冷めない紅茶 の商品レビュー
この不思議な感覚は何…
この不思議な感覚は何なのでしょう。わたしはクラゲのような小説だと思います。小川さんワールド全開です。
文庫OFF
初期作品。小川洋子作…
初期作品。小川洋子作品に頻出する独特の比喩は、好き嫌いの分かれるところでしょうか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
冷めない紅茶 同級生だった生徒のお葬式で、K君と再会。 連絡先を交換して、K君の住む場所へ。 彼女と同棲しているK君。 私はサトウという男と同棲しているが、嫌いになっていて心の中で鬱陶しく感じている。 K君とK君の彼女と3人で過ごす時間は心地よかった。 だけど、ある日、紅茶が全く冷めずいつまでも熱い… 私はK君のところから家へ帰ろうとするがどこにいるのかわからなくなる… グラデーションみたいに、生きてる世界から死んでる世界に行ったり来たり。 最初はそんなこと疑ってなかったのに、だんだん本を探すうちに、おかしいな?もしかして死んでるのかな? 冷めない紅茶。それはおかしい。やっぱり死んでるんだねって。 主人公がちゃんと家に帰れたのか、不安な気持ちになる。 主人公も最後は生きてたのか、死んでいたのか。 この曖昧なところがいい。 ダイヴィング・プール 孤児院で育った彩。 同じ施設で育った純が好き。高飛び込みをしている純をいつも見ている。 ある日、彩は小さな1歳半ぐらいのリエをすっぽり隠れるぐらいのツボに入れて泣かせたり、腐ったシュークリームを食べさせる。なぜ、こんなに残酷な気持ちになるのか。 それを純は知っていて、彩に話す。 彩はもう純は自分のものにならないと悟る。 なぜ、残酷な気持ちになるのか。 彩の中に鬱屈したものが渦巻いてるのかな。 誰かに言葉にして表せるものではなく、うまく伝えられるものではなく、理性をなくし、リエを残酷に虐めて泣かせることで、発散しようとしているみたい。 こういう場合、カウンセリング受けたりすれば何か見えてくるのかな。 原因不明の苛立ち、自分でもよく理解できないものは、自分の中で整理できない。
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表題作は、主人公の無頓着で冷えていてアンバランスな感じ、この状況、このままでいいのにな、と思ってしまう。 飛び込みの話は、怖い。女の子の毒気と少年の綺麗すぎる容赦の無さにゾクゾク。
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【サラサラの砂が靴の中に入って気持ち悪い】 小川洋子さんの作品と向き合う時、どうしても自分の前に鏡を置かれたような気がしてしまう。目は確かに文字を追うのに、気持ちは心をなぞっていく。1度も行ったことのないケーキ屋さん、学校、プールのはずなのに、体験したようにその時の気持ちを『思...
【サラサラの砂が靴の中に入って気持ち悪い】 小川洋子さんの作品と向き合う時、どうしても自分の前に鏡を置かれたような気がしてしまう。目は確かに文字を追うのに、気持ちは心をなぞっていく。1度も行ったことのないケーキ屋さん、学校、プールのはずなのに、体験したようにその時の気持ちを『思い出してしまう』。そんな不思議な感覚に囚われる。 苦しい、懐かしい、そんな気持ちのまま、私は冷めない紅茶を楽しんで、ゴミ箱にシュークリームを捨てている。そして読み終わった時、古い日記帳を覗いたような後味の悪さの中、物語がちゃんと終わったことに安堵していた。
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「冷めない紅茶」小川洋子著、福武文庫、1993.06.15 206p ¥500 C0193 (2018.07.20読了)(2004.01.30購入)(1997.01.20/4刷) 【目次】 冷めない紅茶 ダイヴィング・プール 文庫版あとがき 小川洋子 解説 加藤典洋 ☆関...
