ブルースの詩

サミュエル・B.チャーターズ(著者), 佐藤重美(訳者)

• 販売会社／発売会社: 中央アート出版社
• 発売年月日: 1990/10/24
• JAN: 9784886395948

商品レビュー

2017/09/30

アメリカのサブカルチャー、ニグロ文化にとって、ブルースこそ大衆音楽なのだ

ブルースこそ「真実の気持」を含むのみならず、歌手自身がブルースの表現する勘定を体験していなければならない。

New Highway No 51' TOMMY McCLENNAN　　　グレイハウンドバス

はるかな道　　ペッシースミス　

Down the highway チャーリーピケット　　　　　
’’６１号線をひとりで行くんだ。の途中でくたばっても、死んだことなぞ、誰が知ろうか’’

Me and Devil ロバート・ジョンソン
俺の死体を埋めてもかまわない　　ハイウェイのかたわらに　　主よ　俺のこの邪悪な魂は　グレイハウンドのバスに飛び乗り駆けるのだ

「大きなトランク」を「押入れ」に入れる卑猥なメタファー

社会抗議がブルースに込められることはまれである
怒りや欲求不満は、しばしば示される。
しかし、ニグロが合衆国で強いられている社会条件に対する、正面切った抗議はまれだ。
不平は述べられているものの、抗議は息の根を止められてきたのだ。

個々の感情や、日常生活の現実への個人的対応。これらを表現し得ることが、詩の偉大さだ。

もっとも卓越したブルースは、しばしば、歌手をとりまく社会的成約を映し出す。それでも「一人間にのみに及ぼされる」自体を状況に見出だせるのだ。

『Crossroads Blue』　ロバート・ジョンソン　　　　便乗させてくれる車を闇雲に。探している。　　暗くなっても戸外にいるニグロは投獄されるのだ。

人種境界線の向こう側に生活を確立させようと努力しながら、個人的、直接的な体験を表現する上で、ニグロはブルースに頼ってきたのだ。
その率直さと、「真実の気持」と歌手が呼ぶものとのかかわりの中で、ブルースはより広範な人間性の現実を描くのである。
ブルースの感情の実直さは、やむことなく教えてくれる。人種境界線のいずれの側にあっても、そこに生きているのは、人生の過程に同じ苦しみと喜びの瞬間を見出す男女に過ぎないことを。

黒人文化とのかかわりの中に、新たな表現と自己理解の可能性が秘められている。