軍に自分の女とその荷物を運ばせようとする将校、人はいるものの物資も食料もない現地の状況(ロジスティック不全)、等々を克明に捉えています。 また小松氏の描写は、現場から常に一歩引いており、時に詩歌や絵画の挿絵があり、ジャングルでの調理シーンなどはむしろユーモアすら感じぜずにはいられないものでありました。限界的状況でも文化的精神を失わない氏の人格には敬服するばかりです。それゆえか読んでいてまったく凄惨な気持ちになりませんでした。 ・・・ もう一つ驚くのは、本作が氏の死後にその家族によって私家版として出版されたことです。 つまり氏は本稿を出版することなく亡くなっているのです。あとがきで娘さんが書かれているように、まさか父が思想的にこのようなことを考えていたとは露知らなかったとのこと。それだけ本作の信ぴょう性は高まろうかとも思います。筆者は自らの記憶をとどめるためだけに書いていたということでしょう。記録とは実に大事であります。 ・・・ ということで戦記物でありました。 読んでどうなるというものではないでしょうが、やはり感じるのは、自分で考え、表現すること、の大事さであります。筆者は単なる軍属とはいえ、キチンと自身の意見をもち、時に将校にも議論をし、行動を決定していました。人の死のタイミングは多分に運命に左右されますが、それまでの人生はやはり己の掌中に持っておきたい、そう感じた読書体験でありました。
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