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風景と人間
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 藤原書店 |
発売年月日 | 2002/06/30 |
JAN | 9784894342897 |
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風景と人間
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商品レビュー
4.7
3件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
何事にも中途半端で、あれこれと手を出しかけるのだが、これだけはというものがない。それだけに、何とか一筋という人の話を読むと、羨ましいと思う半面、たいへんだろうなあ、といういらぬ心配をしたりもする。 著者の勝見氏は、東京は代々木上原で「自在屋」という骨董商を営む本物の骨董商である。商売なのだから、商う品物は売り物、買い物。それにいちいち愛着を感じていたりしては、骨董商は勤まらない。とはいうものの、もともとが趣味が高じてこの仕事に入った人たちである。自分が惚れ込むほどの物でなければ、大枚をはたいて購う気にもならないだろうし、逆にそれだけ惚れ込んだ物を人に譲るのは、筆舌に尽くしがたいものがあろうというものだ。欲しいから金を貯めては買う。ところが、そうして自分の手許に集めたコレクションも、さらにもっと欲しいものが現れると、それを買い求めるために売らなければならない、このジレンマ。 「骨董屋は非売品を持つな」というのがこの世界の掟らしい。ところが著者はそれに異を唱える。氏にとって、「取り扱う品物は、すべからく自分の分身なのである」。その勝見氏が、骨董に興味を持ち始めた若い頃から現在に至るまで、常に身辺に置いた偏愛の小物たちを紹介しつつ、氏独特の骨董美学に蘊蓄を傾けた、いわば好事家向けの一冊。そう言うと、興味のない人にはつまらない本のように思われるかもしれないが、さにあらず。一つ一つの品にまつわる思い出話や、この世界ならではの逸話に事欠かない先輩の骨董商たちのエピソード、と読んでいて興味が尽きない。 若い氏がまず心惹かれたのは、日本では歴史の浅い西洋骨董であった。「初級編」は、骨董商というイメージからはほど遠い、洒落者の奇人たちの織りなす非日常が哀歓こもごも描かれている。「メンズクラブ」や「GORO」、くろす・としゆきの『トラッド歳時記』などという雑誌や本を共有する世代には懐かしい時代の空気のようなものが流れている。古いアルバムをめくるときのひんやりとした部屋の空気が甦り、鼻の奥につうんと来るものがある。 季節の移り変わりに絡めて酒器や茶道具という身辺に置く道具類について触れた随筆風の文章を集めた「中級編」は、すでにひとかどの骨董商としての風格を見せ、独自の美学らしきものを漂わせている。仏教美術や大和絵という古美術の世界に入っていく「上級編」になると、長年馴染んだ友人が偉くなっていくのを傍らで見るような寂しさを感じたりもするが、紹介されているのが、英国の教会のタイルだとか初期伊万里の陶片だとか、あまり威圧感を覚えるような物でないのが救いである。 しかし、それでも高価であるのはまちがいない。コレクションの一つとして本物の円空仏などを見せられると、机の上に複製品を飾って喜んでいる身分としては、少々辛い物がある。一途に何かを追い求めた人の姿というものは、そうでない凡庸な者には、唯々、目の毒、気の毒なものなのである。そうかといって、かねてより気になっていた意中の五輪塔を手に入れた氏が、「家に着くなり、たまたま家内が留守ということもあって、五輪塔ともども、すっ裸になって風呂場に入」り、溶け出した泥で泥沼のような湯船に使っている様子を読んだりすると、伊達や酔狂で入れる世界ではないのだと、かえってあきらめがついたりもする。季節の酒と杯の合わせ方など、酒好きには参考になろう。大屋孝雄氏の写真ともども、傍に置いて時折眺めるに相応しい美しい本に仕上がっている。
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歴史と言えば、織田信長や、ナポレオンのような歴史上の人物の活躍にスポットを当てるイメージが強い。そのなかで、今回紹介する本は、風景と言う切り口から歴史を紡ぎ出す。きっと調べるのがかなり大変だったと思われる。 印象に残るのは、風景とは諸解釈の錯綜である(p.11)、海に行ったのに、海は見えなかった(p.21)と、フランスの国土には山が多いと信じられていた(p.69)という言う記述である。 18,19世紀の海を描いている絵は、荒れ狂うすがtらを描いていて、穏やかな状態を描いていなかったので、穏やかな海の姿を見た人は何だこれと思ったのだろう。
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著者はフランスの歴史学者だが,彼の本はとにかく厚く高い。私が読んだところでは,『浜辺の誕生』752ページ8800円,『音の風景』460ページ7200円,『人喰いの村』261ページ2800円(これは比較的薄くて安い),『においの歴史』390ページ5000円。そして,まだ読んでいない...
