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アメリカの反知性主義
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アメリカの反知性主義

リチャード・ホーフスタッター(著者), 田村哲夫(訳者)

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アメリカの反知性主義

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2003/12/24
JAN 9784622070665

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2021/11/16

ホーフスタッターの有名な本。近年「反知性主義」という言葉が盛んに使われるが、そのもととなっているのはこの著書だ。この本の表紙に写っているのは、「赤狩り」旋風を吹き起こしたマッカーシーである。 反知性主義とは、民主主義や社会主義のようなはっきりとした主義主張のある思想のことではない...

ホーフスタッターの有名な本。近年「反知性主義」という言葉が盛んに使われるが、そのもととなっているのはこの著書だ。この本の表紙に写っているのは、「赤狩り」旋風を吹き起こしたマッカーシーである。 反知性主義とは、民主主義や社会主義のようなはっきりとした主義主張のある思想のことではない。それは、知性的であることに対するさまざまな意味での反感だったり、知性よりも別の人間の側面を優位におくことだったりすることだ。著者は様々な文脈における反知性的態度を一括して「反知性主義」と呼んでいる。著者によれば、アメリカには建国当初からそうした反知性的傾向が強いらしいのだ。 しかし、具体的にどのようなものかを例示しなければ、反知性主義がどういったものであるかは分かりにくいだろう。具体的には、以下のようなものだ。 宗教……進化論に対する対決。知性よりも信仰を重んじるべきだ。大学は信仰を失わせる。 実業界……大学出は役に立たない知識を詰め込んでいる。経験がすべて。 政治……インテリの社会実験は机上の空論を現実に適用する危険なものだ。政治は汚い男社会の原理で動いており、優男の知識人に活躍の余地はない。 労働運動……汗水たらして労働しない知識人に労働運動の主導はできない。 教育……民主的教育は、子供たちに教育を合わせるべきであり、知識を押し付けるべきではない。 日本でもこうした意見はありふれたもので、だれもが日常的に経験したことがあるはずだ。そしてこういう意見も、極端な場合を除けば、尤もなところがある。 感動的なのは、そうした多様な敵対的態度に囲まれた知識人をあつかった最終章である。知識人はどうするべきだろうか。著者は、体制に順応することもひとつの手だとして否定しない。しかし著者の共感は、あきらかに、逆境におかれながらも信念を貫く孤独で不屈な知識人のほうにある。著者はアメリカ社会を批評しながら、そうした社会に生きる知識人を応援しているのだ。

Posted by ブクログ

2020/05/01

米社会の基底部に存在する反知性主義の淵源に迫る 昨今のアメリカの行動を熟考と批判精神を欠いた「反知性的」振る舞いだと感じる人は少なくないだろう。一方で、アメリカが国際社会の中で他を圧するパワーを持っていることに疑いを持つ者もいない。なぜ「反知性主義」のアメリカが他を圧するパワーを...

