ロング・アフタヌーン の商品レビュー
「犬を飼う」という作中作から始まる『ロング・アフタヌーン』。 そのSFチックで衝撃的な短編の秀逸さにまず掴まれます。わずか40ページほどの物語ですが、全編にシスターフッドの気配を孕み、“もっと読ませてほしい”と思わせる魅力がありました。 そして、次の作中作「長い午後」は、数十年...
「犬を飼う」という作中作から始まる『ロング・アフタヌーン』。 そのSFチックで衝撃的な短編の秀逸さにまず掴まれます。わずか40ページほどの物語ですが、全編にシスターフッドの気配を孕み、“もっと読ませてほしい”と思わせる魅力がありました。 そして、次の作中作「長い午後」は、数十年後、同じ作者により再び立ち上がる物語。 作中作を組み込みという事は、現実と虚構の境目をわざと曖昧にし、気を抜くと、自分がどちらの世界にいるのか分からなくさせるということ。 曖昧な登場人物、曖昧な記憶、曖昧なミステリー。その“揺らぎ”こそが本作の魅力であり、不穏な読後感をもたらすもの。
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「犬を飼う」のインパクトが強烈で、一気に引き込まれました。 その後は、物語が入れ子構造になって進んでいき、現実と物語の境界がいよいよ曖昧に…といったところで、最後の「あなた、ユニークね」でやられた!
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『犬を飼う』が衝撃的に面白い。誰かに勧めたいと強く思ったが、人を選ぶ…この小説は。途中の展開も何度もギリギリわかりそうでわからなかったり、そうならないでと思ったところでそうなったり。わたしが一番刺さったのは牧島晴佳の存在。終わり方もとても好き。
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誰でもこの先は絶対に幸せな気分にはなれないよなぁと思いながら、iPhoneの画面をタップしてインターネットの沼に沈むときがあるのだろうか。 結末は解説を読んで腑に落ちた感じがする。 彼女は誰かにとってのアリサの役割も引き継いでいたのか。
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葉真中顕『ロング・アフタヌーン』中公文庫。 変わった構成のイヤミスであった。作家を目指す主婦が執筆した『犬を飼う』という小説とタイトルの『ロング・アフタヌーン』を日本語にした『長い午後』という2つの小説を軸にストーリーが展開していくのだ。 男女平等社会、ジェンダーギャップなど...
葉真中顕『ロング・アフタヌーン』中公文庫。 変わった構成のイヤミスであった。作家を目指す主婦が執筆した『犬を飼う』という小説とタイトルの『ロング・アフタヌーン』を日本語にした『長い午後』という2つの小説を軸にストーリーが展開していくのだ。 男女平等社会、ジェンダーギャップなどという言葉が世に出て久しいが、まだまだ女性の扱いは男性に比べると低いように思う。しかし、企業などでは上に立とうとする女性が少ないことも事実であるし、専業主婦という生き方を選択した女性はなおさら男性よりも上に立つ機会など皆無に等しいだろう。 個人的には男性には男性の役割や得意分野があり、女性には女性の役割や得意分野があるのだから、それぞれが不足を補ってこそ、男女平等社会と言えるのではないかと思う。 志村多恵という作家を目指す50歳の主婦による『犬を飼う』というフェミニズムを全面に押し出した近未来ディストピアSF小説で幕開けする。 その『犬を飼う』という小説は公募型の新人賞に送られた小説で最終選考の6作まで残ったのだが、惜しくも落選してしまった。 7年前、『犬を飼う』を強く推していた書籍編集者の葛城梨帆には志村多恵は記憶に残る女性であった。『犬を飼う』から7年後、梨帆の元に再び志村多恵から『長い午後』というタイトルの小説が送られてくる。 『長い午後』は、志村多恵自身をモデルにしたと思われる自殺を決意した女性が偶然、学生時代の友人の女性と再会する場面から始まり、男性に対する不満や軽蔑のエネルギーが『犬を飼う』を執筆させたことが描かれていた。やがて、主人公の女性と学生時代の友人との会話はすれ違い、それは殺意へと変貌する。 そして、主人公の心で渦巻く男性に対する不満や軽蔑の念は…… 本体価格860円 ★★★★
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