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白き嶺の男 集英社文庫
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白き嶺の男 集英社文庫

谷甲州(著者)

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商品詳細

内容紹介 内容:白き嶺の男. 沢の音. ラッセル. アタック. 頂稜. 七ツ針-山岳ホラ-
販売会社/発売会社 集英社/
発売年月日 1998/11/19
JAN 9784087488760

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商品レビュー

4.3

7件のお客様レビュー

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2010/05/28

登山をテーマにした短…

登山をテーマにした短編集。作者自身、山を愛する登山経験者だけにかなりリアルな山岳小説です。6編のうち5編が同一人物が登場する物語で、派手さはないものの余韻の残る魅力的な物語ばかりでした。最後の「七つ針」という短編は山岳ホラーというサブタイトルからもわかるようにちょっと恐いお話です...

登山をテーマにした短編集。作者自身、山を愛する登山経験者だけにかなりリアルな山岳小説です。6編のうち5編が同一人物が登場する物語で、派手さはないものの余韻の残る魅力的な物語ばかりでした。最後の「七つ針」という短編は山岳ホラーというサブタイトルからもわかるようにちょっと恐いお話ですがこれもまた傑作だと思います!

文庫OFF

2025/01/30

20代後半の若き登山家、加藤武郎とそのパートナー久住浩志2人の登攀を綴った連作短編集。 表題作の「白き嶺の男」は独学で単独登攀を行っていた加藤武郎がある登山会に所属した際に行われたテスト登攀での出来事を綴った話。 続く「沢の音」は加藤とコンビを組む久住と加藤の邂逅の物語。 ...

20代後半の若き登山家、加藤武郎とそのパートナー久住浩志2人の登攀を綴った連作短編集。 表題作の「白き嶺の男」は独学で単独登攀を行っていた加藤武郎がある登山会に所属した際に行われたテスト登攀での出来事を綴った話。 続く「沢の音」は加藤とコンビを組む久住と加藤の邂逅の物語。 そして「ラッセル」は「沢の音」で知り合った加藤と久住が北穂高岳の滝谷の岩盤登攀を2人で行う様子を描いた物。 「アタック」は「ラッセル」で述べられたヒマラヤ登攀についての話。 「頂稜(スカイライン)」は再び久住と加藤のヒマラヤ登攀の物語。 最後の1編は「七ツ針」という加藤・久住物ではない山岳ホラー短編。 本短編集では加藤武郎と久住浩志という2人の男たちの関係について訥々と語られていく。当初、所属していた登山会を加藤が辞め、久住の会に入ったことなどが、徐々に語られ、やがてその内容は2人のヒマラヤ登攀にまで至る。 本作の中で面白かったのはやはり雪山登山について語られた作品の中、唯一渓谷のルートを調べる渓谷登攀を語った「沢の音」だ。我々が地図の上で知る山の渓流の道筋などはこういった渓谷登攀を趣味とする、または生業とする人たちによって徐々に詳らかにされていくのかと知的好奇心を刺激させられた。 この短編集には登山の困難さが経験した者でしか解らない迫真のスリルとリアリティで語られるところにある。 それぞれの1編は40~50ページぐらいの長さながら、そこに書かれる登山の息苦しさは正に登山が死と隣り合わせのスポーツである事を濃厚に物語る。 しかも、語られるのはそれだけではない。 山が、自然が気候の影響により、どのように変わりゆくのかを理路整然と叙述していることも見逃してはならないだろう。 本編の主人公である加藤武郎と久住浩志はそれぞれ次のように性格づけされている。 小さい頃から樵であった祖父の手伝いをするうちに独学で山を登る事を学んだ加藤は自然の声を聞く男であり、また怖さを知る男。そして高所では無類の粘り強さを発揮する男である。 片や久住は、渓谷登攀を趣味にしつつ、1人で未開の地を発見する事に喜びを見出す排他的な男だが、同じ匂いのする加藤には絶大の信頼を置いている。クライミング技術は加藤も凌ぐ男である。 この2人が色んな登山を重ねるのだが、正直ページ数が限られた短編であるからか、ちょっと消化不良の感が否めなかった。物語を掘り下げていきながら、ページ数の都合により、はいここまで!といった感じが各編に漂っているのだ。 最後に添えられた別物の「七ツ針」ぐらいだろう、きちんと終えているのは。だから、この2人の登山家の魅力を存分に味わうというほどではない。 『遥かなり神々の座』では主人公のクライマー滝沢育夫の登山生活のみならず、私生活まで踏み込んで語ったので厚みが出たが、本作では絵に描いた人物を語っているだけに留まった感じがする。題材として非常に面白かっただけに勿体無い気がした。 願わくばこの2人を主人公にした長編を読みたいものだ。手元にその作品があることを切に願う。