「冷めない紅茶」小川洋子著、福武文庫、1993.06.15 206p ¥500 C0193 (2018.07.20読了)(2004.01.30購入)(1997.01.20/4刷) 【目次】 冷めない紅茶 ダイヴィング・プール 文庫版あとがき 小川洋子 解説 加藤典洋 ☆関連図書(既読) 「完璧な病室」小川洋子著、福武文庫、1991.12.16 「シュガータイム」小川洋子著、中央公論社、1991.02.25 「妊娠カレンダー」小川洋子著、文春文庫、1994.02.10 「薬指の標本」小川洋子著、新潮社、1994.10.30 「刺繍する少女」小川洋子著、角川書店、1996.03.25 「アンジェリーナ」小川洋子著、角川文庫、1997.01.25 (「BOOK」データベースより)amazon 中学の同級生の葬式で再会したK君。彼と一緒に過ごした不思議な空間。K君のいれてくれた紅茶は永遠に冷めない―。猥雑な生から透明な死へと傾斜していく現代の危うい感性を捉えた表題作に、「ダイヴィング・プール」を併録した傑作小説集。
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冷めない紅茶:好きな話し。ハートウォーミングではない。静けさが至上の価値なのだ。若い同級生の死、年の差カップル、図書館の火災、喪服の死を悼んできた歴史、お祖父さんの死とアルコール消毒、熱帯魚の死。 ダイヴィング・プール:純の存在が重い。彩の出生の秘密を言葉にすることで、みなが普...
冷めない紅茶:好きな話し。ハートウォーミングではない。静けさが至上の価値なのだ。若い同級生の死、年の差カップル、図書館の火災、喪服の死を悼んできた歴史、お祖父さんの死とアルコール消毒、熱帯魚の死。 ダイヴィング・プール:純の存在が重い。彩の出生の秘密を言葉にすることで、みなが普通でない特殊な生まれであることを、そして、それゆえこその、つながりを露わにしてくれた。
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如何にもデビュー仕立ての作品って感じ。文章が妙に詩的な感じで、痛々しいまでに意図的に短い。初々しいというのはこういうことを言うんでしょうな。 でもこの作家の特徴でもある静謐感は感じられます。
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『冷めない紅茶』 不慮の事故で死んだ中学の同級生の葬式に参列した主人公は、同じく同級生だったK君と再会する。 主人公は不動産営業をしている恋人と同棲中だが、彼について些細な不満が蓄積しており、K君とその妻と過ごす時間が大切なものになっていく。 この短編は死で溢れている。主人公が...
『冷めない紅茶』 不慮の事故で死んだ中学の同級生の葬式に参列した主人公は、同じく同級生だったK君と再会する。 主人公は不動産営業をしている恋人と同棲中だが、彼について些細な不満が蓄積しており、K君とその妻と過ごす時間が大切なものになっていく。 この短編は死で溢れている。主人公が遭遇した人間や熱帯魚の死の描写、恋人への不満、些細な日常の風景が細かく描かれ、物語の筋だけ取り出すと非常に淡白なのだが、小川洋子の小説はほとんどこんな雰囲気だとも思う。 ストーリーの起承転結でなく文章の厚みで読ませるって他の作家はできないだろうな。 とても脆くて危うい物語である。 『ダイヴィング・プール』 孤児院を営む教会の娘に生まれ、両親がいるのに孤児のように育った主人公。 彼女の安らぎは共に育った孤児の純が飛び込みの練習をする様子をプールで眺めること。 主人公は孤児たちの特別に不幸な境遇と自分の平凡さを比較し引け目を感じているが、同時に両親がいる普通の子供なのに孤児のように育てられていることに鬱屈した感情を抱いている。 その持て余した感情が悪意になって表に出てしまうのが物語の筋である。 主人公はとても優しい子供なのだと思う。だから自分の醜い感情に傷ついてしまうところが切ない。 満たされない日々の理由付けのためいっそ人に同情されるほど、それなら仕方ないねと言われるほどに不幸な境遇に陥りたいと思ってしまうのは誰しもある発想かもしれない。 20年以上前に書かれた2作だというのに、少しも変わっていない小川洋子の紡ぐ物語に怖さも感じた。 今はもうない福武書店の文庫ということで絶版扱いです。 http://www.horizon-t.net/?p=1028
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比較的初期の中編小説2編を収録。表題作の『冷めない紅茶』は、芥川賞候補になった作品。その翌年には『妊娠カレンダー』で同賞を受賞している。この作品は、小説としての完成度は高いと思うのだが、逆にそのことによってインパクトには今一つ欠けるということになるだろうか。K君夫妻とのやりとりも...
比較的初期の中編小説2編を収録。表題作の『冷めない紅茶』は、芥川賞候補になった作品。その翌年には『妊娠カレンダー』で同賞を受賞している。この作品は、小説としての完成度は高いと思うのだが、逆にそのことによってインパクトには今一つ欠けるということになるだろうか。K君夫妻とのやりとりも幽冥境の中でのような、はたまた現実であるかのような微妙なあわいにある。この時期の小川洋子さんは、そうしたところにこそ文学の本質を見ていたのだろう。そして、それを突き抜けた先に、彼女の本当の小説世界が拡がって行ったのだと思われる。
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