写真集 ゴミと宝石 フィリピン、スモーキーマウンテンの子供たち

上田敏博【写真・文】, 戸井十月【編】

• 販売会社／発売会社: 第三書館/
• 発売年月日: 1993/12/01
• JAN: 9784807493654

商品レビュー

2006/01/25

『ごみと宝石』。最近『ごみ山は宝物』みたいな別の本を読んだことがあったのでついうっかり誤解してしまっていた。ゴミはゴミではなく彼らにとって収入源となる宝のような存在、という意味のタイトルだと思っていたのだ。しかし、著者が子どもの笑顔ばかりを写真に写しているのを見てもしかして宝石というのは子どもたちのことではないかと思い始めた。思ったとおり、最後の何ページかの文章を読んでみるとやはり子どもたちのことを宝石と呼んでいるのだった。彼はサラリーマンから何か違うものをみつけたいとタイに飛び、衝撃を受ける。それからフィリピンへ行き、何かをしたいと思ってJICA,そしてSAVE THE CHILDRENとフィリピンのスラムを支援するのにかかわってきた。ブラジルの貧困街FAVELAにも似たものをここで見た。売春、犯罪、銃、麻薬など。それにしても２０％が８０％の富を、８０％が２０％の富をというのは世界の縮図のような場所ではないか。そして人口の3分の一がスラムに暮らすという現実。政府の対応はくさいものにふたをするというだけのものであるが、家より仕事がほしい彼らにとってはスモーキーマウンテンをなくしたところで生活の糧が奪われるだけだ。病気になっても薬もなく死んでいくというスラムの子どもたちの現実はブラジルと一緒だった。その現実がいかに厳しいものか私は知っている。このような厳しい現実を何度と見てきた著者が子どもの明るい笑顔を写真集のほとんどに飾ったということが印象的だった。私と彼氏は彼らのことについて語り合った。『彼らは新しいことを学ぶべきである』と彼。人は常に新しいことをするべきだというが実際は…厳しいだろう。しかし彼ら自身で変えていくことのできる現実もある!援助する方はその彼ら自身の自立心こそを支えていくべきである。