著者はフランスの歴史学者だが,彼の本はとにかく厚く高い。私が読んだところでは,『浜辺の誕生』752ページ8800円,『音の風景』460ページ7200円,『人喰いの村』261ページ2800円(これは比較的薄くて安い),『においの歴史』390ページ5000円。そして,まだ読んでいないが手元にあるのが『娼婦』626ページ7800円。もちろん,こんなのは定価で買えないので,古書店で見つけては,値段が安いとき,そして持ち帰るのに支障がない時にしか買えない。しかし,彼の歴史書はどのテーマでもどこを読んでも面白いので,刺激的な読書体験をしたい時にはもってこい。しかも,彼の歴史研究はそのほとんどが地理学者にも関心のある内容を含んでいるので,ただの興味関心で読むのではない。 しかも,最近は風景に関して真面目に考えるようになったので,先日古書店で本書を見かけた時には迷わず購入した。実はこの本,きちんとした研究書ではなく,ラジオ番組として放送されたジャーナリストによるインタビューの収録である。私は昔はこういうのは好きではなかった。学者同士での対談でも,やはりその場の雰囲気というか,話の流れで偶然的要素が大きい状態で発せられる言葉に学的根拠を求めるのはどうかと思っていたからだ。そもそも,日本では対談やインタビューなどを受ける学者というのは真面目な研究をしなくなった人だったり,あるいは単発でのインタビュー記事などはあまりにも大衆に迎合する形で研究内容を希薄化しているように思えたからだ。しかし,フランスではそうではない。有名なデリダの『ポジシオン』とか,ラカンの『テレビジオン』などは立派な研究書と位置づけることができると思うし,そういうものに少し抵抗がなくなったのはデリダの日本公演の原稿を読んでからかもしれない。 まあ,ともかく風景に関しては『浜辺の誕生』でも『音の風景』でも,そして私は持っていないが『レジャーの誕生』でも考察を深めているコルバンだから,本書を彼の風景論の概説として読むこともできるし,それぞれの歴史書は特定の事例の特定の時代に限定されたものなので,もう少し一般的な内容も含まれると期待される。訳書には詳しく書かれていないが,5章からなる本書は5回分の放送なのだろうか。 第1章 いかにして空間は風景になるか 第2章 さまざまな影響にさらされる風景 第3章 空間をめぐる行動様式 第4章 風景と大気現象 第5章 人間と風景の保存 歴史家であるコルバンは自らの研究ではおそらく第5章のような現在に直接つながるテーマは扱わないだろうから,この辺は一般のラジオ・リスナーを考慮した内容だと思うが,この辺りはインタビューでしか聞き得ない内容という意味で興味深い。 本書には42の注があるが,本文ではそれ以上の研究者の名前が登場し,自らが手がけた風景にまつわる研究以上に,魅力的な他の歴史家の仕事を援用して論を進めているというのが特徴である。しかし,訳者が自らの著書で風景について論じたことから,コルバンの風景論を是非訳したかったと書いている割には風景研究の基本文献として日本語があるいくつかの本の日本語訳情報が記載されていなかったのはちょっと残念。注7はジョナサン・クレーリーの『観察者の系譜』,注13はサイモン・シャーマの『風景と記憶』,注23はバーバラ・スタフォードの『実体への旅』といったところ。訳者あとがきで地理学者イーフー・トゥアンの『感覚の世界』が紹介されているが,地理学者ではなく文化人類学者となっていたりするのは残念。 しかし,コルバン自体は,ヴィダル・ド=ラ=ブラーシュやエリゼ・ルクリュといったフランス人地理学者はもちろんのこと,私の知らない地理学者の名前を挙げていたり,ともかく地理学に対する知識は半端ではない。まあ,もちろんそれは歴史的な地理学者であり,コスグローヴなどの風景研究をする地理学者には言及がないが。 結局,内容についてはほとんど説明しなかったが,本書は非常に読みやすいので,詳しい説明はいらないでしょう。かといって,風景に関して知っていることだけだったかというとそうではなかったし,やはり読んでよかったと思える本でした。
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