エレガンス の商品レビュー
物語の舞台は第二次世界大戦下の東京、1944年から1945年にかけて、当時は非国民とされた洋装姿で若い女性が首吊りの遺体として発見される事件が相次ぐ。キレイな遺体で花のように広がったスカートが特徴的であったため、「釣鐘草の衝動」と揶揄される事件を、警視庁の写真室所属の巡査「石川...
物語の舞台は第二次世界大戦下の東京、1944年から1945年にかけて、当時は非国民とされた洋装姿で若い女性が首吊りの遺体として発見される事件が相次ぐ。キレイな遺体で花のように広がったスカートが特徴的であったため、「釣鐘草の衝動」と揶揄される事件を、警視庁の写真室所属の巡査「石川光陽」と、“吉川線”を発表した内務省の「吉川澄一」の2人が明らかにしていく…。このおふたりは実在された方々なんですね! この作品の表紙も好きです。正しく“エレガンス”ですね! でもそれだけじゃないんです。もうね、読んでください…!!東京大空襲がどんなにひどかったか…!そして、彼女たちが最期まで“エレガンス”でありたいと思う気持ち、感じとってください。 戦後の時代を生きてきた私は、“エレガンス”でありたいと思ったことはあったかな…!今はこんなにも、自由なのに、ね^^;
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プロローグ 「パン パンパーン!!!」 街の何処かでクラクションが鳴いている 私は、そうした喧騒もどこ吹く風で シャッターを切りまくった 私の手の中には、ライカМ6が収まっている レンズは、ズミクロンМ35mmアスフェリカル 街のスナップショットにはもってこいの画角だ 尚、...
プロローグ 「パン パンパーン!!!」 街の何処かでクラクションが鳴いている 私は、そうした喧騒もどこ吹く風で シャッターを切りまくった 私の手の中には、ライカМ6が収まっている レンズは、ズミクロンМ35mmアスフェリカル 街のスナップショットにはもってこいの画角だ 尚、“Leica”とは会社名のLeitz Cameraの略である 過去には、アンリ・カルティエ・ブレッソンや ロバート・キャパ、木村伊兵衛といった 名カメラマンもこのライカを使用している 世界的な名機なのだ! ファインダー越しにサングラスをかけ、スカーフを 頭に巻いた女性が映り込む 出し抜けにファインダーから目を上げると その女性と目が合った 正確には、相手がサングラスだったので 目が合ったように感じた あまりにも無駄のない所作に、再びファインダーに 目を戻し、懸命にシャッターを切った! 思わず心の中で叫んだ “エレガンス!!!” そう、それが佐藤純子との ファーストコンタクトであった!!! その一枚の写真が私の、いや日本の行く末を 左右する一枚となるとは、露とも思わなかった そう、あの事件が起こるまでは、、、 本章 『エレガンス』実にエレガントな描写に華麗なる★5 yyさんのレビュー及びライカというワードに本書を 即断! 時は戦時下、洋装やパーマネントが憚れる時代に 5人の女学生が相次いで洋装及びパーマネントの 髪型で自殺するという、ショッキングな事故が 起こる 当初は、自殺として処理されるが、殺人ではないかとの疑念が持ち上がり 2人の凸凹刑事が真相を追っていく その内の一人の刑事が持っているのが、 ライカDⅢだ! 当時の本体価格がなんと家1軒分と同価格の600円! 誠に高価なカメラをぶら下げて、事件現場等の 証拠写真を収めていたのである ライカは空気感をも写し撮ると云うが、本作でも その写真が事件を解決する一つのキーワード となっているのである 6人目の犠牲者が出て、犯人が逮捕された折に 未曾有の空襲が東京を襲う “東京大空襲”だ! 大空襲の描写は悍ましくも圧巻だ その地獄絵図の中でも記録に残そうと ライカのシャッターを切り続ける主人公 戦時下とはゆえ、必死に自身に正直(エレガンス)に生きようとする人たち それを嫌悪する人たち 正解はない そういったこちら側と向こう側を産むのが戦争だ! ライカによって戦争そのものを切り取りとってしまいたい!!! 