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死を前にした人間
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 1990/11/24 |
JAN | 9784622034834 |
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死を前にした人間
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訳者あとがき 11世紀トルストイ描く農民の中にまで生きながらえた伝統的な死に方。瀕死者は超自然に、または直感的に自分の死の時と場所を知る。友に許しを乞い名残を惜しみ死に、町村の中央にある教会の中に埋葬された。 12世紀以降、審判と言う新しい概念が登場。エリート層を中心にして集合的運命としての意識よりも個我を重視する傾向が生じた。自分の救霊の確実性を信じなくなり祈祷と祝福が流行る。ミサや寄付や肖像画が流行、自意識が成熟し執着に到着する。 中世末、富と栄光を渇望する世界に人生における失敗と言う鋭い感情が生まれ、強迫観念にまで発達する。ここにおいて人は失敗と死を結びつけて考える。死は肉体的な死。人を恐怖させる野蛮なものになっていく。それは性愛と同じ好奇心と背徳的な屈折を引き起こす。死骸趣味は熱愛した人生への苦渋に満ちた愛惜の情。 中世から17世紀にかけて、墓の彫像にも変化が出る。 初期は安眠を示す横臥像、そして霊魂の像、救済のため祈る跪拝像、やがて家族感情が発達するにつれ家族跪拝像。中世末には死骸趣味の影響下で臨終そのものへ思考と感覚を集中するに至る。 が、ルネサンス期に入ると、このいまはの際の価値が下落し、人は一生を通じて死を想念する方向に向かう。死はかつて持っていた非合理的な力を失い、またかつての絶対的二律背反の態度、すなわち執着か全面的放棄かと言う態度の決定も相対化され、死はその強烈さをも失うに至る。執着または過度の人生愛は消える。 17、18世紀は死体解剖の時代。仮死埋葬の恐怖。 19世紀は汝の死の世界。家族感情の著しい変化により死が強い情動を呼び起こすことになる。死は悲惨で美しいものになった。この時点で死と苦しみと罪との間にあった関係が解消し始める。悪は撤退しはじめ、かくて地獄の存在の信仰が瓦解する。来世は再会の場となる。瀕死者は家族に主導権を奪われる。衛生観念の進化のもとで死はますます汚れた醜いものになる。 20世紀、死の医療化によって家族は死の現実を本人に隠し、これだって低下すると最後のお別れがなくなり、臨終はかつての美しさを失う。こうしたタブー化した死が倒立した姿である。 21世紀、共同体の持つ、その構成員の死に関わると言う意識がますます希薄になる。医学の進歩によって共同体で身を守る必要を感じなくなり、相互の連帯感を失ったことによる。またあたかも死が存在しないかのように振る舞うよう仕向けられる。
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