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小さな町で 大人の本棚
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2003/12/10 |
JAN | 9784622080459 |
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小さな町で
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商品レビュー
3.8
5件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
フランスの田舎町セリイを舞台に、町の人々の日常で起こる様々な事件集めた短編集。フィクションかと思ってたら実在の町みたいですね。イーノック・アーデンみたいな話やキリスト誕生パロディも。 町にフォーカス、というのはジョイスのダブリン市民に似ているが、より田舎な町を舞台にしている分、より個々の性格やプライベートな事象に焦点が当てられている。あとなんかエグい話が多い。 どうでもいいけど著者の名前のフランス王朝感すごい
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フランスの中央部に位置する人口二千人足らずの小さな町セリイを舞台に、そこに暮らす市井の人々のつつましやかな日常を、鮮やかに切り取って見せた短編小説集。家族の誕生や死、隣人との小さな諍い、時折起きる事件とも言えぬできごとを、乾いた筆致でさらりとスケッチした独特の作風は、小さなものを...
フランスの中央部に位置する人口二千人足らずの小さな町セリイを舞台に、そこに暮らす市井の人々のつつましやかな日常を、鮮やかに切り取って見せた短編小説集。家族の誕生や死、隣人との小さな諍い、時折起きる事件とも言えぬできごとを、乾いた筆致でさらりとスケッチした独特の作風は、小さなものを愛でる日本人によって殊の外愛され、他国に比べ根強い人気を持つという。映画の原作にもなった『ビュビュ・ド・モンパルナス』の名前だけは知っていたが、フィリップという作家は読んだことがなかった。 ヨーロッパ随一と言われる一万ヘクタールにも及ぶトロンセの森に囲まれた小さな町は木靴職人や家具屋、桶屋という森から取れる良質の木を使った仕事に頼る職人の町である。普段の食事はスープに浸したパン。客が来たときだけハムやソーセージ、それに葡萄酒を買いに行くという質素な生活を営む人々。『小さな町で』という題名から想像されるのは、あたたかな人々の心やしみじみとした人生の哀歓といったものだろう。 たしかにそういう話もある。田舎の人がいつまでも一つ話に語るような滑稽な逸話や子どもの心の中に入り込んだみずみずしい情感にあふれた作品も少なくない。しかし、一読後本の表紙を閉じて思うのは、非情な酷薄さと言うと言い過ぎかもしれないが、人間の生死を透徹した眼で見切ったという感じの冷たく乾いた印象である。 妻に死なれた男が、独身生活を謳歌するのも束の間、すぐにさびしくなり、新しい伴侶を一日で見つけて来るという「求婚者」。妻子を捨てた男が家に帰ってみると、そこには自分の代わりに昔の友人が妻と暮らしていた。男は、元の妻と友人、子どもたちと共に粗末な夕食をすませると、夜の町に戻ってゆくという「帰宅」。いずれも、別の終わり方もとることができる作品であるのに、あえて、そうはしない。 子どもの心理をつかむのに長けた作家だと思う。しかし、そこに描き出された子どもの心はと言えば、カービン銃を見つけた少年が犬を撃ち殺してしまう「犬の死」といい、教師の意地悪な仕打ちに対して、度重なる懇願にもかかわらず「否(ノン)」を言い続ける娘の心に寄り添った「強情な娘」、新しく生まれた弟が自分に向けられるはずの母の愛を奪い取ったと思い、嫉妬の果てに死を選び取る「アリス」と、どれもかなり暗い。 木靴職人の家に生まれたフィリップは7才で結核性の病に冒され顎が陥没するという悲劇に見舞われる。おまけに全身の発育が不全で、身長は153センチメートルしかない。長じてパリに出るが、街娼と同棲して梅毒をうつされ、最後はチフス、脳膜炎に冒されて死亡。享年35。作家の人生がその作品に影を落としているとしても無理はないかもしれない。訳者は「暗い題材を扱いながらも、フィリップはどこかにとぼけたようなおかしみ、人生そのものの諧謔をしのびこませるのを忘れない」と書くが、書き忘れた作品も少なくないように思う。 そんな中で、「人生そのものの諧謔」を感じさせてくれるのは、仲の悪かった隣同士の老嬢が、相手の引っ越しをきっかけに、友情を再発見する「お隣同士」。別れた女房と何年かぶりに町で出会って、当時は気づかなかった互いの良さを見つけながら、結局は今の結婚生活に戻らざるをえないというよくある話を描いた「再会」は、甘さの中に苦さを封じ込めた大人の味を感じさせてくれる。他にも、味わい深い佳作が並ぶ。シリーズ「大人の本棚」に相応しい小品集である。
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100年ほど前に書かれた短篇集。 作者のフィリップが生まれたフランス、セリイを舞台にした町の住人たちのお話。 山田稔さんが翻訳をしているから、まるで山田さん自身が書いたようなの作品だった。 訳者解説にこの本について的確な説明があったので抜粋しておく。 《 四百字詰原...
100年ほど前に書かれた短篇集。 作者のフィリップが生まれたフランス、セリイを舞台にした町の住人たちのお話。 山田稔さんが翻訳をしているから、まるで山田さん自身が書いたようなの作品だった。 訳者解説にこの本について的確な説明があったので抜粋しておく。 《 四百字詰原稿用紙に直してほぼ十枚、このわずかな枚数のうちに人生の断片が、いやときには一つの人生がみごとに描き出されている。これらを読めば、長く書く必要はないことをあらためて反省させられるだろう。 貧困、不幸な恋、病気、老年、死 ──── こうした暗い題材を扱いながらも、フィリップはどこかにとぼけたようなおかしみ、人生そのものの諧謔をしのびこませるのを忘れない。そのエスプリというか奇妙なやさしさ、人生を低い視点から、狭く限って、鋭くながめる、》 すごく読みやすくておもしろくて、本当にあっという間に読み終えてしまった。 フィリップの他の作品も山田稔さんの訳で読んでみたくなった。
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