平野啓一郎 新世紀文学の旗手 別冊トップランナー

NHK「トップランナー」制作班(編者), KTC中央出版(編者)

• 販売会社／発売会社: KTC中央出版/
• 発売年月日: 2000/09/30
• JAN: 9784877581954

商品レビュー

2013/07/21

作家、平野啓一郎氏がNHKの人気番組『トップランナー』に出演したときの様子を書籍したものです。鮮烈なデビューを飾った当時の平野氏の姿が『保存』されていて、当時の世相を思うと貴重な記録です。

作家、平野啓一郎氏がNHKの番組である『トップランナー』出演したときの様子と、洋画家の小堀四郎氏による絵画を左に平野氏の印象的な言葉が綴られていて、最後には「これから」の豊富を綴ったインタビューも収録されており、現在に至る平野氏の輝かしい未来が約束されているかのような、そんなものを読んだ後に感じました。

僕はこれがテレビ放送されていたときのものを見たのかどうかがとても記憶があいまいで、こうして活字にされたものを読んで、
「あぁ、平野氏が文壇にデビューしたときはこういう感じだったなぁ」
と、そんなことを思い出しました。ここでの平野氏は「ロマンティック三部作」と後に称される『日蝕』『一月物語』を上梓し、大作であるショパンとドラクロワの友情を軸に描いた『葬送』の準備をしていた頃であると推察されます。

とうじ、平野氏が芥川賞を受賞したときに『日蝕』の舞台および衒学的な文体がものすごい毀誉褒貶を巻き起こしたとともに、『茶髪にピアス』という受賞時のいでたちが話題になっていたときのことも、番組の様子を読みながら思い返しておりました。ここには平野氏の生い立ちや文学に親しみ始めた頃。京都大学に在学中のころから創作を始め、『新潮』に手紙を出したエピソードが語られ、『三島由紀夫の再来』と評された当時の平野氏の姿が記録されておりました。

巻末のインタビューでは京都に住んでいるのですが、後に東京に拠点を変え、インターネットに対する姿勢も、現在とは変わっているように思えますが、当時の平野氏はこのように考えていたんだな、ということで、貴重な記録であるなとそんなことを思いながら読み終えました。