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海の牙 日本推理作家協会賞受賞作全集 13 双葉文庫
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海の牙 日本推理作家協会賞受賞作全集 13 双葉文庫

水上勉(著者)

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海の牙 日本推理作家協会賞受賞作全集 13 双葉文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 双葉社/
発売年月日 1995/11/13
JAN 9784575658149

海の牙

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商品レビュー

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2010/05/28

水俣病を題材にした作…

水俣病を題材にした作品。松本清張とも似た社会派推理小説です。

文庫OFF

2021/10/30

水上勉は、松本清張の『点と線』を読んで感激し、推理小説を書こうとする。1959年『霧と影』という作品を発表して小説家としてスタートした。その頃、テレビで水俣病の報道があり、チッソの工場廃液とは認めておらず、49人の死者が出ていた。水上勉は「これは白昼堂々と、大衆の面前で演じられて...

水上勉は、松本清張の『点と線』を読んで感激し、推理小説を書こうとする。1959年『霧と影』という作品を発表して小説家としてスタートした。その頃、テレビで水俣病の報道があり、チッソの工場廃液とは認めておらず、49人の死者が出ていた。水上勉は「これは白昼堂々と、大衆の面前で演じられている、殺人事件ではないか。どこかに犯人がいるはずだ」と思った。 そして、水俣市に赴き、約15日間滞在して、病院で患者に会い、家族に会い、工場や熊本大学医学部などにいき徹底的に取材を行った。水上勉は「水俣奇病」(その頃そう呼ばれていた)が工場の廃液以外はないと結論に達した。それで、発表したのが1959年12月に別冊文藝春秋新年号に『不知火海沿岸』を発表。それを書き直して、1960年4月に『海の牙』を発表した。 熊本大学医学部が、水俣病の原因は有機水銀だと発表したのが、1959年7月、チッソは「工場で使用しているのは無機水銀であり、有機水銀と工場は無関係」と主張。東京工業大学・清浦雷作教授(この学者の犯した罪は大きい)が水銀説を否定して、アミン説をぶちあげた頃の作品となる。 水上勉がすごいのは、水俣病とせずに、病名を「水潟病」としたところだ。物語の舞台は「水潟市」とした。新潟大学が「原因不明の水銀中毒患者が阿賀野川下流沿岸部落に散発」と新潟県庁に報告したのが、1965年5月なので、それを5年前に予測していた。なぜならば、昭和電工が新潟にあったからだ。このことは、先見性がある。 原因は工場廃水中の有機水銀と推定されたが、調査に訪れた東京の保健所の医師結城が行方不明になった。それと面談した診療所の木田医師が、その行方不明の結城を探すという推理小説に仕立てているのだが、技巧的でちょっと陳腐な感じもする。水上勉がそんな時代があったのだと思わせる。 しかし、1959年の水俣市で起こっている「奇病」とその患者の実態が生々しく描かれていて、実に参考になった。フィクションであるが、水俣の実態というファクトの上に成り立たせている。 熊本大学(本書では南九州大学)は、会社は塩化ビニール、硫酸、醋酸、可塑剤を作る。その可塑剤は全国生産量の80%をしめている。製造工程を調べてみて、600トンの水銀が海中に流出していることが判明。「工場が廃水口で流しているのが金属水銀と流されているため、病原とされている有機水銀となる過程がわかっていなかった」と書いている。「工場廃水だということは最初からわかっていたが、県随一の工場であるから県や市当局も遠慮があるようだった」という叙述もある。 ネコやカラスの症状分析はかなり詳しく書かれている。著者は、滝堂、角堂、星の浦、船浦などの患者実際訪問している。そこでの貧しい生活の描写が、水上勉らしい精緻な文の表現となっている。 患者たちの食事は、コノシロ、ボラ、アワビなどを食べていた。滋養に良いと言って、アワビのきもを食べさせることもあった。 国会議員が水俣を訪問した時の漁民の反対運動ののぼり、プラカードに書かれている言葉は、 「代議士さま、毒のある水を流さないようにしてください。代議士さま、恐ろしい病気で死にかけている漁民をお救いください。代議士さま、死んだ海を返してください」 非常にインパクトのある小説だった。水上勉が社会派推理小説家として認められ、のち『飢餓海峡』を世に送り出すことになる。 この作品が出た2年後。1962年に熊本大学の入鹿山且朗教授が「チッソ水俣工場のアセトアルデヒド工程の反応管から採取した水銀スラッジから、塩化メチル水銀を抽出した」と論文で発表。 1968年9月に厚生大臣園田直(熊本県天草出身)は水俣病を公害病であると認定。「熊本における水俣病は、新日本窒素肥料水俣工場のアセトアルデヒド製造工程で副生されたメチル水銀化合物が原因である」とやっと発表。それでも、水俣病患者の認定問題などが現在も続いている。

Posted by ブクログ

2017/03/12

水俣病をテーマにした水上勉氏の社会派ミステリーです。著者自身の丹念な取材の成果が遺憾なく発揮された、臨場感あふれる作品になっています。当時の企業や地方公共団体の姿勢に対する著者の怒りを強く印象づけられるでしょう。

Posted by ブクログ