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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2001/05/28 |
JAN | 9784163200606 |
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商品レビュー
3.4
12件のお客様レビュー
これは男の女の小説。タイトルの美しさに惹かれて購入。あまり小説を読まない身としては久しぶりの長編小説で読了まで4ヶ月ほどを要した。小説や物語に対する喜怒哀楽の受容体が自分には豊富に備わっていないことから、小説よりもビジネス書や実用書を読む人間として書く感想文だとご理解いただきたい...
これは男の女の小説。タイトルの美しさに惹かれて購入。あまり小説を読まない身としては久しぶりの長編小説で読了まで4ヶ月ほどを要した。小説や物語に対する喜怒哀楽の受容体が自分には豊富に備わっていないことから、小説よりもビジネス書や実用書を読む人間として書く感想文だとご理解いただきたい。出だしはゆっくりとした流れで、大きな展開もなく、ストーリーに激情を求めている私としてはつまらなさを感じた。約400ページの分厚さが読み進める気持ちを萎えさせたが、おそらく1/3ほど読んだところから話は少しずつ色濃くなっていき、ただの恋愛小説ではない様相を呈してきた。主要な登場人物に10代や20代はいない。50代そこいらの大人の男の女の話。過去を振り返って若い頃を語る描写も少ない上に、そこは重要ではない。ただ若い頃にあった出来事が重要なだけで、若者の淡く激しい恋模様を描く小説ではなく、大人の落ち着いたというわけではないが、しっぽりとしながらも激しくもある男女の物語。田舎の狭い人間関係性が絡まった恋愛を表現し、生まれながらの性分の合致した者通しが愛の領分を分け合える。それは恋でも愛でもなく、男と女という意味において。恋が美しい誤解の産物だとしたら、愛の領分を分け合う事と恋や愛は違う。ならば後々に発覚する違和感があっても無心で猪突猛進な激情を打ち合う関係性が恋愛であるとすれば、愛の領分を分け合う関係性は会うべくしてあった男と女の静かな邂逅に近い。さすがに男と女の関係性なので、激情は伴うとして。
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大人の恋愛。男と女。五十代でもこんな恋愛ができるのはすごい。恋愛物は苦手だなーと思いつつ、こんな世界もあるのかと新鮮だった。
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「直木賞受賞エッセイ集成」に収録されていた藤田宜永氏のエッセイがすごく好きな感じだったので、受賞作を読んでみることにした。熟年男女四人が織り成す友情と恋愛模様を描いた作品。とてもよかった。暇さえあればページを繰りたいとソワソワした。 藤田氏は、台詞の裏に潜んだ感情の動きを丁...
「直木賞受賞エッセイ集成」に収録されていた藤田宜永氏のエッセイがすごく好きな感じだったので、受賞作を読んでみることにした。熟年男女四人が織り成す友情と恋愛模様を描いた作品。とてもよかった。暇さえあればページを繰りたいとソワソワした。 藤田氏は、台詞の裏に潜んだ感情の動きを丁寧に言葉にするのが上手な人だなあと思った。言葉で隠された感情は相手には伝わっていないんだろうなあ、いやもしかたら伝わっているのかも?とかいろいろな可能性を考えながら読むと、一層作品の深みが増す。 --- 「諦めから始まった人生だった、ってわけですか」惇蔵はわざと軽い調子で言った。(p.230) --- 相手には「わざと」であることは伝わらない。軽い調子で言ったその言葉だけが届く。でももしかしたら「わざと」であることも伝わっているかもしれない。それを感じ取った上で、伝わっていないふりをしているのかも。どっちなんだろう?会話している二人の感情の可能性が広がれば、その場の空気感もガラッと変わる。和やかな会話のように見えて実は互いに腹の中はグツグツしていたり、饒舌なときこそ実は本音を隠そうと一生懸命に自分を抑え込もうとしていたり。台詞の裏の裏まで事細かに教えてもらえる読者には全てが手に取るようにわかるけれど、本人たちは当然相手の本心がわかるはずもなく悶々としている。そんな彼らの姿を、もどかしいような、ほのかに優越感を感じるような気持ちで読んだ。 タイトルにもなっている「愛の領分」はいったいどんな意味なんだろうと思っていたけれど、終盤の惇蔵と昌平の会話で、すっと自分の中に入ってきた。 --- 「私なんか敵じゃないと思ったんですね」 「失礼だけど、その通りだ。美保子とお前は、何て言ったらいいのかな……」 「生きてる世界が違う」 昌平はうなずいた。「一言で言えばそうなるが、職業や収入のことを言ってるんじゃない。どんなに立派なものでも、着物に合わない帯がある。帯に合わない着物がある。お前と美保子は、ちぐはぐな帯と着物だった。そんなふたりを結びつかせてしまったのは、俺だけど、やっぱり、愛にも領分があるって思うんだ」 惇蔵は不愉快な気持ちに襲われた。美保子をめぐる争いでは、昌平が勝者である。勝者に、負けた理由を解説されているような気分がした。 だが、昌平の言っていることは正しい。自分と美保子には、一緒にやっていけるという確かな手応えはまったくなかった。惇蔵の先走った情熱だけが、ふたりの愛の形を決めていたにすぎない。これまでの一生で、唯一、若さを感じる恋だった。(p.363-4) --- 共感しかない。でもこれ、大人になった今だからこそすんなりと受け入れられるけれど、もっと若い頃だったら、そんなの関係ねぇ〜とムキになっていたと思う。仮に領分なんてものがあったとしても、そんなもん気合いと根性で超えて行ったるわ!と。でも、私の中でそんな時期はいつしか終わってしまったのでした。「愛の領分」というようなものは確かにあって、若さとか感情的な勢いとかを総動員して必死で逆らったところで、最終的にはうまくいかなくなる。無情だけど、結局そういうもんなんよね。 最後に、印象に残った「あとがきに代えて」の一部を抜粋する。藤田氏の他の作品も是非読んでみたい。 --- 静思果敢。 或る年上の友人が、寒中見舞の葉書にしたためてきた言葉である。おそらく、彼の造語であろう。 沈思黙考してばかりでは何も始まらない。だが果敢に攻めればいい、というわけでもない。深みのある言葉に、僕は少なからず胸を打たれた。(p.394) ---
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