上海 新世紀 朱鎔基と浦東開発

室井秀太郎【著】

• 販売会社／発売会社: 日経/
• 発売年月日: 1992/08/25
• JAN: 9784532141363

商品レビュー

2013/01/15

上海浦東新区がどういう位置にあるのかが、よく理解できた。
天安門事件（１９８９年６月）は、鄧小平だけでなく、
世界にアピールすることになった。
中国というものの「体質」を鮮明に見せた。

○国営企業の活性化
○価格の自由化
○産業構造の転換

この本は、朱鎔基が、上海市長から、
９１年春 副首相になっていく過程の段階での
上海での物語である。

株式がはじまる。外国の投資をうける。香港資本、広州の華僑；台湾資本。朱鎔基の天安門事件の対応。上海での手腕。学生の封じこめ・・積極的な姿勢。

浦東（３５０平方キロメートル）を開発していくために、
地下鉄。
１９９１年南浦大橋、１９９３年楊浦大橋
この当時、上海は、１２００万人の人口だった。

○百貨店・スーパーなどの第３次産業への投資を認める。
ヤオハン：そしてカルフール
○優遇政策

朱鎔基は、
「国営企業の活性化　価格自由化　産業構造の転換」
という命題に取り組んでいる。

１９８９年６月の天安門事件は、
中国のもっている政治的特質を世界に知らしめましたが、
その事件の背景；「つまりなぜおこったのか？」
という問題が、不鮮明なままに、
１９９２年の鄧小平の「富めるものから豊かになれ」
という演説で、大きな変化をもたらしました。
その中心的役割を果たしたのが、「上海浦東新区」です。

９２年以降は、流通業が自由化され、
ヤオハンが、世界１のデパートをつくったのも、この浦東地域です。
しかし、ヤオハン自体が、崩壊してしまった。
銀行、商社などもこの地域に全部進出してきました。
そういう意味では、シンセンの発達とは違った発達形態を作りあげました。ポスト天安門事件の経済的進展の象徴的存在が、この「浦東新区地域」です。

女神の変化
１９８９年５月天安門広場には、
アメリカの自由の女神を意識してつくられた女神像ができた。
「アメリカのような自由と民主を中国によこせ」だった。
そして１９９９年５月　１０周年を迎えた
天安門広場に、女神像がつくられた。

「３体並んだ女神像は、いずれも高くかかげた
手の中にミサイルを握りしめていた。
今回の女神は、5月7日にＮＡＴＯ軍のミサイルが
ベオグラードの中国大使館に撃ち込まれたことに
抗議するために作られたものだった。
３体のうちの一つは、
片手で平和のシンボルであるハトを握りつぶし、
もう一体は「人権」と題する本を持ち、
のこる一体はナチスのカギ十字をあしらったガウンを着ていた。」

このときは、アメリカの抗議の女神像であった。
中国政府は、１０年間の間に、自由投票や政党結成の自由
といった政治の民主化を徹底したわけでなく、
経済の改革を押し進めただけであった。
しかし、大きな変化が生まれていることは、明らかです。

「民主化を進めない政府への反感」より、「経済振興をはかる中国政府への支持」に転換している感じです。

朱鎔基は、上海市長であり、上海共産党書記だったのですが、
首相になってから一番すすめたのは、汚職の摘発と経済犯罪でした。
これは、中国国民の支持を受けました。

オリンピックとＷＴＯの加盟という世界の仲間入りを強調し、
さらに経済振興が進んでいきます。

国営企業のリストラは、急速に進んでいます。
国営企業の自宅待機していた人の医療保険、社宅などが、
会社もちだったのが、自己負担に切り替わり、
その人達が抗議行動を起こしている話がよく聞かれます。

十八大会で参加した朱鎔基を見た時、歳をとったなぁと思った。