帰れない探偵 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「今から十年くらいあとの話」という一文で始まる未来の話が過去形で語られる。 新しい街で開いた探偵事務所兼住居に、ある日突然帰れなくなった。坂の途中にあるはずの、事務所に通じる路地が見つからなくなったのだ。 なぜ?どういうこと?SF?ファンタジ?ミステリ?いろんなハテナが浮かぶのだが、そんなハテナはどうでもよくなってしまう。 帰れない探偵は、世界探偵委員会連盟からの指示で世界中の街で依頼をこなす。どこの国なのか。 いろんな人にいろんな話を聞いていく。 なにかの事件があり、その事件に関わった人の言葉を集めていく。 十年くらいあとの自分の話を語る彼女は、いったいどこで何をしているのか。 社会的な問題、政治的動乱、異常気象、陰謀諭…いま、私たちの周りで起こっている問題とつながっている世界。 明日が昨日になる今日の、物語たち。 足元が揺れる。自分の輪郭がぼやける。だけど、いや、だから、今、私はここにいる。 不思議な手触りの、その芯に触れたくて最後まで読み終える。
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海に漂いながら、夢を見ているような物語だった。色彩がとびきり鮮やかな。 自分の国や家に帰れず、今いる場所も少しずつ変わっていくような、足元がグラグラとおぼつかない日々の中、見え隠れする陰謀や影… しかし、国や言葉、風景、季節が変わっても、音楽のように変わらないもの、ずっと残ってい...
海に漂いながら、夢を見ているような物語だった。色彩がとびきり鮮やかな。 自分の国や家に帰れず、今いる場所も少しずつ変わっていくような、足元がグラグラとおぼつかない日々の中、見え隠れする陰謀や影… しかし、国や言葉、風景、季節が変わっても、音楽のように変わらないもの、ずっと残っていくものもあるのだと、そんな風に感じた。 それが分かったとき、帰るべき場所へ走り出せる気がする。
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