本を閉じると、そう思った エピローグ 「プシュッ!」 純子が放った弾丸はマッハ20の速さで彼に迫った 彼女のライフルは、バレット社のMk22である 秒速800mの弾速は、約4秒後には彼へと到達する 彼との距離は約3キロといったところか それは、運命に導かれたように真っ直ぐと 彼の胸へと突き刺した その刹那、彼は悟ったのだ あのファインダー越しに射抜かれた彼の心は 正に本物の弾丸となって自身を射抜いたことを! 胸から飛び散る己の熱い真っ赤な血潮と紅葉とが 彼の眼前で舞い上がった!! その時純子は、不覚にも泣いていた 何人もの人間を殺めてきたが、泣いたのは あの時以来であった! これが巷で言うところの“恋”というものなのか!? 数秒の逡巡後、何事もなかったかのように ライフルを収めると、踵を返して帰路に就いた!!! 彼女が立ち去った場所には、 真っ赤な紅葉の葉が悲しげに舞っていた 完 出典 プロローグ、エピローグ共に 『女工作員 佐藤純子(さとうすみこ)』より 一部抜粋 ※尚、本書『エレガンス』の内容とは、全く関係 ございませんので悪しからず
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elegansが出てきたからまあエレガンスやなぁってのは早目にわかって、ミステリとしてはガチガチでないけれども。でも、時代描写やその世界に生きる人々の姿を細やかに見せてくれて、こんな空気やラストの山津波みたいなあのシーンの為の物語なんだろうなと感じて、良かった。
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yyさんのレビューで興味を持ち読みたくなりました。 yyさんありがとうございます。 1944年12月。 警視庁の写真部付属の石川光陽は、裂かれたシーツで首を吊っている女性の遺体を当時六百円するライカDⅢのカメラで撮ります。 美しい遺体でした。 長いスカートが放射線状に広がり、...
yyさんのレビューで興味を持ち読みたくなりました。 yyさんありがとうございます。 1944年12月。 警視庁の写真部付属の石川光陽は、裂かれたシーツで首を吊っている女性の遺体を当時六百円するライカDⅢのカメラで撮ります。 美しい遺体でした。 長いスカートが放射線状に広がり、まるで花冠のようで”釣鐘草の衝動”と風聞される死が続いています。 ”釣鐘草の衝動”と言われて亡くなった女性は四人となり、さらに続き五人、六人と増えていきます。 女性はドレスメーキング女学院の生徒ばかりです。 最初はみな自殺とされますが石川と組んだ警視庁の吉川は皆、遺体の首すじに吉川線と呼ばれるひっかき傷があることから他殺と断定しドレスメーキング女学院の関係者にあたり始めます。 すると会う人皆「彼女たちは皆生きて働こうとしていた、自殺なんかするはずがない」と言い切ります。 怪しい人物と疑われる者も現れますが、果たして犯人は…? 石川は自分自身に「毎日のように空襲によって人が死んでいるのに殺人犯を見つけることに意味はあるのか」と問いただします。 ドレスメーキング女学院の校長の「武器を捨ててエレガンスに生きる」の主張が痛々しいと思える程の戦争描写。最後のB29の空襲による地獄絵図は読んでいて辛かったです。 犯人の殺人の動機についてもひとこと書きたかったのですがネタバレになるので控えます。 戦中のミステリー小説ではありますが、永井荷風の登場などもあり文学的なテイストもある作品でした。
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優雅さなんて、どこにもない。それでも“エレガンス”だった。 ミステリー小説によく出てくる「吉川線」を考案した吉川澄一と、実在した警視庁写真室巡査・石川光陽。 彼らが、戦時下の東京──銃後が戦場となった街で起きた「釣鐘草の衝動」と呼ばれる連続不審死事件を追う。 終盤にある、4ペ...
