病むアメリカ、滅びゆく西洋

パトリック・J.ブキャナン(著者), 宮崎哲弥(訳者)

• 販売会社／発売会社: 成甲書房/
• 発売年月日: 2002/12/05
• JAN: 9784880861388

商品レビュー

2024/07/13

『#病むアメリカ、滅びゆく西洋』

ほぼ日書評 Day791

著者は米国では「超保守派」とされ、大統領選への出馬経験もある論客による原著は2002年と20年少々前の刊行だが、現在の日本で妙に既視感のある内容。

例を引いてみる。

50年後、アメリカにはマジョリティの民族は無くなっているというクリントン演説に拍手喝采を送った学生たちに対して曰く「珍しい国もあるものだ。国家の多数派として多数の先祖が残してくれた遺産をこの先没収されると聞いて、大喜びをする国があるとは」

「かけがえのない母国のアイデンティティを守ろうとする指導者は、人種差別主義者か外国人嫌いのレッテルを貼られる」

挙句が、黒人（あるいは性倒錯者）が白人（ないしはノンケ）に対して犯した殺人・性犯罪はニュースにすらならないが、白人による黒人に対する事件は大きく取り上げられ、白人の「原罪」として強く非難されるのだという。

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2012/03/21

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旧マルキストにとって敵は資本主義。新生マルキストにとって敵は西洋文化。旧マルキストにとって権力掌握の手段は暴力による政権転覆――十七八九年のパリや、十九一七年のペトログラードのように。新生マルキストにとって権力掌握に暴力は不要、ただし長期に渡る忍耐強い作業が必要。勝利の大前提は西洋人がキリスト教精神を捨て去ること。それは文化教育制度が改革派の手中に握られてはじめて実現する。まずは文化を支配せよ、さすれば国家は労せずして崩壊する。114
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ヨーロッパでもキリスト教は滅びつつある。閑散とした教会を尻目にモスクは人で溢れんばかりだ。ムスリム人口はフランスで五百万、ＥＵ全体では一千ニ百万から一千五百万。ドイツにあるモスクの数は千五百。イスラム教はユダヤ教に代わり、欧州第二の宗教の座に就いた。キリスト教時代は去り、イスラム時代が始まったのだ。二〇〇〇年、世界のムスリム人口は初めてカトリック人口を上回った。（…）彼らは先進国がとうの昔に失ったものを持っている――子供を欲する気持ち、自分たちの文化文明、家族、信仰を維持しようとする意志を。163
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元イスラエル首相ゴウルダ・メイアは、イスラエルにとってリチャード・ニクソン以上の友はいないと言った。祖国を第四次中東戦争から救ってくれたのは彼だと。（…）六日間戦争以来の友人ラビンとの電話を終えた彼に、私の妻シェリーがイスラエルの今後の見通しはどうかと尋ねた。「長期的にかい？」ニクソンはそう言って親指を立てた右手の拳を突き出すと、グラディエーターに判決を下すローマ皇帝よろしく、くるりと親指を下に向けた。私は西洋の見通しは訊かずにおいた。168
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2004/11/18

　愛国心の剥奪を齎すリベラル思想は、不寛容である。そして、その精神が民主主義という言葉の意味を曲解する。　
　本書は、西洋諸国の出生率が低下した要因をこのようなリベラル思想だと断罪する。このままだと、今私たちが享受している奔放さのつけを３０年後、４０年後払うことになる。その代償はもしかしたら物凄く大きいのかもしれない。