冷めない紅茶 福武文庫

小川洋子【著】

• 内容紹介: 内容:冷めない紅茶.ダイヴィング・プ-ル
• 販売会社／発売会社: 福武書店/
• 発売年月日: 1993/06/15
• JAN: 9784828832715

商品レビュー

2010/05/28

この不思議な感覚は何…

[文庫ＯＦＦ]

この不思議な感覚は何なのでしょう。わたしはクラゲのような小説だと思います。小川さんワールド全開です。

2010/05/28

初期作品。小川洋子作…

[文庫ＯＦＦ]

初期作品。小川洋子作品に頻出する独特の比喩は、好き嫌いの分かれるところでしょうか。

2024/12/01

短編が二つ入った小川洋子さんの初期の作品です。
全体として静かにひっそりと語られていて、読んでいて心が落ち着きました。

〈冷めない紅茶〉
主人公に関連する人や生き物の死が、非現実の世界を垣間見させ、神聖で透明な空気が流れているように感じました。
現実世界では、同級生のK君と奥さん夫婦と過ごす時の”満ち足りた”時間に対して、恋人に対する”冷めた”感情が対照的に描かれ、K君と奥さんの醸し出す、美しくて幻想的な雰囲気が際立つように思いました。この二人の、実在するんだろうけどしない感じは、まるで天使のように感じられ、生と死の中間にいる人物、という雰囲気を感じました。
紅茶は飲んでいる時の状況によって、透き通った死を感じさせたり、時間が経っても冷めないと感じる時には、時間の感覚が曖昧だったり、そもそも現実のことなのか？という感じがしました。
生と死、現実と非現実などの、対照的な世界の間に広がる微妙な世界が良かったです。

〈ダイヴィング・プール〉
主人公の実家は教会で、孤児院を営んでいます。
周りにいる孤児は里親に引き取られていくけど、自分は両親の下で孤児院と共に育つという設定は、主人公が誰よりも孤児なのだという感じがしました。
彼女にとって飛び込み用プールの観客席で過ごす秘密めいた時間は、一人きりになれる貴重な時間であるのと同時に、心の中で一途に好きな人を想うオアシスのような空間で、現実の生活との折り合いを付けているように感じました。
残酷な行動を取ったりするアンバランスさ、最後の結末のハッとするような展開など、緩急もあって引き込まれました。