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さよならジャバウォック の商品レビュー

3.7

164件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    57

  3. 3つ

    54

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    2

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2025/12/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初めての伊坂幸太朗さん作品でした。暴力を振るってきた夫を殺害してしまうという導入がミステリーの幕開けを思わせる一方、読み進めると「ジャバウォック」なる寄生存在を巡るSF染みた物語に変容していく。 序盤、所々で量子の記憶が途切れ途切れになり、思い返しながら状況を説明する描写があった点と、宿主が死ぬ・死んだと思わせるとジャバウォックが別の生体に移り住むという話から、てっきり量子にジャバウォックが憑いていて、意識が飛んだり戻ったりしているんだと思っていたら、終盤でまさかの種明かし。水槽の中の脳などの哲学的な要素を持ち出すことで、量子が抱く不安感の正体がうまく誤魔化されていたのだと気づく。 印象に残るのは凍朗の台詞、「自分は最後の最後まで、どんな相手にも親切な人間でいたい、と思っているんです。」人間が「暴力と親切」から成る生き物であると考え、人間の暴力的な一面を悲観しながらも語られた言葉。彼の傲慢さ故の発言か、「他人は変えられない」が故の諦めからくるせめてもの希望だったのか。終盤、あんな形で自身を試し、答え合わせをしなくても良かったのでは...という哀しさを感じた。

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2025/12/03

どこから夢だか異次元だかの世界に入っていたのか、時間と現実が曖昧になって、でも先が気になり続け、一気に読み終えた。殺人からはじまるのにどんよりした重たさがないのが素晴らしい。精神的な病や認知症ももしかしたらこんな感覚なのかな。本人は周りに迷惑かけまいと本人なりに一生懸命考えて、た...

どこから夢だか異次元だかの世界に入っていたのか、時間と現実が曖昧になって、でも先が気になり続け、一気に読み終えた。殺人からはじまるのにどんよりした重たさがないのが素晴らしい。精神的な病や認知症ももしかしたらこんな感覚なのかな。本人は周りに迷惑かけまいと本人なりに一生懸命考えて、たくさんの不安のなかで生きているのかもしれないな、と思った。やらかしもやりすぎも全部、ジャバウォックのせい。でも、本来のその人の中にあるもの以外は出てこない。平常時の言葉も態度もそうかも。

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2025/12/03

伊坂幸太郎ワールド全開。 ジャバウォックって何ぞや?と思いながら読み進め、その正体を知ってゾッとする。 物語は量子がパワハラ夫を金槌で殴り殺害した場面から始まる。 そこに救世主のように現れたのは大学時代のサークルの後輩・桂凍朗。 夫の死体を隠すべく二人は山中に向かったのだが...

伊坂幸太郎ワールド全開。 ジャバウォックって何ぞや?と思いながら読み進め、その正体を知ってゾッとする。 物語は量子がパワハラ夫を金槌で殴り殺害した場面から始まる。 そこに救世主のように現れたのは大学時代のサークルの後輩・桂凍朗。 夫の死体を隠すべく二人は山中に向かったのだが、そこから奇想天外な展開へ。 謎の二人組、破魔矢と絵馬、ミュージシャン・伊藤北斎まで登場し先が全く読めない。 SF要素満載で物語は思いも寄らぬ方向へと動き出す。 そして終盤に待ち受けるサプライズに驚愕。 紆余曲折あったけど、きっとこれはハッピーエンド。

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2025/12/03

あえて厳しめの評価で。 この軽快で独特の語り口が昔は大好きだったのに、自分が歳を取ったのか、いまいち受け付けられなくなってきた中の久々の伊坂さん。 渾身の長編ミステリーとの謳い文句に惹かれ、今までと違う伊坂さんが読めるかもとの期待は早々に打ち砕かれ(笑)、殺人事件はどこへやら、結...

