しかし… ある福祉高級官僚 死への軌跡

是枝裕和【著】

• 販売会社／発売会社: あけび書房/
• 発売年月日: 1992/12/05
• JAN: 9784900423664

商品レビュー

2024/07/10

数々の名作映画を世に送り出している是枝監督が描いた、或る高級官僚の死（享年53歳：1937～1990）であります（この本は、1992年の作品）。丁寧な書き方、感情を抑えた淡々とした筆致で描かれる　或る高級官僚の人生（そしてその挫折）に、是枝ワールドが見え隠れ。本の後半に紹介される15歳の山内豊徳（のちに東大卒の高級官僚となる、修猷館高校文芸部の1年生）が書いた、しかし、という詩に込められた思いに、あれこれ考えを巡らしております。この本の前に読んだ、逆命利君の主人公鈴木朗夫（1931～1987）も50代で逝去（こちらは癌ですが）、働き盛りの死にも、色々考えさせられる処があり。　★四つであります。

2011/10/06

110930onBS171 エリート公務員の自殺 with other books n DVDs
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1990年12月5日、環境庁次期事務次官候補が自ら命を絶った。彼は水俣病訴訟の国側の責任者として批判の矢面に立たされていた。厚生省入省以来30年、福祉・環境行政一筋に歩んで来た高級官僚が「福祉切り捨て」の時代に押しつぶされていく―。ギャラクシー賞作品、渾身のドキュメント。

平成2年12月。環境庁の1人の官僚が自ら命を絶った。山内豊徳、53歳。水俣病裁判の国側の責任者として和解拒否の弁明を続けていた企画調整局の局長であった。

2009/02/25

この本を読む前から、官僚批判には違和感を抱いていたけども、私も大学に来るまでは、批判する側の人間だった気がしている。だけど、大学に入って、割と身近にキャリアとしてがんばっている人たちがいて、そういうのを見てると、安易に批判なんてできなくなるし、メディアにおける官僚批判にも違和感を覚えるようにはなる。
この本では、筆者の是枝さんが、1990年当時、環境庁次期事務次官候補だった山内豊徳氏が水俣病訴訟の国側の責任者として批判を浴びる中、自殺へと向かっていくまでの過程を、幼少期にまで遡って、丹念に綴っていく。これは、社会学的なエスノグラフィーのような読み応えがあって、是枝さんの
問題提起には力がある。