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特急こだま東海道線を走る
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商品詳細
内容紹介 | 内容:夏休み. 高柳さん. みずうみのほとり. 永遠の処女. 特急こだま東海道線を走る |
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販売会社/発売会社 | 文藝春秋/ |
発売年月日 | 2001/10/30 |
JAN | 9784163204901 |
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特急こだま東海道線を走る
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商品レビュー
3.2
8件のお客様レビュー
写真記憶の持ち主である作者の記憶力に舌をまくのはせんないことかもしれないが、その記憶を抜きにしては本作は成立しないし、語ることもできない。全ての短編を通じて作者とおぼしき少女(今は中年の女性)が主人公であり、彼女の克明すぎる記憶の風景を手掛かりにして、幼少の頃には意味の全容がつか...
写真記憶の持ち主である作者の記憶力に舌をまくのはせんないことかもしれないが、その記憶を抜きにしては本作は成立しないし、語ることもできない。全ての短編を通じて作者とおぼしき少女(今は中年の女性)が主人公であり、彼女の克明すぎる記憶の風景を手掛かりにして、幼少の頃には意味の全容がつかめなかった訳有りげな事件や人物の姿が明らかにされていく。その語り口はミステリ小説のようでもあり、謎の行き先を求めてページを捲る手ももどかしい読書体験となった。人間は過去無しには生きられないし、かといって過去の中にも生きることができない。
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一つ一つのお話は独立しているけれど、主人公像の共通した短編集。いずれの短編でも、主人公の女性は、昭和30年代の関西の地方都市に、共働きの両親のもと、一人っ子として生まれている。ごく幼い頃から両親は不仲で、緊張感のある冷たく重苦しい雰囲気の家庭で孤独な幼少期を過ごしている。中年期に...
一つ一つのお話は独立しているけれど、主人公像の共通した短編集。いずれの短編でも、主人公の女性は、昭和30年代の関西の地方都市に、共働きの両親のもと、一人っ子として生まれている。ごく幼い頃から両親は不仲で、緊張感のある冷たく重苦しい雰囲気の家庭で孤独な幼少期を過ごしている。中年期に入った主人公が、飲み込まれるするように思い出す、幼少時代の些細な記憶の欠片たち。 正直に言って、読んでいて愉快な小説では全くなかった。けれど、恐らく、作者があとがきで書いているように、作者がこれからも生きていくために、どうしても書く必要があった短編集なんだろうと思う。作者の内部の闇を覗きこんでいるような、作者と一つの記憶を共有しているような感覚があった。暗くて冷たい記憶に閉じ込められて、もがいているけれど、まだ光が見えないような…記憶の波に足を濡らされて、時間軸さえあやふやになっているような…そんな主人公たちの姿が、ひどくあやうく、儚く感じた。
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