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隙間(4) の商品レビュー

4.6

8件のお客様レビュー

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2025/11/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「隙間」(Gao Yan・著、KADOKAWA、全4巻)は、一気に読む進めることができなかった漫画だった。 物語は、台湾人の主人公の女子学生・ヤンが、沖縄の芸術大学に短期留学にやってくるところから始まる。唯一の家族だった祖母が亡くなったこと、好意を抱いていた男性に思いを告げる前に付き合っている本命の彼女がいることを知ったこと、高校の同級生たちとの人間関係がうまくいかなかったことなどなど、ヤンが沖縄留学に来た理由が「前向き」なものでないことが明かされる。 ヤンは、自分の胸の中に沸いた気持ちを「適当に」流したり、忘れたりすることができない。不器用な性格に見える。 そんなヤンが、沖縄で出会った大学の同級生や地域の人々、周囲で起こった出来事を通じて、少しずつ変わっていく。 台湾の学校教育で教わらなかった歴史、台湾が直面している政治的課題について考え、沖縄の歴史についても知り、それらに自分がどう向き合ったらよいのか、答えを見つけていく。 交換留学期間の1年間は、ヤンにとって、人生の「隙間」。 その「隙間」を描いたのが、この作品だ。 主人公の心のひだに触れているものを感じながら読んでいると、ページをめくる手が遅くなる。 一気読みしてしまうと、味わえない趣がある気がした。

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2025/10/23

 『隙間』第4巻(最終巻)です。最終巻では、沖縄戦を辿るヤンを通して、未来への希望を見出していきます。台湾出身の若い漫画家・高妍さんから、台湾の歴史のみならず、沖縄の歴史まで学ばせてもらいました。若い世代のたくましさを目の当たりにし、うれしさを覚えます。  直前に読んだ『エレガ...

 『隙間』第4巻(最終巻)です。最終巻では、沖縄戦を辿るヤンを通して、未来への希望を見出していきます。台湾出身の若い漫画家・高妍さんから、台湾の歴史のみならず、沖縄の歴史まで学ばせてもらいました。若い世代のたくましさを目の当たりにし、うれしさを覚えます。  直前に読んだ『エレガンス』の戦時の理不尽さに抗う姿、『台湾漫遊鉄道のふたり』の日台関係の複雑さ、深沢潮さんが描く在日韓国人の葛藤、大分前に読んだ『宝島』(最近映画で話題?)の沖縄の苦悩などを思い出し、重なる部分があるなとも感じました。  やはり、外に出て知見を広げ、物事を俯瞰して観ることで、自らのアイデンティティの捉え方も変わるのでしょうか? 少なくとも、狭い視野のままでは立ち行かなくなるのかもしれません。自分の固定観念には危うさもあるのだとの戒めにも感じます。  本書が日本の若い方にも広く読まれることを願います。自らの信念を守り、声を上げる気概をもつ人が増えてほしいです。「あなたにも何かできる」と、励まされ期待されているようです。  最後のコラムで次のように書いています。「この作品が、社会問題や国の未来に関心を持つ子供たちを支える小さな柱になることを願っています」と。  今後の高妍さんの活動を関心を持って見守り、台湾と沖縄を含めた日本へ、さらに視点を重ねた作品づくりに期待したいと思います。台湾・沖縄に捧げられた素晴らしい青春譚でした。

Posted byブクログ

2025/10/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

良い作品だった。すらすら読めるけど、内容はものすごく濃い。台湾や沖縄について知りたい人にもとてもいい本だと思う。不安や怒り、恥じらいを糧にしたヤンヤンに拍手。個人的にJにビンタをかませた場面にスッキリとした。

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2025/09/13

4巻完結で、台湾と沖縄の歴史や社会運動という巨大なテーマが、留学先の友人関係や叶わない恋愛という小さくありふれた日常の中で描かれている。高妍さんの作品は初めて読んだが、登場人物の表情の描き方が巧く、言外の感情が伝わってくる。 台湾は中国との関係が悪化し、いつ戦争が起こってもおか...

4巻完結で、台湾と沖縄の歴史や社会運動という巨大なテーマが、留学先の友人関係や叶わない恋愛という小さくありふれた日常の中で描かれている。高妍さんの作品は初めて読んだが、登場人物の表情の描き方が巧く、言外の感情が伝わってくる。 台湾は中国との関係が悪化し、いつ戦争が起こってもおかしくないような緊迫した状況にあることは知っていた。しかしなぜ中国はそのようなことをしようとしているのか、その根本にある考え方はなにかは知らなかった。台湾の民主主義を確立するまでの奮闘を見たら、この人たちのために何かしたいと心が動かされる。 沖縄は高校の修学旅行で平和学習をしただけで、琉球王国のことや、台湾や中国との関係まではそこまで詳しくない。沖縄だけじゃなく自分の国のことでも知らないことがたくさんあるんだろう。そもそも沖縄を「自分の国」と言うことは、日本に併合されるのに反対だった多くの人たちはどう感じるのだろう。ただ、あのとき平和学習をしておいてよかったなとこの漫画を読んで改めて思った。 理不尽な暴力や声の大きい人たちの利己的な政治に苦しんでいる(た)人たちの見えない叫びを知った。見てないふりをせず、どうしたらいいのか、自分に何ができるのか考えたい。そしてちゃんと勉強した上でなるべく早く台湾と沖縄に行きたい。うまくまとまらないが、とにかく読んでほしい。これを読むこと、そして何が起きているのか、起きようとしているのかを知ることが声を上げて闘っている人たちの希望になるはず。

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2025/08/26

この漫画を読んで、本当に良かった。(1巻〜4巻) 主人公は台湾で暮らすヤン、22歳女性。交換留学で1年間、沖縄の芸大へ。 彼女は、心の支えとしていた祖母を亡くしている。恋人との関係も微妙であり、学校ではいじめにあったことも。 こんな心の傷を抱えながらの沖縄での生活。友人との...

