太陽の子 の商品レビュー
全く知らない世界を400ページにわたって丁寧に描かれていた。およそ50年前のコンゴで何があって、何がなかったのか。現地に在住していたシスターの佐野さんや取材に同行していた田邊さんなど、そこに暮らす日本人2人の包容力を強く感じさせられもした。 「一人でも二人でもいい、彼らが将来親...
全く知らない世界を400ページにわたって丁寧に描かれていた。およそ50年前のコンゴで何があって、何がなかったのか。現地に在住していたシスターの佐野さんや取材に同行していた田邊さんなど、そこに暮らす日本人2人の包容力を強く感じさせられもした。 「一人でも二人でもいい、彼らが将来親子の絆を取り戻せるような、そんな記事を書いてほしい。父親に会いたいという願いは、人間ならば誰もが持っている普遍的な愛なのですから」 こう佐野さんは三浦さんに話していて、なぜ記事を書いて世の中に発信するのかという問いに対する大切な答えを言われているような気がした。 日本国内でのタクシーの移動で、県境を越えると人も物も風景もすべて違って見えるとタクシードライバーが語る話が印象に残った。国境や県境など線そのものは見えないのに、その場所に押し込められて、周りと分断される。それが新しく知ることの妨げにもなっているんだろうなと思う。今回の本のような国際問題に限らず、身近なところにも見えない分断がたくさんあるんだよなとふと考えてしまう。 それにしてもBBC規模の会社による発信の影響も凄まじいものがあるな。何をどう信じるべきなのかということも時折考えなければいけない。
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とりわけアフリカには疎い自覚があるけど、関心を持っていなければ見えてこない、かの地と日本との関係。嬰児殺しっていうショッキングなニュースから語り起こされる本書は、現地に資本を求める企業の思惑や、そこで形成された人間関係、事業の撤退と残された人の想いにまで繋がっていく。衝撃的。
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30~40年も前の出来事の残された糸をたぐりながら、爆撃や政変をかいくぐり、Twitterやメール、英語仏語を駆使して、希望を持ち続けて世の中の不条理と戦う。まるで冒険物語のようだった。 決して一足飛びに都合よく解決する問題ではなかったが、作者と、登場する2人の日本人たち、そし...
30~40年も前の出来事の残された糸をたぐりながら、爆撃や政変をかいくぐり、Twitterやメール、英語仏語を駆使して、希望を持ち続けて世の中の不条理と戦う。まるで冒険物語のようだった。 決して一足飛びに都合よく解決する問題ではなかったが、作者と、登場する2人の日本人たち、そして実際の日本人遺児たちの希望を持ち続ける明るさに作品全体が照らされて、自分もなにか世界に希望を抱くことができるような爽やかな読後感だった。 一方で、読むのに体力のいる一冊だった(頑張った)。 アフリカの地理、歴史、政治・経済についての丁寧な解説にかなりページが割かれていたので、興味深い反面、読み進めるのにかなり重量感があり、時間がかかってしまった。
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三宅夏帆さんが著者を紹介しているのを某動画で見て、気になり購入。 情景が思い浮かびそうな描写や、こざっぱりした文体が気に入り、一気読みしました。
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二〇一六年三月、著者のもとに不可解なメッセージが届いた。フランスのニュースチャンネルのリンクが貼られるとともにそこに書かれていたのは、日本企業の鉱山開発に伴い、一〇〇〇人以上の日本人男性がコンゴに赴任した一九七〇年代、コンゴで生まれた日本人の子どもたちを、日本人医師と看護師が毒...
二〇一六年三月、著者のもとに不可解なメッセージが届いた。フランスのニュースチャンネルのリンクが貼られるとともにそこに書かれていたのは、日本企業の鉱山開発に伴い、一〇〇〇人以上の日本人男性がコンゴに赴任した一九七〇年代、コンゴで生まれた日本人の子どもたちを、日本人医師と看護師が毒殺された、という内容だった。信じがたいニュースの〈疑惑〉について調べるうちに、著者はコンゴにおける日本人残留児の問題と関わるようになっていく。 〈疑惑〉の真相以上に、そこに息づいている人々の声を拾い上げ、伝えようとする。真摯な想いに貫かれた一冊だと感じました。作中、〈「人を信じるな」と発する人間の言葉を信じない〉という文章が出てくるのですが、それが簡単なことではないと分かった上で、言葉の節々に人間に対する強い信頼を置いている、と感じられるのが心強かったです。もっと広く、多くのひとに読まれて欲しいノンフィクションです。
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2016年に著者のtwitterに次のようなメッセージが投稿された。 <朝日新聞では、1970年代コンゴでの日本企業の鉱山開発に伴い1000人以上の日本人男性が現地に赴任し、そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺したことを報道したことがありますか?> ...
