1,800円以上の注文で送料無料

粒と棘 の商品レビュー

4.5

6件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    3

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2025/10/29

戦後GHQ占領下の混乱期、上野の浮浪児や没落華族、元飛行士ら市井の生きざまを描く連作短編集。 それぞれの編は独立しているが、登場人物につながりがあり、全体として1編の小説となっている。 敗戦により家族、職業、財産といった生活の基盤をすべて失った人々が必死に、しかし矜持を失わず...

戦後GHQ占領下の混乱期、上野の浮浪児や没落華族、元飛行士ら市井の生きざまを描く連作短編集。 それぞれの編は独立しているが、登場人物につながりがあり、全体として1編の小説となっている。 敗戦により家族、職業、財産といった生活の基盤をすべて失った人々が必死に、しかし矜持を失わずに生きようとする姿。 どの編も将来への渇望、生きる意欲に満ちながら、決してハッピーエンドとはならない。 最終編の最後も悲劇を示唆するもので、本書のトーンを象徴している。 児玉誉士夫、笹川良一など戦後右翼の大物と思しい人物も登場する。

Posted byブクログ

2025/10/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦後80年。 家族も尊厳も失い、犯罪に手を染め、惨めで理不尽なことが襲いかかかる中、それでも懸命に生きる人々の群像劇。 戦後の無法地帯となった日本で生き抜くこと、様々な組織が暗躍し、まさに闇。 想像しただけで恐ろしい。 しかし、そうやって生き抜いてきた先人達がいたからこそ、今の日本があるのであり、過去から現代と、まさに地続きになっていることを忘れてはならない。 最後のストーリーは、あの人とあの人がモデルなのかな?

Posted byブクログ

2025/09/19

敗戦しGHQの占領下に置かれた日本。その中心部、東京で暮らす人々を描いた6編の短編集。 戦後の日本は貧しく、老若男女、誰もが必死で生きるのに精一杯だった。戦時中、物資を運んでいた元飛行士。浮浪児の少年たち。郵便の検閲の仕事をする男性。子どもたちに自由な紙芝居をと願いながら、許嫁...

敗戦しGHQの占領下に置かれた日本。その中心部、東京で暮らす人々を描いた6編の短編集。 戦後の日本は貧しく、老若男女、誰もが必死で生きるのに精一杯だった。戦時中、物資を運んでいた元飛行士。浮浪児の少年たち。郵便の検閲の仕事をする男性。子どもたちに自由な紙芝居をと願いながら、許嫁の兄の帰りを待つ出版社勤務の女性。GHQの下で働く料理人。ある別邸で元伯爵令嬢の女性と若い女性のお世話をする若い女中。 みんな先の見えない暗い時代を必死に生きていた。彼らが必死に生きて来たからこそ、今の日本があるのだと思う。 特に浮浪児の少年たち。好きで1人になったわけじゃないのに、世の中に嫌われ、邪険に扱われ辛い描写が多かった。 今年は戦後80年。多くの戦争関連の本が出版されたが、『エレガンス』で東京大空襲の前後を読み、この『粒と棘』で戦後の日本を読んだ。戦争の恐ろしさを理解したつもりでも実際に体験していないから、その怖さは想像だけ。それでも、もう2度とあってはならないものと強く感じる。 予約している『13月のカレンダー』も心して読みたい。 しかし、最後の「何度でも」に出てくるあの人はあの人がモデルで、あの人はあの人がモデルなのかなーと。(ネタバレになるから、全部あの人)

Posted byブクログ

2025/09/13

1945年、終戦後の日本を舞台にした中編集。戦時中の苦労話は良く聞くが、戦後の被占領国となった暮らしについてはなかなか知り得る機会が無かった。単に私の無知のせいではあるけど。 時に犯罪に手を染めても、最低限生きる為にもがき続ける庶民を描いている。私は「幸運な男」のミステリアスな展...

1945年、終戦後の日本を舞台にした中編集。戦時中の苦労話は良く聞くが、戦後の被占領国となった暮らしについてはなかなか知り得る機会が無かった。単に私の無知のせいではあるけど。 時に犯罪に手を染めても、最低限生きる為にもがき続ける庶民を描いている。私は「幸運な男」のミステリアスな展開が面白かった。

Posted byブクログ

2025/09/06

★5 GHQ占領下の東京、今日を生き残るために地の底を這いずり回って生きた者たちの群像劇 #粒と棘 ■あらすじ 敗戦後、GHQ占領下の東京。今日を生き残るために、やりたくもない犯罪に手を染めざるを得なかった時代。地の底を這いずり回って生き抜いた者たちの群像劇。 ■きっと読みた...