米社会の基底部に存在する反知性主義の淵源に迫る 昨今のアメリカの行動を熟考と批判精神を欠いた「反知性的」振る舞いだと感じる人は少なくないだろう。一方で、アメリカが国際社会の中で他を圧するパワーを持っていることに疑いを持つ者もいない。なぜ「反知性主義」のアメリカが他を圧するパワーを持っているのか。 「反知性主義」とは、単に無知蒙昧を擁護する立場ではない。それは、平等主義、実用主義、実践主義として現れる心的姿勢と理念であり、知性と知識人に対する憤りと疑惑となって現れる。このような意味での「反知性主義」は、普遍的な性格を持つ。しかし、本書は、アメリカ固有の「反知性主義」を問題とし、それがいかにアメリカ社会の本質に深く関わってきたかを解き明かしていく。40年前に出版された本書が今なお色褪せないゆえんである。 アメリカにおける「反知性主義」の伝統は、ヨーロッパの宗教的伝統を断ち切って移民してきた人々が、その精神的安定の基盤を聖書(イエスの福音)のみに求めようとした福音主義の伝統の中に見出せる。福音主義は、万人の平等を強調すると同時に、当時の知的階級を代表する聖職者たちを排除していった。 「反知性主義」は、政治の世界でも、知性と教養を持つ者による支配を否定し、平民の参加を推し進めた。アメリカで人気のある大統領は、決して知識人タイプの人物ではなかった。1952年の大統領選挙で勝利を収めたのは、いかにも知識人好みのスティーブンソンではなく、アイクの愛称で知られる庶民的なアイゼンハワーだったことも知識人に対する不人気を象徴する。 実用や実践を重んじるビジネスの世界も、しばしば「反知性主義」的である。文化や伝統的価値を著しく欠くアメリカ社会では、ビジネスの成功はそれに代わり得る位置を占め、知識人と対立してきた。しかし、このような社会において知識人は、自ら拠って立つ基盤をビジネスの成功に求めざるを得ないという逆説も存在する。単純な二項対立で「反知性主義」の問題を扱えないことが繰り返し指摘されている。 「反知性主義」は平等教育、民主主義教育を掲げるあらゆる教育改革運動の中にも見出せる。デューイの教育思想も「反知性主義」的伝統の下で解釈し直される。 本書は、アメリカにおける「反知性主義」を単に糾弾するのではなく、その歴史的水脈を明らかにすることによって、現代社会において知識人が果たし得る役割とは何かを鋭く問い掛けてやまない。 (2004.4.17 週刊東洋経済掲載)

Posted by ブクログ

2019/12/30

積読になっていたのを年末に奮起して成敗してやったのだが、かなりの読み応えであった。この本を十分にあじわうには、ワタクシの知性ではちょっと足りないのかもしれない。長くはないもののアメリカの通史をさらえて反知性主義と知識人のせめぎあいを丁寧に丁寧に事例をつらねて検証していくので、ある...

積読になっていたのを年末に奮起して成敗してやったのだが、かなりの読み応えであった。この本を十分にあじわうには、ワタクシの知性ではちょっと足りないのかもしれない。長くはないもののアメリカの通史をさらえて反知性主義と知識人のせめぎあいを丁寧に丁寧に事例をつらねて検証していくので、ある程度はアメリカの歴史、特に政治史、文化史、宗教史に案内がないとつらい感じはある。特に19世紀は「南北戦争あったよね」「ジャクソンってなんかひどかったらしいね」くらいの感覚しかないので苦戦した。 とは言え、皆様ご承知のとおり、反知性主義(と、それと対になる知識人サイドの問題)はまったく古びても廃れてもおらず、本書の議論の多くはそのまま現代にもってきても全然違和感がない。ジェファソンがそのスノッブさゆえに攻撃されるさまからはオバマを連想してしまうし、右翼は標的としての共産主義者を必要としていたなんて話は共産主義者をヒラリー・クリントンに置き換えてみてはどうか。 ひとつ本書で気づかされたのは、反知性主義と知識人とは、アメリカの歴史を通じて一種のシーソーゲームを演じてきている点だ。たとえば、本書執筆の背景として1950年代の赤狩り等があることは裏表紙の紹介文にもあるとおりだが、本書が出版された1962年には、スプートニクショックもあって反知性主義はいったん鳴りを潜め、赤狩りも終息し、時代はベスト&ブライテストのケネディ政権になっている。そういった揺り戻しは建国時代からずっと交互に続いている。2020年にはどのような顛末が待ち受けているのだろう。 最後に一点、誤訳を発見したのでご参考までに。 196ページに「人気投票」なる語句が何回か登場しており、その部分は意味が取りづらくなっている。それはpopular voteの誤訳で、正しくは「総得票数」とでもすべき語句。有権者が直接選出するのは選挙人団であるための独特の用語である。

Posted by ブクログ

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