ジェイムズ の商品レビュー
「私がこれほどおびえた白人を見るのは初めてだった。」「私の言葉遣い、私が彼の思い通りに振る舞わないという事実、私には読み書きができるという事実に彼はおびえていた。」 当時は黒人は劣っているものという間違った認識によって差別が正当化されていたが、自分にもそんな偏見があるのではないか...
「私がこれほどおびえた白人を見るのは初めてだった。」「私の言葉遣い、私が彼の思い通りに振る舞わないという事実、私には読み書きができるという事実に彼はおびえていた。」 当時は黒人は劣っているものという間違った認識によって差別が正当化されていたが、自分にもそんな偏見があるのではないかと恐ろしくなってくる。 そんななかでもハックなら友情を育むことができるのでは?という期待は甘い考えだと一蹴される。親愛の情はあっても友情ではない。 黒人ジムの視点から見れば、『ハックルベリー・フィンの冒険』はワクワクする冒険などではなく、死の危険がある逃亡であり、救いのない差別の状況がよくわかる。その視点だと最後のあのドタバタは耐え難いものだろうにどんなふうに書かれているのかと思っていたら、後のほうは元の作品とは別の話になっていた。トムの遊びに付き合わされることより、自分で決めて自分の力で進んでいくことのほうがジェイムズに相応しいので、別の話になっていてよかったと思う。
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期待した程では無かった。本ならではの良さは感じられず、タランティーノのジャンゴを見た時以上のものは感じられず。
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少し前に「ハックルベリーフィンの冒険」を読んでから、最近と言うか2024年「全米図書賞」〜2025年「ピュリツァー賞」を取りアメリカで話題になった小説ということで読んだ。 アメリカの黒人奴隷その差別がフワッとしかわからなかったが、かなり理解できた。 物語は、ハックルベリーフィ...
少し前に「ハックルベリーフィンの冒険」を読んでから、最近と言うか2024年「全米図書賞」〜2025年「ピュリツァー賞」を取りアメリカで話題になった小説ということで読んだ。 アメリカの黒人奴隷その差別がフワッとしかわからなかったが、かなり理解できた。 物語は、ハックルベリーフィンの冒険を題材にハックと共に冒険した黒人奴隷のジムの視点で書かれている。 内容的にはかなり重いものであり、自分にとって心に響くものだ。
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この本は「ハックルベリー・フィンの冒険」を、黒人奴隷ジムの視点で書かれた小説、と聞いていたので、勝手に同じような児童文学のつもりで読み始めた。 中盤から、少なくともこれは児童向けの本ではないと気づいたが、読み進めるほどに痛みが増していった。奴隷制の時代における奴隷の立場がどれ...
この本は「ハックルベリー・フィンの冒険」を、黒人奴隷ジムの視点で書かれた小説、と聞いていたので、勝手に同じような児童文学のつもりで読み始めた。 中盤から、少なくともこれは児童向けの本ではないと気づいたが、読み進めるほどに痛みが増していった。奴隷制の時代における奴隷の立場がどれほど苦しいものであったか、今更のように思い知らされた。 最終盤、ジムが望んだ通りになったようだが、その後の物語が気になる。とにかく「ハックルベリー〜」とは全く別のストーリーなので、油断しないで読んで欲しい。
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「奴隷」「偏見」「差別」が軸にある本。奴隷制度はあまり知識がなく、考えさせられる内容だった。逃走劇&復讐劇な物語で3日で読み終えました。 トムソーヤやハックルベリーの物語は読んだことがないので、これを機に挑んでみたい。視野の広がる時間でした。
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19世紀のハックルベリーの冒険を、黒人奴隷ジムの視点から描き直した小説 物語を再意味化し、今に続く人種差別の根深さや奴隷であった黒人の尊厳を強烈に感じさせる ラストがかっこいい
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訳者の苦労が偲ばれる。 いろいろな制約がある現在ではこのような本の翻訳はかなりの難関だったと思われた。 幼い頃「トムソーヤの冒険」に心踊らされた自分はなんだったんだろう。 それが読書が好きになったきっかけだったとしても、ほろ苦い思いだ。 本書は翻訳の工夫もさることながら、今ま...
訳者の苦労が偲ばれる。 いろいろな制約がある現在ではこのような本の翻訳はかなりの難関だったと思われた。 幼い頃「トムソーヤの冒険」に心踊らされた自分はなんだったんだろう。 それが読書が好きになったきっかけだったとしても、ほろ苦い思いだ。 本書は翻訳の工夫もさることながら、今まで見過ごしてきた事実に気付かされた。 「奴隷」が米国のみならず、システムの違いはあれ、どの国にも存在した、存在することだ。 そしてなんの疑問も罪悪感もなしに、受け入れてきた人がいて、そういう状況なら私自身も受け入れていたかもしれないこと。 極めて一般的な人々の1人に自分がなってしまうことが、悔しくて情けない。
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ハックルベリー・フィンの冒険に登場する黒人のジムからの目線で綴られた作品。奴隷として扱われていた時代の黒人のお話であり所々いたたまれない部分があった。短い章の積み重ねでテンポよく読めた。
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ハックルベリーフィンの冒険を、サブキャラであるところの奴隷ジムの視点から再構築した物語。 アレックス・ヘイリー「ルーツ」を想起しながら読みましたが、多くの人が同じ印象を持つと思います。絶対的な差別の元凄惨な虐待を受け続け、全く人として扱われない人々の様子に改めて恐怖を感じます。...
ハックルベリーフィンの冒険を、サブキャラであるところの奴隷ジムの視点から再構築した物語。 アレックス・ヘイリー「ルーツ」を想起しながら読みましたが、多くの人が同じ印象を持つと思います。絶対的な差別の元凄惨な虐待を受け続け、全く人として扱われない人々の様子に改めて恐怖を感じます。 一方、ハック・フィンを実は未読な私は、それはそれとしてなんか変な構成だなとか不思議に思いながらでもありました。きっと対応するように書かれているのでしょうか。 正直、そこにこだわらずしっかりとジェイムズの物語として読みたかったかなというとこもあります。ラスト、あっさりすぎだし。
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※このレビューにはネタバレを含みます
私は東北人なので、奴隷たちの「わしは誰も見てねえだ」のような、いわゆる「田舎者・無知」の象徴としての東北弁に最初はかなり抵抗を覚え、なかなか読み進められなかった。 しかし読み進めるにつれ、この言葉遣いが奴隷たちの生き延びる術だと知る。(※訳者からのおことわりとして、なぜこのような言葉遣いを採用したかは巻末に記載がある) 単に拙い語彙でたどたどしく話すだけではなく、その場の主導権は常に白人に委ねることも子どもたちは学んでいく。 台所から火が上がったことに気づいた時「火事だ」と言ってはいけない。「奥様、あそこを見るだ」と言わなくてはいけない。なぜなら「問題に名前を付ける役は白人に任せないといけないから」―こんなことを五歳かそこらの子が学ばなくてはいけない。 物語が進むに連れ、ジムは頭の中にあることばを記録することを覚える。しかし鉛筆一本手に入れるのが命がけの立場なのだ。そのことによって引き起こされる悲劇。 「白人は何かの危機を生き延びた人間をしばしば大げさに称賛する。おそらくそれは、白人は普通ただ『生きる』だけであって、『生き延びる』必要がないからだろう」(P.347)
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