この漫画を読んで、本当に良かった。(1巻〜4巻) 主人公は台湾で暮らすヤン、22歳女性。交換留学で1年間、沖縄の芸大へ。 彼女は、心の支えとしていた祖母を亡くしている。恋人との関係も微妙であり、学校ではいじめにあったことも。 こんな心の傷を抱えながらの沖縄での生活。友人との関わりの中で、頑なな心が和らぎ、沖縄の歴史に心を寄せるようになる。そして、過去の自分と向き合い、前向きに自分の人生を歩いていこうという希望を見いだす。 各巻ごとに漫画の後に文章が添えられており、台湾についての理解を深めるのに役立った。 台湾の主権問題、民主化の道筋について新たに知ることの方が多かった。台湾の歴史を知ることが沖縄を知ることであり、その逆も言えるということ。大きな学びだった。 恋人との関係に悩み、悩みから抜け出すことができたときのヤン。自分も20代前半に、ヤンと状況は違うけれど、辛い別れを経験している。その当時は辛くて辛くて。でも、時が経つにつれその人から学んだことが、かけがえのないものであることに気づき、今では出逢えて良かったと心から、そう思える。ヤンの心の成長がとても嬉しかった。昔の自分を見ているようで。 作者の謝辞の中にあった二二八事件の追悼式で流れる『長春花』。毎年6月23日の慰霊の日に沖縄の小学校で聴くことができる『月桃』。両曲ともYouTubeで聴くことができた。『長春花』はゆったりしたメロディーで自然の広がりを感じ、『月桃』は、リズム良く励まされる感じがした。 村上春樹さんの『猫を棄てる』でガオイェンさんの絵を初めて見て好きになった。台湾のことを知りたいと思って読み始めたが、それだけにとどまらなかった。台湾、沖縄のこと、同性愛、恋のこと、民主主義の本質。内容が重層的で読み応えがあり、何よりも筆者の謙虚で一生懸命な姿勢がうかがえて、好感が持てた。単行本の帯の4人の方(是枝裕和、江口寿史、吉岡里帆、宇多丸)のコメントが素晴らしく、いつもは読むときに外してしまうのにずっとつけておきたい気持ち。また、何度も読み返したい漫画に出逢えた。最高でした!

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2025/08/13

2025年最高の漫画体験の1つでした。この本がある限り、忘れ去られない歴史がある。とにかくすぐに全日本人が読むべきだ。全く、人ごとではない。

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2025/08/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

何度見ても、一巻からずっと、なんと美しい本なのだろうか。280ページの大作、表紙カバー折り返し紙質にもこだわりあり。全て細かくガオさんのセンス、趣味、美意識で固められていて税抜価格880円て、ありえないと、この本に似つかぬことをいいたくなるくらい。 圧巻の完結。 同じ地球上で同じ空気を吸ってるわけだが、だいぶ前とはいえ同じように20代を過ごした私と、このヤンちゃんのストレートさ、緻密な勉強、研究。 全ての言葉、表情、一コマ一コマ、ぺーじごとに、今、この腐れ切った日本社会にポーン、ポーンと大きなカーブ描いて沖縄から台湾から、カラフルな七色のボールとなって投げ込まれて欲しい。 Jというクソ男は、恋愛においてクソなのだが、戦争が破壊なら破壊と相対するものが創造なんだ、とかかっこいい事をいうのだ。それも彼の意識無意識のミソジニ的振る舞いの一部なのかも。 しかしヤンちゃんは賢いので、やがてその破壊と創造を丸木夫妻の、佐喜眞美術館の沖縄戦の図に解を求めるのだ。 1人じゃないということ。 沖縄も台湾も、私たちも、その場所でそれぞれに、そしてはなれていても互いに繋がり、同じ夢、本体裏表紙に書かれている100%自由のために声をあげたり、読んだり書いたり歌ったり歩いたり走ったり目を閉じて想像したりしていくのだ。 大きな希望の勇気。 隙間。かっこいいブレイク。 隙間。立ち止まることも、入り込むこともできる。広げることも詰めることもできる。 諦めない。 ヤンさんのこれからにますます期待する。

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2025/06/22

6/23の慰霊の日を意識することもなく、のんびりと暮らしてきた自分。必ず被害者の立場と加害者の立場がある。丸木夫妻の絵を必ず死ぬまでに見たいと思った。 知らずにこれまでの人生を過ごしてしまった→これから知ってあとの人生を生きることができる。 と読み替えて。 なんでタイトルが隙間...

6/23の慰霊の日を意識することもなく、のんびりと暮らしてきた自分。必ず被害者の立場と加害者の立場がある。丸木夫妻の絵を必ず死ぬまでに見たいと思った。 知らずにこれまでの人生を過ごしてしまった→これから知ってあとの人生を生きることができる。 と読み替えて。 なんでタイトルが隙間なのか。 主人公の想い人の顔がずーっと思い出せないのはなんでか。 人生において怖い夢を時々見るのは何故か。 多様性など回収しきれないテーマはもちろんある。選ぶ勇気、変わる勇気、認める勇気。 それはきちんと違うことはNoといい、わからないことはわからないと言い、でも提供できる心を愛を持って伝え続けることなのかもしれない。

Posted byブクログ