★5 GHQ占領下の東京、今日を生き残るために地の底を這いずり回って生きた者たちの群像劇 #粒と棘 ■あらすじ 敗戦後、GHQ占領下の東京。今日を生き残るために、やりたくもない犯罪に手を染めざるを得なかった時代。地の底を這いずり回って生き抜いた者たちの群像劇。 ■きっと読みたくなるレビュー ★5 戦争はどこまでも人を不幸にする… ただ救われない思いが虚しく胸に広がる作品です。 戦後80年たちましたね。今や裕福な国のひとつになりましたが、戦争が終わった直後はどんな状態だったのか。本作では市井の人々の生き様が丁寧に描かれていて、戦争を知らない私にも肌で感じることができました。 自分らしく生きることなどできず、今日明日を生きるのが精いっぱい。価値観を不承不承ながら変えなければいけない、犯罪や人道を外れることをしなければ生きていけないこと。何より辛いのは、大人たちはもちろん、若い女性や子どもたちですら同じ境遇ってこと。 本作はそんな過酷な状況で暮らす人々を連作短編形式で描いていく群像劇です。 ■各短編の簡単レビュー ○幽霊とダイヤモンド 元飛行士だった男、上海から空輸されたある物の行方を追う。戦後の混乱期を無骨に書き記しています。暴力描写をさらりと切れ味鋭く描くのがお上手で、死の距離が近すぎて恐ろしかった。 ○少年の街【超おすすめ】 農家に浮浪児の仲介で生計をたてる少年の物語。大人が貧しいのは本人の責任だけど、子どもが貧しいのは社会や行政の責任。子どもたちが仕事をするならまだしも、犯罪に手を染めなければならない世の中は未来がなさすぎて胸が締め付けられる。 ○手紙 手紙の検閲官とダンサーの物語、今では考えられない職務。高貴と下品、美しさと醜くさがごちゃまぜになってる。人間の欲望が溢れ出てくる。 ○軍人の娘 紙芝居の出版社とGHQでの検閲を描く。かつて学校の図書館に紙芝居ってあったなー、と思い出してしまいました。これも戦後は検閲の対象ですか。戦争によって崩壊してしまった家族との繋がりを描く。 ○幸運な男【おすすめ】 GHQで少佐の家族に料理を提供する仕事を得た男の物語。その邸宅の地下でが捕虜が監禁されていると聞き、調べ始めるが… サスペンスっぽい展開、終盤からのキレがするどい。出てくる人々がみなどこか捻じれていて、戦後の混乱期を感じます。 ○何度でも【超おすすめ】 元伯爵令嬢の邸宅で働くことになった少女、ある男から一緒に住むお嬢様を調べるように依頼され… 生き抜くって、こんなにも辛いことですか… と思わずにはいられない。没落を背景に人間が変化していくところなんざ、太宰治の斜陽を読んでるようでした。 ■私とこの物語の対話 戦争ってのはこんな世の中を作り出すかと思うと、どうしようもなく途方にくれてしまう。 未来を生きる子どもたちを困らせる、戦争という罪作りなことはしないでほしい。しかし人間ってのは愚かなことを繰り返す。自分らしく生きられる今をありがたいなと思うばかりでした。

Posted byブクログ

2025/09/03

終戦から八十年。 この夏は、TVでも戦争関連の番組を多く目にした。 白黒映像の戦後の荒廃した場面や戦争孤児の多くが逃げている様子までも…。 今では考えられないが、かつてはなんとか生きようと右往左往していた小さな子どもがそこら辺にいたのだ。 この物語も戦後の東京で男や女や子どもが...

終戦から八十年。 この夏は、TVでも戦争関連の番組を多く目にした。 白黒映像の戦後の荒廃した場面や戦争孤児の多くが逃げている様子までも…。 今では考えられないが、かつてはなんとか生きようと右往左往していた小さな子どもがそこら辺にいたのだ。 この物語も戦後の東京で男や女や子どもが、これは罪なのかと考えるよりも今を生きようとしているのがわかる六篇の短編集である。 「幽霊とダイヤモンド」ダイヤモンドをめぐって追ってから逃げる飛行士。 「少年の町」浮浪児を集めて地方の農家に売り歩く少年。 「手紙」GHQの下で手紙を検閲する元士族。 「軍人の娘」紙芝居の出版社で働きながら許婚とともに義兄の帰りを待ち続ける女。 「幸福な男」連合国軍が接収した洋館で働く料理人。 「何度でも」元伯爵家でかつての浮浪児が見たもの。

Posted byブクログ