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去年、本能寺で の商品レビュー

3.4

18件のお客様レビュー

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2025/11/25

綺麗な装丁と、「著者直筆サイン本」が売ってあったので、思わず手に取った。 歴史×SFの、11編の短編集。 著者の作品は、複数積んではあるものの、何故か手が出なかった。それは著者が明晰なSF作家であり、どこか読むのに心構えみたいなものが必要だと感じていたからかもしれない。 短...

綺麗な装丁と、「著者直筆サイン本」が売ってあったので、思わず手に取った。 歴史×SFの、11編の短編集。 著者の作品は、複数積んではあるものの、何故か手が出なかった。それは著者が明晰なSF作家であり、どこか読むのに心構えみたいなものが必要だと感じていたからかもしれない。 短編の中の、「タムラマロ・ザ・ブラック」では、坂上田村麻呂、黒人伝説が復活し、「三人道山」では後の世の発見が時代を遡り、「宣長の仮想都市」でも、実際に若かりし頃に宣長が書いたと思われる架空の都市を浮かび上がらせる。 「偶像」に至っては、まさに浄土真宗を、仏教をコミカルに描いている。他にも某著名な探偵と助手らしき人物が旧石器時代に現れるパロディなど。 そして信長は、転生され続ける。 歴史には明るくないが、時間感覚が逆行する体験は面白かったものの、少々取っ付きにくい短編もあった。 ただサイン入りなので、⭐︎1はプラス(笑)

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2025/11/22

鬼才(?)円城塔による歴史短編集。だと思うのだが……各編、日本列島上に嘗て存在した人物を主人公に据え、何者か(語り手は一体何者?)がその事跡を思考を語る。しかしそこに当時ではありえないような知識・技術・情報が盛り込まれる(たとえば細川幽斎の正体が軍事AIかつ文事AIだとか、坂上田...

鬼才(?)円城塔による歴史短編集。だと思うのだが……各編、日本列島上に嘗て存在した人物を主人公に据え、何者か(語り手は一体何者?)がその事跡を思考を語る。しかしそこに当時ではありえないような知識・技術・情報が盛り込まれる(たとえば細川幽斎の正体が軍事AIかつ文事AIだとか、坂上田村麻呂の正体がカエサルだとかetc)せいで異形の歴史小説となり、最終表題作に収斂される。知識レベル語りのレベルが高度ですべては理解出来なかった。円城塔の博覧強記ぶりに今回も驚かされる。これまで語られてきた斎藤道三の生涯が実は父子二人のものだったらしいとか、本居宣長が少年時代に構想した理想都市だとか、ウィキペディアで調べて分かったものの、ウィキがなかったらちんぷんかんぷんだったろう。ついていけない部分もあったけれど、とにかく楽しめた。読んでよかった!

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2025/11/13

なかなか難しい短編SF。時代背景、及びその周辺を理解していないと面白みがわからない。 そういう意味では「三人道三」「実朝の首」「去年、本能寺で」辺りは面白かった。 「三人道三」の中で昭和48年が強調されるが、これはNHKで「国盗り物語」が放映された年だ。コレが判る識者はなかなかい...

なかなか難しい短編SF。時代背景、及びその周辺を理解していないと面白みがわからない。 そういう意味では「三人道三」「実朝の首」「去年、本能寺で」辺りは面白かった。 「三人道三」の中で昭和48年が強調されるが、これはNHKで「国盗り物語」が放映された年だ。コレが判る識者はなかなかいないのでは?斎藤道三は実に興味深い人物だ。2人掛かりで斎藤道三に成り上がったとの説もあるし3人掛かり説もあったかな?源実朝も鎌倉幕府成立時のややこしい話だ。数限りなく信長が存在している設定は正にその通りだからクスリと笑える。トンデモ設定を理解するのに難儀する短編もあるが総じて面白かった。たまにはこーゆーのもいいかな。

Posted byブクログ

2025/11/09

「歴史×SF」はSF的なものへのフックのかけ方として重要である。と思っていたところタイトルを見かけて、円城塔ということもあり買ってみた本。 読んでみたら面白かった。作劇や構成というより、やはり文体のひとつひとつが沁みるようにおもしろくてずるい。その上で、SF的なエッセンスをうまく...