あえて厳しめの評価で。 この軽快で独特の語り口が昔は大好きだったのに、自分が歳を取ったのか、いまいち受け付けられなくなってきた中の久々の伊坂さん。 渾身の長編ミステリーとの謳い文句に惹かれ、今までと違う伊坂さんが読めるかもとの期待は早々に打ち砕かれ(笑)、殺人事件はどこへやら、結局いつも通りの伊坂節が続き、やっぱりもう合わないかもという結論になってしまった。 しかも今回は伊坂さん作品でたまにある、超現実的なものが含まれている設定なので尚更乗れず。 最後の最後にちょっとホロっとさせる感じは、相変わらず好きだったけど。

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2025/12/03
  • ネタバレ

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「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」と言うけれど、量子は自分の意思では変えられない20年を過ごしたのにこのフレーズは正直どうなのかと思う。

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2025/12/02

あらすじ的にさ、シリアス路線だと思うじゃない。 まさかの予想の斜め上を行きましたよ? 正直、めっちゃ好みの展開だった。 ホント流れ石だわ。 相変わらずキャラも良いなあ。 破魔矢に絵馬、北斎、そして凍朗。 ユーモラスな言い回しとドラマティックな展開で楽しませてくれるけど、何とも言え...

あらすじ的にさ、シリアス路線だと思うじゃない。 まさかの予想の斜め上を行きましたよ? 正直、めっちゃ好みの展開だった。 ホント流れ石だわ。 相変わらずキャラも良いなあ。 破魔矢に絵馬、北斎、そして凍朗。 ユーモラスな言い回しとドラマティックな展開で楽しませてくれるけど、何とも言えない違和感も付いて回る。 それが分かった瞬間「そうきたか!」と思っちゃいましたね。 面白い。というか楽しい。 「あー読書楽しいなー」って思わせてくれる作品だった。 もちろん、ビートルズの曲も検索した。

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2025/12/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白かったと思う。 ミステリーかと言われると、そうなんだ、くらいの認識でした。 ラストの、「桂さんは、そういう人間だった。ということだね」が、答えなのかなと思った。

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2025/12/02

夫は死んだ。死んでいる。私が殺したのだ。デビュー25周年。渾身の書き下ろし長編ミステリー。(e-hon)

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2025/12/02

「真面目に、誠実にやろうとするのはいいけれど、それを他人にまで求めはじめると危ないってことだよ。正しいことをそこまで正しいと信じるのは」 ファンタジーというかSF味と現実の狭間の、不思議の国のアリスな世界観に魅入られがちだけど、物語の本質はこの言葉にあるんじゃないかと思う。 ...

「真面目に、誠実にやろうとするのはいいけれど、それを他人にまで求めはじめると危ないってことだよ。正しいことをそこまで正しいと信じるのは」 ファンタジーというかSF味と現実の狭間の、不思議の国のアリスな世界観に魅入られがちだけど、物語の本質はこの言葉にあるんじゃないかと思う。 面白かった。

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2025/12/02

伊坂作品には、現実と非現実の境界を扱う二つのタイプがある。物理法則を超えない“現実寄り”のタイプと、超常性を含む“非現実寄り”のタイプである。自分が好むのは前者であり、これは現実の範囲内にいながらも非現実的な衝撃を得られる点に魅力がある。一方で後者は、共感できる領域から外れつつも...

伊坂作品には、現実と非現実の境界を扱う二つのタイプがある。物理法則を超えない“現実寄り”のタイプと、超常性を含む“非現実寄り”のタイプである。自分が好むのは前者であり、これは現実の範囲内にいながらも非現実的な衝撃を得られる点に魅力がある。一方で後者は、共感できる領域から外れつつも驚きの強度が弱く、好みから外れる。本書はまさにその後者に属し、予想どおり強くは刺さらなかった。ただし、筆致の読みやすさは確かであり、最後まで引っぱる力はあった。 結末は大きな驚きを狙った構造になっているが、その整合性は十分とは言い難い。主に二点の不整合が気になった。 第一に、凍郎がルーシー夫妻を暴れさせるという“最終手段”を選ぶ展開である。これは一般市民を傷つける可能性のある手法で、これまで温厚に描かれてきた彼の性格設定と整合しない。 第二に、息子の態度である。母が父の殺害犯であることを知りながら、目覚めた母と平然と接し、さらに「あなたは夫を殺したのでしょう」と第三者的に指摘する姿勢は、心理的負荷を考えれば超人的で、現実的な描写とは言いがたい。 これらの点が、叙述トリックの納得感を満たすは弱く、読者に「その驚きは妥当だ」と納得させる説得力を欠いている。ただし、全体の読みやすさやテンポの良さ、最後を大団円で収める語りの巧さなど、作家の持ち味は健在である。 総じて、現実と非現実の境界を扱いながらも物理法則をわずかに超越し、共感が揺さぶられる後者タイプの伊坂作品に特有の弱点は、本書でもそのまま残っていたと感じる。

Posted byブクログ