Posted by ブクログ

2017/11/27

「加藤文太郎さんを書いた本」とか「加藤文太郎をモデルにした」と書いている人がいますが、違いますよ。 それは、作者の別の本「単独行者」です。 「もう一人の加藤の物語」であって、加藤文太郎とは性格もやっていることも違います。 加藤武郎を主人公とした5つの物語と山岳ホラー「七ツ針」の...

「加藤文太郎さんを書いた本」とか「加藤文太郎をモデルにした」と書いている人がいますが、違いますよ。 それは、作者の別の本「単独行者」です。 「もう一人の加藤の物語」であって、加藤文太郎とは性格もやっていることも違います。 加藤武郎を主人公とした5つの物語と山岳ホラー「七ツ針」の6編の短編集。 我流で単独登山を続けていた加藤が、単独登山に限界を感じて、山岳会に入会。先輩に対して横柄な態度を取るようでいながらも、気遣っているようでもあり、掴みどころがなく、それでいて憎めない「新人類」。登攀技術はそれ程でもないが、体力は抜群で粘り強く、窮地にあっても飄々としている。 登山経験の豊富な作者ならではの山の情景描写や状況描写がすばらしい。 「白き嶺の男」 加藤が山岳会に入会してすぐの新人訓練山行での八ヶ岳雪山縦走の様子が、指導する田嶋の視点で描かれている。加藤の言動に苛立つ田嶋。二人パーティーで不仲になるという最悪の状況。田嶋にアクシデントが起こるが、その時、加藤が取った行動が面白い。 「沢の音」 これ以降に山行を伴にする加藤と久住浩志の出会いを描いた話。南アルプス西面の沢を研究フィールドとしている久住。目的の沢に入ると、誰もいないと思っていたのに人の姿を目撃する。それが加藤。同じ場所に幕営する羽目に。翌日、窮地に陥るが、加藤の用心深さに救われる。自然現象の説明が面白い。 「ラッセル」 山岳会の合宿で行われたヒマラヤのタクティクスによる厳冬期滝谷完全遡行。部員の西城の「あのような登り方で滝谷のグレードを落としてはいけない」との発言。その後、滝谷に向かった西城の死。久住と加藤は、二人だけで支援に頼らずに再挑戦する。ラッセルに苦しみ、雪崩に巻き込まれ、悪天候で待機を余儀なくされる。停滞中に書いた天気図から西城の意図を知る。天気が回復すると、加藤は久住に思わぬ提案をする。 「アタック」 東部ネパール7300m峰での遠征登山での出来事。遠征隊に参加しながらも、自分の求めている登山との違いを感じ、登頂へのこだわりを失う加藤の心情が描かれている。 「頂稜」 美しいスカイラインを持つ7800m無名峰での出来事。一次アタックに失敗し、ABCに戻った久住・加藤のもとに、別ルートで本峰の登頂を狙うアメリカ隊のスヴィエクという隊員が訪問し、ルートの情報提供を求められ、真意をはかりかねる二人。二人が再アタックの途中にもたらされたスヴィエクに関する情報。二人が登頂後に見たものは何であったか。 加藤の語る「何も残置したくない」という意味が奥深い。 「七ツ針」 厳冬期の七ツ針(架空の山と推定される)を縦走中に遭難し、雪洞の中で書かれた記録形式の文章。幻覚なのか、夜になると別の存在が現れて話しかけ、「忘れ物」をしていることを告げる。一緒に縦走し、別れた加瀬との関係が綴られていく。最後に思いがけない事実が判明する。

Posted by ブクログ