「歴史×SF」はSF的なものへのフックのかけ方として重要である。と思っていたところタイトルを見かけて、円城塔ということもあり買ってみた本。 読んでみたら面白かった。作劇や構成というより、やはり文体のひとつひとつが沁みるようにおもしろくてずるい。その上で、SF的なエッセンスをうまく時代と融合させている。 地の文の語り口は現代視点で、現代用語や現代からの視座があり、しかし作中の時間設定はあくまでもその時代。なのでミスマッチが起きておもしろい。 例えば冒頭作などは、AIの原理を滔々と(もちろん面白くだが)述べているのだが、それが細川藤孝と関ヶ原、というシチュエーションで描かれるがゆえに、読者の興味も担保する。むしろ細川藤孝の話はマクガフィンのようにも思われるが、両者の組み合わせがおもしろく、また、AIの説明としてアナロジーの妙となっている。 ただ、『冥王の宴』と『丹色の星火』しかり、自分が書いているものとの方向性の重複があり気持ち悪いというか、先にすべてやられてしまった感があり、悔しさはある。 また、組み合わせのパターン(時代×SF的飛躍×現代視点かつ司馬遼太郎的語り)は一定なので、後半は失速というか、ちょっと飽きてきたりはした。連作短編全体としてのヒネリというか、横断してのカタルシスは欲を言えば欲しかった。 初出を見るとそれぞれ2ヶ月おきに発表されており、それぞれ参考文献もしっかりあって、2か月ごとにこれら短編を作るのはやはりプロだと思った。

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2025/10/11
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※このレビューにはネタバレを含みます

〇幽齋闕疑抄  軍事AI・文事AIの細川幽齋がAIの発展史とあり方を田辺城籠城戦の渦中に思索する。 〇タムラマロ・ザ・ブラック  黒人の坂上田村麻呂が蝦夷(がりあ)戦記を書き(消失、日本後紀に引用されるも散逸)、薬子の変の際に、イアゴーに諭され王朝に反旗しがりあ建国を図る。 ・三人道三  歴史資料の発見により、16世紀の道三がファジーに。 ・存在しなかった旧人類の記録  旧石器時代の日本列島で巨大な石斧による死体を探偵が推理。 実朝の首 巨船を擬した時間装置により実朝の首は文学の手により頼朝のもとにもたらされ「未来記」が実現する。 ・冥王の宴 〇宣長の仮想都市  端原氏城下絵図・系図にインスパイア。超計算能力を持つ小津弥四郎(本居宣長)が現人神と端原城を創造、古事記や万葉集のかなをデータ処理。 ・天使とゼス王  ザビエルの従者アンジェロと安寿がゴアで邂逅。 ・八幡のくじ  くじ引き将軍義教は偶然に翻弄、嘉吉の乱で偶然首だけで生き残る。 ・偶像  伝説のアイドル親鸞の長子善鸞は、ライブで新曲偶像を熱唱。 ・去年、本能寺で  死んだ信長が第六天魔王、信長の野望の信長など様々に人格がぶれ、少女にもなり述懐する。光秀は信長を倒したという未来の記憶を持ちながら本能寺に向かう。

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2025/09/25

宇宙から俯瞰する。遥か遠い過去から未来へ。どこにでも落ちている石。世の中の全てが伏線なんだと感じました。

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2025/09/21

日本史とAIの融合した短編集。 転生を繰り返す信長が、秀吉に、「お前が遊んでいるのは『信長の野望』世界版にすぎん」とぼやく「去年、本能寺で」や親鸞の息子善鸞は東国ツアーを描く「偶像」などは面白かった。 短編集なのでアイデア先行の部分もあり、同様のAIと歴史が融合する「コード・ブッ...