優雅さなんて、どこにもない。それでも“エレガンス”だった。 ミステリー小説によく出てくる「吉川線」を考案した吉川澄一と、実在した警視庁写真室巡査・石川光陽。 彼らが、戦時下の東京──銃後が戦場となった街で起きた「釣鐘草の衝動」と呼ばれる連続不審死事件を追う。 終盤にある、4ページ半にわたる東京大空襲の描写は圧巻。 空行も改行もなく、ただびっしりと文字が埋め尽くすページ。 その“文字の暴力”が、まさに空襲の暴挙そのものを表していた。文字だからこそ可能な、極限の表現だった。 物語の主眼は吉川でも事件でもなく、「戦争」そのもの。 ミステリーというより、“戦後80年の文学”として読むべき一作だ。 事件の仕掛けも精巧で、そちらを主軸にしても傑作になり得たと思う。 タイトルの「エレガンス」は、戦時下には不釣り合いに思えるが、読み終える頃にはこの言葉以外、考えられなくなる。 ■引用 - 戦争は分別を破壊する。 - 抵抗は、世界に実際的な影響を及ぼす場合も稀にあるが、及ぼさないことのほうが圧倒的に多い。それでも抵抗するのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためでもあるんだ。
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考えてみれば当然のことなのだが、B29による爆撃によって燃え尽くされていた太平洋戦争末期の東京においても、空襲に怯え、窮乏に苦しみながらも、人々は日々の暮らしを送っていた。そこでは、警察による犯罪捜査もおこなわれていたし、同調圧力に屈することなくお洒落な洋装で身なりを美しく保とう...
考えてみれば当然のことなのだが、B29による爆撃によって燃え尽くされていた太平洋戦争末期の東京においても、空襲に怯え、窮乏に苦しみながらも、人々は日々の暮らしを送っていた。そこでは、警察による犯罪捜査もおこなわれていたし、同調圧力に屈することなくお洒落な洋装で身なりを美しく保とうとする人々も存在した。あらゆるものが戦争と全体主義に埋没していたわけではない。おそらく今のウクライナやガザにおいても、程度は違えど同じ状況があるのであろう。平和な境遇に馴化してしまった我々のバイアスを取り除く、本作のリアリティは実に力がある。 石川光陽氏も、吉川澄一氏も、実在の人物であることを読後に知り、改めて重みを感じる。 それにしても、小説のクライマックス、昭和二十年三月十日未明の東京大空襲の描写は苛烈だ。読んでいて苦しくなって、読み進めるのが辛くなるほどに。 だからこそ、その過酷な状況を尊厳をもって生き抜こうとする人々の底力が静かに輝く。
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戦時下で起きた殺人事件。はじめは若い女性たちの自殺として処理されてたが、不審に思った吉川が石川とともに再捜査する事に。 この2人実在の人。私は存じないけど有名な人みたいです。この作品は他にも実在した人物がそのまま出てくるので、若い女性の自殺"釣鐘草の衝動"は本当にあった事なのか...
戦時下で起きた殺人事件。はじめは若い女性たちの自殺として処理されてたが、不審に思った吉川が石川とともに再捜査する事に。 この2人実在の人。私は存じないけど有名な人みたいです。この作品は他にも実在した人物がそのまま出てくるので、若い女性の自殺"釣鐘草の衝動"は本当にあった事なのかと錯覚してしまいます。 錯覚してしまう理由はもう一つあります。人々がどうやって戦時下を生き抜いたのかをリアルに書かれていることだと思います。空襲に怯える人々の恐怖、辛さがひしひしと感じます。そんな逼迫した状況でタイトルにもなっている"エレガンス"という言葉を胸に生きようとしている人達がいる。その人達の想いが熱い。そしてジーンとくる。なかでも、おしゃれ大好き女子たちの強い味方、美容師の八並達夫が私は好きです。彼には女子達をどんどん綺麗にして欲しいと思いました。P248の"エレガンス"について語っているところは心に響きました。 戦時下の人々の生活と"釣鐘草の衝動"の捜査の二つの視点で話が進む感じなんだけど、私的に捜査の箇所がもっとあってもよかったかなと思う。なぜなら戦時下の様子が余りにも辛すぎる。目を逸らしてはダメだと思うけど、私には無理だった。だから星2です。 最近戦争に関わる本ばかり読んでいる気がする。 何にも考えず手に取って本を読んでいるけど、不思議と同じ内容ばかり手に取っている時がある。気付くとまた?となる時がけっこうある。今回は戦争に関する事。ある時は虐待ばかりになったり、ホラーばかりになったりと不思議。ホラーはある期間そればかり読んでいる時があり、司書さん呆れないかな?と少し心配になったこともあります。
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戦時下の東京が舞台で、事実に基づいたミステリー小説です。緻密な取材による実話ならではの臨場感があり、事実に物語性をもたせる構成が見事でした。読者の心を惹きつける良質な一冊と思えます。 事実とは、実在した登場人物、①石川光陽(警察官・写真家で戦時の惨状などの撮影に携わった)...
