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戦後文学放浪記 岩波新書

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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店/ |
発売年月日 | 2000/06/20 |
JAN | 9784004306788 |


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戦後文学放浪記
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安岡章太郎といえば多くの私小説・短編を描き、「悪い仲間」「陰気な愉しみ」で芥川賞を受賞した小説家だ。残念ながら私はこれまであまり同氏の作品を読んだ記憶が無いのだが、一時期は国語の教科書にも掲載されていたそうだ。学校の国語の授業に興味があまり無かった自分には作者の名前などほとんど記...
安岡章太郎といえば多くの私小説・短編を描き、「悪い仲間」「陰気な愉しみ」で芥川賞を受賞した小説家だ。残念ながら私はこれまであまり同氏の作品を読んだ記憶が無いのだが、一時期は国語の教科書にも掲載されていたそうだ。学校の国語の授業に興味があまり無かった自分には作者の名前などほとんど記憶に無いので、当然どの作品を読んだか読んで無いかよくわからない。 小説家が小説を描く時、多分にその人の経験や精神状態などが内容に影響すると思う。安岡は若かりし頃に太平洋戦争に動員され、病気を患った事で戦地に赴く事はなかったそうだが、その病床で作品を描き始める。その後、敗戦の昭和の時代に様々な文筆家との交流を経ながら次々と作品を出していく。その殆どは私小説であり、日常の何でも無い風景、人を対象に描いていくから、それこそ小説などの読み物にスリルや非日常を求める読者には決して楽しいと思えるものでは無い。だが、いくつか読んでみると、非常に細かく繊細に描かれる対象物の気持ちや心の中が露わにされる様な、まるで文章から声が発せられ様な感覚に陥る。そして小説の中の話なのか、自分の今の体験なのか、区別がつかないような感覚を覚える。勿論私は戦後間もない混乱の時代をよりもずっと後に生まれているから、そこに居るはずはないのであるが、あたかも実体験したように、飲屋街の薄暗い灯り、箪笥の上の埃、ほつれた畳の居心地の悪さなどが肌に伝わってくるようだ。恐らくはそれが私小説の良い所なのかもしれないが、安岡章太郎の文章には、いつそのシーンに自分が飛び込んだか判らない、いつの間にか入り込める魅力がある。 小説を読む場合に作家の背景を知る事で、作品に親近感を覚え、入り込みやすくなる。本書はそうした意味で安岡章太郎が歩んだ道のりを一緒に辿る事ができ、それまで読んだ作品の振り返りとして、更には本書を読んだのちに改めて触れる事で、新たな発見と気づきが得られるものとなっている。未だ未だ私が読んだ事のある作品はほんのごく一部だろうから、色々探してみたい。
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