中国怪談集 河出文庫

中野美代子, 武田雅哉【編】

• 内容紹介: 内容:人肉を食う 陶宗儀著 松枝茂夫訳. 十〔キン〕楼 季漁著 辛島驍訳. 揚州十日記 王秀楚著 松枝茂夫訳. 台湾の言語について ジョ-ジ・サルマナザ-ル著 武田雅哉訳. 砂漠の風 紀〔イン〕著 前野直彬訳. ボ-ル小僧の涙 武田雅哉訳. ワニも僕の兄弟だ 中野美代子訳. 宇宙山海経 江希張著 武田雅哉訳. 薬・阿Q正伝 魯迅著 丸尾常喜訳. "鉄魚"の鰓 許地山著 武田雅哉訳. 死人たちの物語 黄海著 林久之訳. 五人の娘と一本の縄 葉蔚林著 林久之訳. 北京で発生した反革命暴乱の真相 中国共産党北京市委員会宣伝部著 武田雅哉訳
• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 1992/03/04
• JAN: 9784309460956

商品レビュー

2010/05/28

タイトル通りのアンソ…

[文庫ＯＦＦ]

タイトル通りのアンソロジー。日本の怪談の源流でもあります。

2022/09/01

いわゆる怪談話ではなく、奇妙な話を集めたアンソロジー。

李漁『十二楼』からの「十巹楼(じっきんろう)」
『点石斎画報』からの「ボール小僧の涙(做人極円)」、「ワニも僕の兄弟だ(人魚双生)」
江希張「宇宙山海経(正式なタイトルは『大千図説』)」
が面白い。

「宇宙山海経」は神童・江希張が幻視した惑星のカタログで、中華風オカルト科学の影響をうけている。太陽星系、北極星系、南極星系の三つがあり、どの星にもだいたい人間が住んでいて、羽が生えていたりもする。

「揚州十日記」は清軍が攻めて来た時の惨状を記す。

魯迅の「薬」は息子の肺病を治すために「血のしたたる饅頭」を買う話で、二人の革命家を記念した短編小説。こんな不気味な話も書いていたのには驚いたが、岩波文庫の『阿Q正伝』にも収録されているので、一度は読んでいるはず。

最後の一編「北京で発生した反革命暴乱の真相」は、天安門事件を報じる人民日報の記事。編者のひとりである武田雅哉はあとがきで、「さて、いずこにおいても、またいずれの時代においても、国家は、いかなる文学者の追随をも許さない、もっとも優れた怪談の書き手であった。」(p.365)として、天安門事件の記事は中国という国家が創作した怪談の最新作であり、中国の正史はこうした物語の集成であるとする。そして、この記事を「おもしろく」読んだ人間がいたという事実を残すこと、魯迅と並んで収録することが、書物の編者に与えられた力だと考える。

2019/06/12

友達との待ち合わせで時間を潰している際に、表紙と目が合って思わず手に取ってしまった。どうやら新装版のイラストらしいのだが、あまりにも不気味すぎて、この本を机の上に置くときは必ず裏返しにしていた。
世間一般で言う「恐怖」という感情でいえば、表紙が一番怖いかもしれない。本の中身はどれも不気味だったり凄惨だったり、かと思えば中には滑稽だったりするものも混ざっている。それを全部ひっくるめて怪しげな談話、すなわち怪談としてまとめられた一冊なのかな、と。
印象に残ったのは「揚州十日記」と「五人の娘と一本の縄」の二作。前者は現代社会の生活がいかに幸福で満たされているかを思い知らされる話で、後者は読み物として一番楽しめた。映画化されているようなので、観てみたいな。

そういえば
この本を読み進めていたある日、自分が座った電車の座席に何故か中国のお金(1元と1角？)が置かれてた。
でもって、たった今テレビつけたらNHKで天安門事件の番組がやってるっていうね。怪談……！！！