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世界の王
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世界の王

ルネゲノン【著】, 田中義広【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 平河出版社
発売年月日 1987/10/25
JAN 9784892031397

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2024/11/11

ルネ・ゲノンの『世界の王』は、一見すると神秘主義的な王権論の書に過ぎない。しかし本書の真価は、現代文明の危機的状況を見据えながら、「王」という原型的権威の形而上学的本質を究明した点にある。 著者は「アガルタ」という伝統的中心の象徴を起点に論を展開する。これは単なる神話的トポスの記...

ルネ・ゲノンの『世界の王』は、一見すると神秘主義的な王権論の書に過ぎない。しかし本書の真価は、現代文明の危機的状況を見据えながら、「王」という原型的権威の形而上学的本質を究明した点にある。 著者は「アガルタ」という伝統的中心の象徴を起点に論を展開する。これは単なる神話的トポスの記述ではない。むしろ、ユリウス・エヴォラが『伝統の反逆』で示唆した「原初の伝統」の具体的な顕現形態として理解されるべきものだ。特に注目すべきは、著者がこの「中心」を、地理的実在としてではなく、超歴史的な精神的実在として位置づけている点である。 本書における形而上学的考察は、以下の三層構造で展開される: 1.権威の形而上学的起源 ・「世界の王」における霊的権威と世俗的権力の統合 ・プリモーディアルな伝統における王権の本質 ・シャクティ・パータ(霊的影響力の伝達)の系譜学 2.伝統的中心の象徴体系 ・アガルタの形而上学的地理学 ・「地下の王国」の多層的意味 ・「隠された指導者」の存在論的位相 3.現代世界における伝統の変質 ・カリ・ユガにおける霊的権威の潜在化 ・王権の世俗化過程の形而上学的解釈 ・「偽イニシエーション」の問題系 特筆すべきは、著者による「王」の存在論的解釈だ。それは単なる政治的支配者ではなく、天界と地上界を結ぶ軸としての機能を持つ。この視点は、ミルチャ・エリアーデが『聖なる空間と時間』で論じた「世界の中心」の概念とも呼応する。 さらに深い考察が向けられているのは、「隠された王」の象徴性である。表面的な政治権力が「王」の外的機能を簒奪しても、その内的・霊的機能は決して失われることはない―この洞察は、アナンダ・クーマラスワミが『伝統的芸術の変容』で示した「本質的不変性」の原理とも通底する。 本書の現代的意義は、脱魔術化された世界における聖なるものの在処を指し示した点にある。世俗化が極限まで進んだ現代において、なお存続する霊的権威の可能性を、形而上学的次元から論証する。これは、フリッチョフ・シュオンが『超越的単一性』で展開した伝統主義的形而上学の、具体的な適用例としても読むことができる。 ただし、著者の議論には一定の留保も必要である。特に、現代における「王」の顕現形態については、より詳細な検討の余地が残されている。また、「東方の光」への過度の傾斜は、西洋思想史における王権概念の独自の展開を軽視する危険性も孕む。 それでもなお、本書は伝統主義研究に決定的な視座を提供する。特に、現代の精神的危機を克服する可能性を探る上で、基礎的な指針となるだろう。形而上学的真理が、いかなる時代においても失われることなく保持されうるか―その具体的様態の一端を、本書は示している。 著者の視座は、カール・シュミットの政治神学とも、ヴォルフガング・パウリの「非因果的連関」とも異なる独自の領域を切り開く。それは、純粋な形而上学の光に照らされた「王権」の本質的理解への道を示唆するものである。

Posted by ブクログ