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ひどい感じ 父・井上光晴
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2002/08/08 |
JAN | 9784062114233 |
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ひどい感じ
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商品レビュー
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5件のお客様レビュー
井上荒野さん著『あちらにいる鬼』を読んだら井上光晴という人間についてもっと知りたくなって、図書館で借りた。夫としても父親としてもかなり破天荒だった光晴氏。それでもあそこまで女性を(あるいは男性も)魅了するものはなんなんだろう。けっこうひどいことを繰り返して、しかもそのほとんどが...
井上荒野さん著『あちらにいる鬼』を読んだら井上光晴という人間についてもっと知りたくなって、図書館で借りた。夫としても父親としてもかなり破天荒だった光晴氏。それでもあそこまで女性を(あるいは男性も)魅了するものはなんなんだろう。けっこうひどいことを繰り返して、しかもそのほとんどが相手にも筒抜け状態なのに、憎まれるどころか受け入れられ、逆により強い魅力となってて周囲の人々を惹きつける。そこに何があるのだろう。 いろいろなエピソードが収録されているけれど、以下の箇所がとても印象的。 ーーー あるべき父親像を、父は持っていなかったのだろう。雪雄というはちゃめちゃな男を父親にして、まともな父親の雛形を持たなかった、というよりは、「まともな父親」というものへのスタンスが、何か非常に屈折したものであったのだと思う。 家庭が安定していなかったのではなく、家庭に、父が安定していなかった。(P.104) そもそも青春時代とは、保守中庸の道を歩ませようとする親への反抗を原動力として突っ走るものであるはずなのに――私は突っ走った父に先回りされ続けて沈滞していた。それでいわゆる反抗期に私が考えていたことは「私はぜったい普通のOLになって、普通のサラリーマンと結婚して、玉姫殿とかで結婚式をあげて、花束贈呈してやる⋯⋯」というものだった。(P.120) ーーー 自分の父親についてここまで冷静に分析できるのはすごいなあ、とずっと感じながら読んでいた。一緒に暮らしていた日々の中で、納得いかないこととか、衝突したこととかもあったはずなのに、少なくともこの本においては親子ならではの生々しさが排除されて、すごく客観的に冷静に光晴氏について述懐している。個人の感情を傍に置き、少し距離を取って、光晴氏を理解しようと努めているような印象を受けた。 上の引用部分を読んだとき、なんだか自分の学生時代を思い出した。わたしも同じようなことを考えて生きていたなあと。誰かが「普通」と言ったとき「普通ってなんですか」とすかさず食ってかかる幼稚さと青臭さには、とうに別れを告げたつもりなので敢えて使うけれど。いろいろな要因から普通とは少し違う形になった家庭に生まれた人間が、テレビなんかで見た普通の家庭(お父さんがいて、お母さんがいて、子どもがいて、家があって、車があって、夕飯は毎日決まった時間に家族揃って食べて、週末は外食して、みたいなやつ)に憧れて、将来は自分もこんな普通の家庭を持つのだという理想を掲げることは、わりあいよくあることなのだなあと。その理想を叶えることは予想以上に難しい。なぜならそんな完璧な家庭は存在しないから。でも一度憧れちゃった理想像はなかなか消えない。もしかしたらと思いながら追い求める。家事に、育児に、人付き合いに、できるはずと思っていたことが全然できなくて、自分に失望したり、八つ当たりしたり、いたたまれない気持ちになったり。それでも、理想を持った過去を思い出しながら家族を続けていった末に、自分が生まれ育った家庭に対して感じていた普通じゃなさが少しでも薄まったような気がしたなら、きっともう大成功。わたしは今そんな心境でいるけれど、光晴さんや荒野さんはどうだったかなあ。 井上荒野さんの作品はそんなにたくさん読んでこなかったけれど、ここにきてとても興味を持った。ドライで淡々とした文体がかっこいい。他の作品も読んでみたい。
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娘が父について語る。そこのところが面白いわけで、まあ、突き放している分と、それはそれで甘えている分と。 ブログで書きました。読んでみてください。 https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201909050000/
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
井上荒野さんの本は何冊かこれまでも読みましたが、今のところ、これが一番好きです。改めて荒野さんの本も読みたいと思いましたし、お父さんの光晴さんの本も読んだことがないのでぜひ読みたいと。最後の二つのエピソードは泣けました。ところで「荒野」って本名だったんですね。
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