2016年に著者のtwitterに次のようなメッセージが投稿された。 <朝日新聞では、1970年代コンゴでの日本企業の鉱山開発に伴い1000人以上の日本人男性が現地に赴任し、そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺したことを報道したことがありますか?> 著者は当時、朝日新聞のアフリカ特派員として南アのヨハネスブルグに駐在していた。半信半疑ながら海外のニュースサイトで、元になったと思われる記事を見つける。そして真偽を確かめるべくコンゴに向かう。そこで現地に根を下ろして生活している日本人の協力を得ながら、日本人残留児と思われる人々に取材を試みる。 彼らは日本人と思われる名をつけられており、さらに本に載っている写真をみると、現地人より明らかに肌の色が白い。顔立ちもアジア人的である。そしてコンゴは男系部族社会で、それらのバックグランドを持たない彼らは、差別され苦しい生活を強いられた。 彼らの願いは、日本人と認めてほしい、それが無理なら父親に会いたい。せめて父親のことが知りたいという人として当然の願いである。中国残留孤児の事案知っているだけに、本当に切なくなる。彼らの年齢も40代ならば、父親も相応の年齢になっているはずだ。 著者は、日本大使館や鉱山会社の後継企業にも取材を試みる。そして当時コンゴに赴任していた社員にも取材している、同様に赴任していた医師にも。しかし、明確な回答は得られない。「そのような事実は確認できなかった」、「昔のことなのでわからない」といった紋切り型の回答である。明らかに取材に拒絶反応を示す人もいた。実になる成果は得られなかった。それでも前述した鉱山会社の後継企業からは、「人道的見地」からの支援の検討を引き出すことができた。 なお、文庫版あとがき「まつろわぬ人」は、ジャーナリストなら必読の文だと考える。新潮ドキュメント賞の授賞式での「言論の自由」について 述べたスピーチである。ジャーナリストとしての「矜持」を感じさせられる。 蛇足ながら著者の三浦さんは会社の上層部からは、疎まれているのだろうなと想像してしまう。まあ会社での出世など元々気にしてないと思う。記者クラブに陣取って、取材対象の組織の幹部となれ合うことなどせずに、あくまで現場第一で取材してほしい。現在盛岡総局に勤務されており、時々署名記事を拝見しております。 前述の新潮ドキュメント賞に加え、山本美香記念国際ジャーナリスト賞も受賞している。
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三浦英之『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』集英社文庫。 22回新潮ドキュメント賞、第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞のダブル受賞作。 1970年代から1980年代にかけて日本がアフリカに残した大きな傷跡に迫ったルポルタージュである。 海外に出向した労働者...
三浦英之『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』集英社文庫。 22回新潮ドキュメント賞、第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞のダブル受賞作。 1970年代から1980年代にかけて日本がアフリカに残した大きな傷跡に迫ったルポルタージュである。 海外に出向した労働者が現地の女性と懇ろになり、女性が子供を産むという話はたまに耳にするのだが、まさかという衝撃的な話には驚愕した。 日本人は戦時中にも中国やフィリピンを始めとするアジアの侵略国で残留孤児を生み出している。もしも、アフリカでも同じような状況を作り出していたとしたら…… 切っ掛けはフランスの国際ニュースチャンネルに掲載された動画付きの記事だった。 1970年代から1980年代にかけて、経済成長期にあった日本は豊富な資源を求め、アフリカ大陸で大規模な資源採掘を行う。しかし、巨大な開発計画は失敗に終わり、後に残されたのは錆び付いた採掘工場群とコンゴ人女性との間に生まれた子どもたちだった。 しかも、日本人労働者が帰国する直前に赤ん坊は連れては行けないと、多くの赤ん坊が日本人医師や看護師の手により殺害されたのだというのだ。 余りにも酷い記事の内容に衝撃を受けた著者は、さっそくコンゴに渡り、現地調査を行う。 現地では父親が日本人だという日本名を持つ人びとの殆どが貧困に喘ぎながら、父親と再会する日を夢見ていた。日本人の男性と結婚した現地の女性たちが結婚した時、13歳とか14歳だったというのだから驚くばかりだ。 アフリカの残留孤児というのは真実であったのだが、多くの赤ん坊が殺害されたという話は現地の証言者により、二転三転とし、真実なのか否か判然としなかった。 著者は、様々な伝手を辿り、当時のアフリカで採掘を行った企業の関係者、コンゴに赴任していた医師たちを探り当て、インタビューを行うと、ついに闇の中に埋もれていた真実が明らかになる。 本体価格1,150円 ★★★★★
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
私たちが普通に生きて、小さなことで悩んだりしている間に、世界では親に会えず孤独を感じている人もたくさんいるんだよなと改めて感じた。比較するのもおかしいけど、自分がどれだけ自由で、どれだけ多くのものを与えられて生きているかを痛感した。だけど最後に「お父さんの日本の家族もみんな家族」のような、アフリカの明るい価値観に読んでる私が救われてしまった…素晴らしい本でした。
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