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ヒース燃ゆ
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ヒース燃ゆ

コルムトビーン(著者), 伊藤範子(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 松籟社/
発売年月日 1995/10/31
JAN 9784879841735

ヒース燃ゆ

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商品レビュー

4.5

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2026/08/20

これまで読んだトビーン作品の主人公はいずれも女性。結婚や出産によって自分の生き方を変えざるを得ない女性に対して、男性は「どっしり動かず」というイメージが強い。  舞台は作者の故郷エニスコーシー。冒頭は最高裁判事アーモン・レドモンドが判決を言い渡すシーン。判事としてベテランの域に...

これまで読んだトビーン作品の主人公はいずれも女性。結婚や出産によって自分の生き方を変えざるを得ない女性に対して、男性は「どっしり動かず」というイメージが強い。  舞台は作者の故郷エニスコーシー。冒頭は最高裁判事アーモン・レドモンドが判決を言い渡すシーン。判事としてベテランの域にある彼は、判決を言い渡す事で原告や被告がどういう動きをするかまで見えている。そして自分の判決=判断が常に間違いないと確信を持っている。ここまでは予想通り「どっしり動かず」。  ところが、プライベートときたら、からっきし見えていない。そして揺れまくり。長年連れ添った妻には「あなたが何を考えているのかわからない。何も話してくれない。」と詰られ逃げてばかりいるし、未婚の母となった娘との仲は。ちょうど未婚の母絡みの裁判で厳しい判決を下したばかりというタイミングで、さらにぎくしゃく。そんな時、皆の潤滑油役だった妻に異変が起きる。  愛情はあるがうまく表現できない頑固親父と、どこか遠巻きに見ているようなその他の家族。何だかどこかで見たような人間関係だ。トビーン作品は本当に日本のホームドラマと親和性がある。父となったアーモンの「現在」と子供時代の「過去」が交互に登場する。その事によって子供の心が分からないアーモンの「現在」と、かつて父とのコミュニケーション不全に悩んだ「過去」が読者の中で響き合い、立場を変えて同じ体験をするにも関わらず、やはり同じ失敗をしてしまう人の業が映し出される。  トビーンの最近作に比べると、主人公の言葉遣いが年齢に対して少し若いようだ。訳者も異なるからだろうか。

Posted by ブクログ

2013/01/19

『歩いていて、スレート屋根の三階建ての家々に気がついた。泥の澱んだ港に続く、狭い道をじっくり眺めていて思った。これは絶対ここにしかない風景だと』 目線の高さを邪魔するものが何一つないような光景が広がる中で、一人佇む時の気持ちを、果たして孤独というのが正しいのか。この本を読んだ後...

『歩いていて、スレート屋根の三階建ての家々に気がついた。泥の澱んだ港に続く、狭い道をじっくり眺めていて思った。これは絶対ここにしかない風景だと』 目線の高さを邪魔するものが何一つないような光景が広がる中で、一人佇む時の気持ちを、果たして孤独というのが正しいのか。この本を読んだ後で、じわじわとそんな疑問に囚われる。そもそも孤独とは何か。人間はしょせん誰しも孤独ではないのか。通い合っていると思っていることには何か確かなものがあるのか。そう突き詰めてしまえば何もかもがあやふやになり、答えを返すことなどできなくなる。 主人公の男は幼い頃に父を亡くしたこと、そもそも母の面影を自分は持たないことをじっと心の内に秘めている。いや、秘めているというようなつもりもなく、また誰しもが知ることではあるけれど、敢えて自分から語ることはない。しかし、ぎゅっと固く撚った糸がじょじょに解れてくるように、その語られたことのない思いは、現在に思い出が投影される度に溢れ出してくる。そして繰り返される喪失。それは避けようがない。季節のように、常に繰り返されること。 物語はいつも開廷期間の最後の日から始まる。語られる物語はその度に異なっているのに、それは繰り返される物語のようにすら聞こえる。周りを通り過ぎる人々は変わっていようとも、景色は同じではなくても、思い出の中で感じたままに気持ちは浮き沈みをくり返し、去る者がある一方で、新しく自分と歩みを伴にする人も現れる。秋になれば葉は色づき、やがて落ちはするけれど、固い芽として冬をやり過ごせば、春には花が咲く。その営みの周期は人にも等しく訪れるのだということが、アイルランドの風景を見遣る視線の先に見えてくる。 不幸をかこい、孤独のままにあろうとする。その瞬間の気持ちに嘘はないとしても、いつまでも自分自身をぎゅっと抱きしめていることなどできない。今のこの場所からどこへ行かず、何も変えず、全てを現状のままに維持しようとしても、季節は巡り自然は否応なしに全てを変化させてゆく。閉ざしていた扉には知らず知らずの内に隙間ができ、中に溜め込んでいたものは外へと流れ出してゆく。それと同じように、いくら自分の中に抱え込んでいようとしても、思いは一つ所に留まることはなく、こちらからあちら側へと伝わってゆく。そのことが、主人公の思い出とともに静かに沁みてくる。 見渡す限りの草原の中で一人立つ時、人は、そこに立つ勇気を与えてくれる者たちの加護自分にはあることを、何にもまして実感するだろう。

Posted by ブクログ

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