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わたしのおとうさんのりゅう の商品レビュー

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2025/11/24

「当時のおとなたちは、だれもが戦争を生き延び、戦後を生きていた。」(p.105) 言葉づかいや戦中戦後の実体験など、細かい違いはたくさんあるけれど、著者の“おとうさん”と、亡き母は同じ年。そのせいか、そこかしこに両親の生きた時代の気配を感じて懐かしかったし、“おとうさん”のこと...

「当時のおとなたちは、だれもが戦争を生き延び、戦後を生きていた。」(p.105) 言葉づかいや戦中戦後の実体験など、細かい違いはたくさんあるけれど、著者の“おとうさん”と、亡き母は同じ年。そのせいか、そこかしこに両親の生きた時代の気配を感じて懐かしかったし、“おとうさん”のことを誇らしく語る比呂美さんの愛が伝わり、私まで胸がいっぱいになった。読書案内としても素晴らしいし、装画にも愛!

Posted byブクログ

2025/11/15

いかな伊藤比呂美の作品といえども、今回はさほど期待していなかったのだが。 でも、伊藤比呂美の作品だから、すぐに買って読む。 タイトルから、お父さんの名前が「りゅう」なのかなと思った間抜けな読者。(私) 「エルマーのぼうけん」の原題であった笑 その翻訳の話から始まる。 そういう...

いかな伊藤比呂美の作品といえども、今回はさほど期待していなかったのだが。 でも、伊藤比呂美の作品だから、すぐに買って読む。 タイトルから、お父さんの名前が「りゅう」なのかなと思った間抜けな読者。(私) 「エルマーのぼうけん」の原題であった笑 その翻訳の話から始まる。 そういう話ね、と思って焦点を合わすと、すぐに裏切られる。(いい意味で) 子供向けの翻訳の問題点はありながら、それでも貪るように読んだ子供時代の思い出へ。 そういう話になるのね、と思ったらまた違う方向へ。 娘に全集を買い与えた優しいお父さんの全体像が、娘の手によって暴かれていく。 あちこちに寄り道しながら、どんどんお父さんの人生へ。 お父さんの人生が立ち上がっていくのがとってもスリリング。 今までの伊藤比呂美のエッセイから想像される「お父さん」は、アメリカに行ってしまった無鉄砲な娘の帰りをひたすら待っていた寂しがり屋のお父さんだった。 娘に引きずられるように嫁ぎ先の熊本に引っ越してきたのに置き去りにされた脇役だったのだが。 (だから、あんまり期待してなかった) そのお父さんの物語はすごかった。 只者ではなかったです。お父さん。 伊藤比呂美がなぜ、こんなにも自分の心を鷲掴みにするのかの、謎が解けた。まさに血脈。 このお父さんが、ひとりぼっちで、係累のない熊本で、娘のアメリカからの帰省を待ちながら暮らしていたのだと思うと、家族の景色が変わってくる。 また今までの作品を読み直さなくてはいけないではないか!(喜んでそうします) 伊藤比呂美の作品は、エッセイなのか、はたまた小説なのか、やはり詩なのか。 いつのまにか、いつものように、伊藤比呂美の言葉の海に漂っている感覚が気持ちいい。あっちに行ったり,こっちに帰ったり、その思考の流れに乗るのが、たまらなくいい。 胸が苦しくなるような、温かくなるような、人間に対する愛おしさに満ちてくるような、伊藤比呂美の情に興奮した。 ホント好きだと再確認。 唯一無二の存在です。

Posted byブクログ