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ある女 ハヤカワ・ノヴェルズ
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房/ |
発売年月日 | 1993/07/31 |
JAN | 9784152077950 |
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ある女
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商品レビュー
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ある女 著者:アニー・エルノー 訳者:堀茂樹 発行:1993年7月31日 早川書房 2022年ノーベル文学賞、アニー・エルノーの小説。日本で出版された最初の3冊である『シンプルな情熱』『場所』『ある女』のうち、今週は『場所』と『ある女』を続けて読んだ。『シンプルな情熱』は2年前に読んだ。『場所』は死んだ父親について書いた本だったが、この作品は母親について書いた本。前者を読んで著者の父親像を知っていくにつれ、その時に母親(妻)はどうしていたのだろう、どう受け答えし、対応していたのだろう、と何回も思った。この作品でその答えが出るのかと思っていたら、違っていた。父親(夫)との絡みは殆どなかった。 父親の話は、父親が死んで15年たった1982年から書かれ、著者とは距離のあった父親について、父親にも自分にも距離を取りながら、客観的に書くことを主としていた印象だった。一方、この小説は母親が死んですぐに書き始めている。書き出しから、著者がなにも手につかない、なにもする気が起きない状態を表現し、母親について一定の距離を置いて描いてはいるが、自分との同一視的な視点も交えながら、父親とは違う描き方をしている。 ノルマンディーの田舎出身の母親は、父親と同じような境遇に生まれた。農場の馬方と家の中でする機織りの夫婦の間に生まれる。12歳半で学校をやめさせられて、マーガリン工場で働いた。ただ、父親と違うことは勉強ができたこと。そのまま進学すれば小学校の教員になれただろうと著者は見る。しかしながら、やはり時代はそういう生き方を容認しなかったようでもある。下層の人間だから、上の階層に属する男と結婚するのが幸せであるし、そうなるように育て、仕向けていくのが親の務めでもあると時代が考えていた。 1906年に生まれた彼女は、結婚後、暫くすると貧しさから脱却するために夫婦で小さな商売を始める。食料品販売、カフェも併設。開店は早朝6時、閉店は夜11時。早朝から開けないと紡績工場で働く女達が牛乳を買えない。夜はトランプやビリヤードに興ずる客がいる。それだけ働いて、女子工員1人分の給料をほんの少し上回る程度の稼ぎ。夫は勤めに出る。 父親(夫)と違い、娘(著者)が勉強することを積極的に応援した。1967年に父親(夫)が死ぬと、暫くは店をしていたがやがて娘夫婦と同居することに。ただ、著者の夫が新たな役職を得て引っ越すと、その町にはなじめず、生まれた場所に戻ってワンルーム暮らし。感情の起伏は激しくなり、認知症だと診断される。 1979年に交通事故にあって大けがをして入院となるが、そこまでは元気だった。しかし、1983年の夏には著者が面倒をみることになる。3年後、暮らしていた老人施設で死亡。ボーヴォワールが死んだ1週間後だった。 彼女は階層社会であるフランスにあって、最下層の出身だったが、娘夫婦と暮らすと、言葉遣いや態度なども上位階層のように上品に振る舞っていた。娘やその夫の成功を誰かに自慢したいとも思っていた。しかし、一緒に暮らすようになり、そういう人たちが住む町にも最後にはなじめなかったわけである。時代と共に解消されるとまではいかないまでも、緩やかになっている階層社会の溝は、そう簡単にはなくならない心の溝であると感じる話でもあった。
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母親が亡くなった後、記憶を頼りに書かれた母親の姿、回顧。ノルマンディの小さな村に生まれ育ち、貧しい中で常に上を目指して精力的に生きて来た母親と、大学に行き、いわゆる”社会的階級”の壁を乗り越えた娘。 認知症になって施設に入った母親を、複雑な思いで見守る娘の気持ちが率直に書かれてい...
母親が亡くなった後、記憶を頼りに書かれた母親の姿、回顧。ノルマンディの小さな村に生まれ育ち、貧しい中で常に上を目指して精力的に生きて来た母親と、大学に行き、いわゆる”社会的階級”の壁を乗り越えた娘。 認知症になって施設に入った母親を、複雑な思いで見守る娘の気持ちが率直に書かれている。ボーヴォワールの「老い」と同時並行で読んでいるからか、なおさら「老いる」ことの”自然”と、哀しさを感じた。
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2022ノーベル文学賞受賞のアニーエルノーの作品。 母親の死を契機に、母の人生を咀嚼するように、振り返るために書かれたかのような本。 文を書くことで、母の人生を、母の価値観を、母の生活苦をそして母の心配を母の希望を母の喜びを追いかける。そうやって母の人生を文章で綴ることが唯一の追悼でああるかのようだ。これは場所で父親を追悼した時と同じ手法である。ただ母の場合は性についてより赤裸々に描写している。 日本では私小説という分野が盛んで、小説家の家族は結構なんでも赤裸々にバラされてあらあらということがあるが、これはネタ探しというよりもう少し内省的である。フランスの民衆も歴史に翻弄され、貧しいながらも懸命に生きていたことがよくわかる。日本の手練れの小説家ならこのエルノーの母親を題材に面白い小説を書けるのに、面白くかかないところにこの本の面白さがある。
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