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森の世界爺 樹へのまなざし
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森の世界爺 樹へのまなざし

多田智満子(著者)

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森の世界爺 樹へのまなざし

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 人文書院
発売年月日 1997/07/20
JAN 9784409160787

森の世界爺

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2019/07/12

===qte=== 半歩遅れの読書術坂井修一 一本の木として生きたい 自分を愚者として静観する 2019/6/29付日本経済新聞 朝刊  「なぜ自分は人間に生まれたのだろう。大きな森の一本の木に生まれればよかったのに」  中学2年生のとき、とつぜんそんなことを思った。  き...

===qte=== 半歩遅れの読書術坂井修一 一本の木として生きたい 自分を愚者として静観する 2019/6/29付日本経済新聞 朝刊  「なぜ自分は人間に生まれたのだろう。大きな森の一本の木に生まれればよかったのに」  中学2年生のとき、とつぜんそんなことを思った。  きっかけは、失恋だったか。試験に失敗したのか。親友に裏切られたからか。今となってはよく覚えていない。とにかく、「木」として生きることを夢想し、それが果たせない現実を怨んだのだった。 これは思春期の一過性の思い。すぐに忘れてしまうだろう。しばらくしてからそんなふうに考えて封じ込めた――つもりだったが、何かあるたびにこの思いは噴出してきた。高校の漢文の時間に老荘を学んだとき。コンピューターの論文を書き終えて仕事が一段落したとき。年とって、はてしない世俗の争いに疲れたとき。  最近、『森の世界爺(せかいや)』(多田智満子著、人文書院)という本を読んだ。さまざまな植物と人間との関わりについて、時空を超えて物思いを深め、独特のタッチで記したエッセイ集だ。  この本の最後に、アメリカのジャイアント・セコイアについての記述がある。  著者が見たものは、樹高90メートル、一本で4万ガロン(約15万リットル)の水を蓄えるという。  さらにすごいことも書かれている。これだけの木になると、山火事でも燃えることがない。そればかりか、山火事を利用して種子(松かさ)を落とし、繁殖するという。  この木は、私の身長の50倍以上の高さにまで水を吸い上げる。そして分厚い樹皮によって火事から身を守る。そればかりか、災厄を逆用して子孫を残すのだ。  人間はたしかに賢いが、こんな途方もない植物にくらべると、か弱い無能な生命体にすぎない。特に現代人は、言葉と電気を失って森の中にほっぽり出されたら、わずか数日で命尽きることだろう。  「大きな森の一本の木に生まれればよかったのに」  そうなのだ。私は一本の木として生まれるほどの幸運をもっていなかったのだ。  人間は長寿になったといっても、ジャイアント・セコイアの10分の1の時間しか生きられない。セコイアから見れば、ちっぽけな財産や地位・名誉のために苦痛に満ちた騒々しい一生を過ごさなければならない。  ヒトとしての運命は逃れがたいものだとしても、おりふし自分を愚か者として静観する短い時間を持ちたいものだ。欲望と文明の毒にまみれながら、そっと自分を憐(あわ)れみ、息をつく時間を。 (情報科学者) ===unqte===

Posted by ブクログ

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