戦時下の東京が舞台で、事実に基づいたミステリー小説です。緻密な取材による実話ならではの臨場感があり、事実に物語性をもたせる構成が見事でした。読者の心を惹きつける良質な一冊と思えます。 事実とは、実在した登場人物、①石川光陽(警察官・写真家で戦時の惨状などの撮影に携わった)と②吉川澄一(警視庁鑑識課課長で戦前戦後の科学捜査の発展に寄与した)、そして③「釣鐘草の衝動」(若い女性の首吊り自殺が相次いだ事件)です。 石川光陽と吉川澄一が組んで、上記事件を捜査していく展開です。吉川は殺人だと決めつけていますが、石川は乗り気になれません。捜査を進めるに連れ、石川の揺れ動く心理が、空襲におびえる市井の人々、東京の惨状とともに描かれていきます。 「誰が犯人か?」と真相追求が主軸です。しかし、徐々に戦時の様々な理不尽さへ抗う姿が、立場の違う人々を通して浮かび上がってきます。価値観を歪める巨大な権力への静かな抵抗が、怒りとともに伝わってきます。永井荷風まで登場し、戦争の悲惨さを後の世に伝えるその手段は多様です。これらが上手く構成され、完成度・質の高い作品になっている気がしました。 今の時代、別の意味で大変なことがあっても、好きなことや目標に向かって頑張れることが、いかに大事で有り難いことなのかを痛感させられます。「今、死を撮っている。」で始まり、「今、生を撮っている。」で終わる物語に、感銘を受けました。
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1944年12月から翌年1月にかけて、奇妙な事件が世間を騒がせていた。“ドレ女”と呼ばれる洋裁学校に通う女学生が次々と首吊り死体で発見されたのだ。女性たちは全員着飾っており、放射状に広がるスカートが下に向いて咲く花のように見えることから、“釣鐘草の衝動”と呼ばれていた。自殺か?他...
1944年12月から翌年1月にかけて、奇妙な事件が世間を騒がせていた。“ドレ女”と呼ばれる洋裁学校に通う女学生が次々と首吊り死体で発見されたのだ。女性たちは全員着飾っており、放射状に広がるスカートが下に向いて咲く花のように見えることから、“釣鐘草の衝動”と呼ばれていた。自殺か?他殺か?警務部写真室所属の石川光陽は、鑑識のエキスパート•吉川澄一と共に事件の真相を追うが、世は戦禍の真っ只中で… フィクションだが、実在した人物(石川光陽、吉川澄一、永井荷風等)が登場する戦争歴史ミステリ。 「生きている今を着飾りたい」 毎日のように空襲に襲われる“死が日常”の世の中で、自分の信念を曲げずに抵抗する。モンペは着ずに洋装で着飾り美を守る。どんな世の中になっても、最後までエレガンスでいたい。そんな矜持を持つ女性達に胸を打たれた。 身内が戦死しても、人前で泣くことは許されず、弱音も吐けない。なんて息苦しい世の中だったことだろう。終盤の大空襲の描写には圧倒され釘付けになった。読むのが辛いけど、日本人として目を背けてはいかんと思い歯を食いしばりつつ読了。先人達の多くの犠牲があったからこそ、今の平和があることを噛み締めた。合掌
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戦時下で次々と見つかる若い女性の死体。花のように広がったスカート、まるで生きているかのような美しい俯く姿。自殺か他殺か。 特殊な状況下での警察の捜査も非常に興味を惹きつけられましたが、毎日繰り返される空襲、先の見えない状態に追い詰められた人々の様子や東京大空襲の様子が細かく描かれ...
戦時下で次々と見つかる若い女性の死体。花のように広がったスカート、まるで生きているかのような美しい俯く姿。自殺か他殺か。 特殊な状況下での警察の捜査も非常に興味を惹きつけられましたが、毎日繰り返される空襲、先の見えない状態に追い詰められた人々の様子や東京大空襲の様子が細かく描かれており、まるで耳元で悲鳴が聞こえそうな程でした。
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