地上 地に潜むもの

島田清次郎(著者)

• 販売会社／発売会社: 季節社
• 発売年月日: 1995/09/15
• JAN: 9784873690124

商品レビュー

2016/08/16

むかーし昔に「栄光なき天才達」というマンガがヤンジャンで連載されていて、その時この作家を知ったが、ろくでもない人間だということで敬遠していた本。何年も経ってからようやく手に取った。確か金沢の西茶屋街の芸者の子で、世の中に対する鬱屈がハンパなかったとか。それをそのまま書き殴ったような内容で、私の好みではないが、これはこれでいいでしょう。続編を書くことが前提のストーリーなので、エンディングは少々不満。この本は嫌いだが、「明るいペシミストの唄」はグッときます。
http://old-news.at.webry.info/201405/article_2.html

2015/11/08

この「地に潜むもの」では、主人公の少年時代から青年の手前の頃までが描かれている。
とにかく主人公の個性が強烈。

他人との間に（意識的・無意識ともに）置かれる、独特の距離感や、異性（恋人のほか、母親や周囲の人物も含めて）に対する、時に理解不能と思える感情や、権威や自分より大きな存在に対する徹底的な対抗心などが、随所に出てくる。

一読して主人公のこれらの思いを、一息に理解するのは絶対不可能。でも読者を突き放した作家独りよがりの作品とは絶対に違う。
そもそも、思春期の複雑さ、すなわち自我形成過程で、矛盾・衝突と胎生・成長とが同居するという一見不可思議な状態を仔細に描こうとすれば、こうならざるをえないであろう。作中にも出てくるドストエフスキーの小説と同じ。簡単に理解できる人物を描くのなら、わざわざ小説にする必要すらない。

急激に変化・拡大する自我をもてあましている、すべての少年に読んでほしい作品である。もちろん、主人公のような少年を目指せ、と私は言っているのではない。逆に、主人公を全否定したい感情が生まれるかもしれない。
でも最近の安直で薄っぺら小説にない、熱いモノは確実にあるので。
（2007/1/19）

2012/02/10

二十歳で書いたというのが凄い。
まるでドストエフスキーのような熱さ。
それにしても、これを書くまでの人生に、いったいなにがあったの？と問いたくなる。