日本史とAIの融合した短編集。 転生を繰り返す信長が、秀吉に、「お前が遊んでいるのは『信長の野望』世界版にすぎん」とぼやく「去年、本能寺で」や親鸞の息子善鸞は東国ツアーを描く「偶像」などは面白かった。 短編集なのでアイデア先行の部分もあり、同様のAIと歴史が融合する「コード・ブッダ」のほうが完成度は高いと感じた。 以下の11編。 幽斎闕疑抄 タムラマロ・ザ・ブラック 三人道三 存在しなかった旧人類の記録 実朝の首 冥王の宴 宣長の仮想都市 天使とゼス王 八幡のくじ 偶像 去年、本能寺で

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2025/09/16

かなり好き嫌いが分かれると思われる、 11の短編集。 好きな人は好きだと思う。 私は正直、あまりついていけなかったが 「偶像」、「去年、本能寺で」は比較的読みやすく 面白かった。

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2025/09/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この作家は読む人を選ぶ。私は選ばれない方の読者だな。そしてヌルと出てくると落合陽一を連想するのは私だけですかね。ごめんなさい。

Posted byブクログ

2025/09/05

AI足利将軍、アフリカ人の田村麻呂、原始人探偵にアイドル僧侶などなどが織りなす幻想歴史SF短篇集。 まさか円城さんがこんな澁澤龍彦2.0みたいなアナクロ幻想歴史小説を書いてくれる日が来るなんて思ってなかったなぁ。「タムラマロ・ザ・ブラック」が好き。『読書で離婚を考えた』で熊害...

AI足利将軍、アフリカ人の田村麻呂、原始人探偵にアイドル僧侶などなどが織りなす幻想歴史SF短篇集。 まさか円城さんがこんな澁澤龍彦2.0みたいなアナクロ幻想歴史小説を書いてくれる日が来るなんて思ってなかったなぁ。「タムラマロ・ザ・ブラック」が好き。『読書で離婚を考えた』で熊害の話をしていたとき以来、円城さんって本当に北海道育ちの"人間"なんだ、と感じた。 もちろん表面的にはSFでラッピングされた歴史小説だから澁澤とは旨みが違うんだけども、それでも個人的には読み心地が『唐草物語』に近くて、澁澤が説話に20世紀のイマジネーションを代入したところ、円城さんは研究史に21世紀のAIを突っ込んだという感じだと思う。信長幻想の例として真っ先に宇月原晴明の『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュノス』がでてくるのも嬉しいね。アルトーの歴史語りに対する目配せでもあるのかしら。 登場人物にAIとついているのは最初の章だけだけど、全体を通して日本史を学習したAIにそれぞれ役を割り振って、歴史を繰り返させるシミュレーション実験みたいな構成なのではないかと思った。『情報の歴史』的な語り方というか。それでいて、「我々の因果は一体どこから始まるのか」を問うていると捉えれば、たちまち仮想現実というガワに反して古風なテーマの小説でもある。 武将を軸に起点と終点がぴたりと重なり合う因果と応報の無限ループ構造は、やはり『コード・ブッダ』と共通するメッセージを放っている。『コード・ブッダ』ではブッダに囁きかけるマーラのポジションを担った「教授」は軍事AIだった。人間界の因果と応報はAIに引き継がれていくのか。フィジカルという"事実"のない世界でAIが紡いでいく"歴史"とはどんなものになるのか。さっぱりした読み心地に近々の未来への問いが詰まっていて面白かったが、あえて言えばさっぱりしすぎてちょっと物足りない。澁澤を飛び越えて、花田清輝の向こうを張る幻想SFほら吹き歴史小説をいつか書いてください。

Posted byブクログ